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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0812

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 つくしだって本音を言えば、もう少しだけでも戒と一緒にいたかった。
 「無理に引き止めたら、不審もいいところじゃない」
 『そりゃそうかもしれないが、…お前、名乗らなかったのか?』
 名乗れるはずがない。
 戒を産んだからという理由だけで、その権利を振りかざし彼の生活や感情を乱してしまうのは、彼女のエゴでしかないだろう。
 類はかつて言っていた。
 愛しているのなら、その地獄に相手を引きずり込むのではなく、見守ってやるべきなのだと。
 もちろん恋愛相手と、親子ではまた違うものがあるだろう。
 だが、戒には戒の現在の生活や人間関係があり、そこへ突然つくしという異物が入り込んでしまえば何かしら問題やいざこざが起こることになる原因になりかねない。
 継母とも上手くやれているのならなおさらのことだ。
 「あのさ」
 『あ?』
 「……西門さんは今もつ…道明寺と行き来があるんだよね?戒と戒の今のお母さんの関係ってどういう感じなのか聞いていないかな?」



*****



 「だから、なんで私を呼ぶのよ」
 ゲンナリ向かい側に座る男を睨むが、わかっていたことだがその等の男はどこ吹く風で、さっきからつくしの苦情を聞き流している。
 「別にいいだろ?お前、どうせ非番で暇こいてたんだろうし」
 「…暇じゃないわよ」
 日頃溜まった洗濯物を片付けたり、手を抜いている部屋の掃除をしたり、買い出しに行ったり、一人暮らしの女にはやることがたくさんある!
 「しかも、午前中早くから呼び出すから何事かと思えば、いきなりショッピングに連れ回されるわ、エステサロンに連れていかれるわ、しまいには美容院に放り込まれてこんな格好までさせられるとか、もう!いったいなんなのよっ」
 「だあぁぁっ!うるせぇ!!いつまもグダグダとっ」
 さんざんっぱら愚痴ってやってので、さすが総二郎もイラついたらしい。
 が、つくしにしても総二郎の機嫌を窺う義理はなかったので、これでウンザリして解放してくれるののらめっけもの、全然へっちゃらだ。
 何気なく流した視線の先、下げられたままの仕切られていない運転席の運転手の肩が揺れている気がした。
 …うひ、いい歳してなにジャレ合ってんのかとか、もしかして思われちゃってる?
 これだけ言いたい放題していて、よもや総二郎の女の一人とは誤解されていないだろうが、次期家元である総二郎にこんな言動をとる女はそうはいないだろうから、何者なのかとは詮索されてしまっているかもしれない。
 「さっきも言ったろうが、最近、離婚して目ぼしいツレの女が見当たらなかったんだよ」
 運転席に視線を当てたまま、声を潜めて反論する。
 「奥さんじゃなくったって、西門さんならいくらでも愛…あ~付き合ってくれる人がいるでしょ。何もなんの関わりもない、異世界の住人くらいに縁がない私を頼らなくてもさ」
 「ぶっ。異世界の住人ってすげぇ表現だな。まあ、たしかに時々お前にはとんでもねぇカルチャーショックを受けさせられる時もあるけどよ、それって氏育ちっていうより、お前の性格のせいなんじゃねぇの?」
 「…なんか微妙に失礼なこと言われてる気もするけど、そう思うならここら辺でもう解放してよ。ここまで手間暇、お金や時間までかけてもらって申し訳ないけどさ」
 …本当に困る。
 いまさら知人に出くわすとも思えないし、もはやいたとしても彼女を彼女として認識してくれるような危篤な知り合いが、この日本にいるとは思えないが、それでも総二郎の出入りする社交場にいかにもいわくありげに同伴するなど御免被りたい。
 「金はまあともかく、少しでも悪いと思ってんなら、もう少し付き合えよ。何もお前の顔見知りがいるどこぞのパーティやウチの関係者の集いとかに連れ回そうっていうんじゃねぇんだからよ」
 「う~」
 とりあえずはあらかじめ伝えられていた場所に付き合う程度ならと、引き出されてきてのどご、ここまで本格的に身支度をさせられてしまうとその判断もまずかったのではないかと後悔することしきりなのだ。
 …銀座に新しく出来た画廊にちょっと付き合ってくれって、普通ここまで磨きたてるもんじゃないでしょ。
 つくしだって一応TPOに従った格好をしてきたつもりなのだ。
 「そんなジト目で見るなよ。もちろんお前が今日着てきた格好だって外してたわけじゃない。さすがにかつては道明寺家の若奥様してただけのことはあって、センスも悪くないしよく似合ってたよ」
 「…それはどうも」
 さすが女道楽な男だ。
 ダメだしをしたも同然の振る舞いをしておきながら、一応はヨイショしてフォローするのも忘れていない。
 納得いかない気持ちが完全に収まったわけではなかったが、それでもいくらか上げてもらったことで、多少は諦めにも似た気持ちで許容するかと思った矢先―――、
 「類だってアレで、オンナに金かけない男でもなかったから、それなりにお前にも貢いでただろうしな」
 「ちょっと!?」
 悪戯っぽい顔で揶揄され、運転手を気にしてつくしが声を上げた。
 彼女の視線の意味に気がついたのだろう。
 総二郎も運転手席を振り返り、
 「あ、由鶴なら平気。こいつ俺のガキの頃から出入りしてる古参の弟子で、今は俺の付き人やってる俺の兄弟みたいなもんだから。ウチの裏側から俺の女関係まで把握してっし、ガキの頃は司や類とも顔馴染みだったから」
 「そうなんだ」
 ルームミラー越しに総二郎に‘由鶴’と呼ばれた男性と会釈を交わし合う。
 「お前を乗せるのならパーティション上げらんないだろうからな。最初からそういうブライベートなことへのプライバシーに配慮して由鶴に送迎頼んだんだ。…ここで俺とお前が濃厚なラブシーンを演じても何食わぬ顔で見て見ぬフリして貝になってくれるぜ?」
 「………謹んでご遠慮申し上げます」
 つくしにしてみればとんでもないフザけたジョークだが、その顔にも目にも少しも真剣見がなく、そうした欲望の欠片も浮かぶことなく、あくまでも彼の悪擦れた冗談なのだと容易に知れた。
 …こういうところは困った人だけど。
 重ね重ねの気遣いに感謝するしかない。
 今のつくしは、順調にカウンセリングの成果もあって、以前ほどには男性に対する過剰なプレッシャーを感じることがない。
 おそらく総二郎と二人っきりでも、まったく平気でとまでは言わないが、それでも緊張によるちょっとした疲労感をオマケに残すくらいで過呼吸に襲われたり、ましてや倒れたりすることはなかっただろう。
 …類のおかげだよね。
 つくしの場合は一般ーーーっと言っても良いのかはともかく、見ず知らずの人間に傷つけられたレイプ被害者や愛のない行為に苦しんでいる女性たちとは異なり、司は彼女を大切にしてくれた。
 だが…、無理強いに強要されるものは、たとえそれが愛であろうと、そこに心があろうと暴力は暴力なのだ。



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