FC2ブログ

「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0811

 ←愛してる、そばにいて0810 →愛してる、そばにいて0812
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 キョドキョドと落ち着きなく彼を窺って、彼の機嫌を取り結ぼうとする人間など珍しくはないのに、なぜか彼女がそうしていたのは、自分の損得や彼から何かを得ようとする邪な目的などではないのだとわかった。
 …なんで。あんな女知らない。
 彼を懐かしげに見て、ただそこに彼がいるだけで嬉しそうな女などにはまったく心当たりがない。
 大きな目は生き生きとしていて人目を惹くが、特に美人というわけでもなく、ごく平凡な容姿の女だ。
 …20才後半くらい?
 前の夫がどうのと言っていた物言いからして、20才前半ということもあるまいが、かといって滋と同年代ということもないだろう。
 総二郎と合流した直後、戒は意識を半ば失っていたのであまり彼とのやり取りを憶えてはいないが、一連のやりとりや経緯を見てみれば、総二郎とあの女がひとかどならない付き合いの人間であることがわかる。
 少なくても、通りすがりやちょっとした知人程度の関わりの人間ではないだろう。
 かといって、先日総二郎が離婚した妻だとも思えない。
 …西門総二郎には妹や姪、あれくらいの年齢の親族はいないはずだ。
 もちろん、門下にはいくらでもそれくらいの年齢の女性も、それ以外の女性もいるに違いなかったが。
 …オンナか。
 愛人の一人だと思うのが一番しっくりくる。
 「……戒君?」
 つい自分の中の思考に沈み込んで、滋の存在を忘れてしまっていた。
 「いや」
 片手を上げ、踵を返して、執事長の脇に立って自分をジッと睨む少女の存在にやっと気がついた。
 ―――萌奈(モナ)・ワハビ。
 またの名を大河原萌奈。
 言わずと知れた滋の娘だ。
 睨む萌奈の視線を真っ向から受け止め、睨み返す戒の視線に怖気づいたように、萌奈の方がスイッと視線を外して、わずかに青ざめた顔を背けた。
 彼女のそんな態度はいつものことだ。
 つい半年前、滋に伴われてこの屋敷に来た時から、彼女の態度は一貫して戒を毛嫌い…憎んでいた。
 …迷惑な話だ。
 だが、彼女の憎悪も屈託も、すべては自分にも身に覚えのあるものだったから、共感するつもりや同情する気はなくても、彼女の気持ちが手に取るように理解できた。
 萌奈は戒とは違って、母親の滋が司と結婚したことで、母親と引き離されスイスの全寮制女子校での生活を強いられた。
 彼女がその諸悪の根源として司を憎むのもわかる気がしたし、当然その息子である戒を気嫌うのも同様。
 歯向かえば叩き潰す。
 ただそれだけだったが、特に今のところ何かを仕掛けられているわけではなかったし、そうでないのなら、萌奈に自分をどう思われていようとまったく戒はかまわなかった。
 滋は…おそらく、そんな娘の屈託も、戒との不仲も察してはいるのだろうが、時々心配そうに成り行きを見守るだけで今のところ介入してきてはいない。
 滋は空気が読めなさそうで、意外にそうではないことを曲りなりにとも母子として過ごしてきたこの数年間で戒も理解していた。
 …まあ、俺には関係ない。
 彼らの愛憎もなにもかも。
 たとえ何かを求められたとしても、彼にはそんな親子ゴッコ、兄弟ゴッコに付き合う義理もなければしてやる気もなかったし、まったく興味もない話だった。
 「ああ、そういえば、美咲のことを聞き忘れてたか」
 萌奈の姿を見たことで、思い出した。
 極楽鳥のオスのように色とりどりの色合いに染めた髪の派手なナリばかりで平凡な顔立ちのミサと、褐色の肌をした年齢よりも大人びたいかにも良家の子女然とした美少女である萌奈とではまったく共通項はなかったけれど。
 どちらにせよ、彼がこうしてここに無事でいるのだ。
 よもやミサだけ放置されたということもあるまい。
 総二郎がどんな男かいまいちわからないが、それでも赤の他人の自分を親身に面倒を見たあの女がそんなことをできるとも思えなかった。
 結局のところ、ミサを助けたのも彼にとっては気まぐれの一つに過ぎなかったのだから。
 …気まぐれにしては高くついたけどな。
 痛み止めの効果が切れて、イヤな痛みを伝えてくる片腕を眺め、戒はフーッと長いため息を落とした。




*****




 『なんだよ、帰しちまったのかよ?』
 京都にいる総二郎から電話が入ったのは、戒が帰ったその日の晩だった。
 …意外や意外に友情に厚いというか。
 親友の息子とはいえ、親戚でもないのにこの細やかな気遣いに、つくしは総二郎というこの今までただの女誑し、女道楽といった認識しか持っていなかった男のまた別の一面を知った気がする。
 『どうせなら、2,3日泊めて、十年ぶりの母子の交流っつーもんを深めたら良かったじゃねぇか』
 「無理言わないでよ。…ただでさえ、私があの子に関わるのはルール違反だっていうのに、そんなことをしたらすぐに道明寺家からクレームがついて、下手したら裁判沙汰になっちゃうわよ」
 もちろん戒のためならば、たとえ勝ち目がないにしても争うこともやぶさかではなかったが、結局そうしたことで迷惑を被るのは道明寺家のみならず、戒自身もなのだ。
 世間の好奇の目を集めたとしても何一つ良いことなどあるはずもない。
 第一…、 
 「……私が母親だなんて、あの子は知らないんだもの。帰るって言われたら、引き止める理由がないでしょ?」



◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ




web拍手 by FC2



関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0810】へ
  • 【愛してる、そばにいて0812】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0810】へ
  • 【愛してる、そばにいて0812】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク