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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0804

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 「え?」
唐突に問いかけられ面食らう。
 「ああ、うん、そう。…ここって借家なのよ」
 「へぇ?」
 あまり意外そうではないが、やもめ女の一人暮らしで2階建ての駐車場付き一軒家は広すぎるからという目算からなのか、あるいはつくしのような貧乏人が持ち家に住んでいるわけがないという認識からなのか。
 …ちょっと卑屈すぎる考えかな。
 「弟の奥さんの旧姓が廣方って言うんだけど、ここ、その奥さんのお兄さん一家の持ち家なのよ。ちょっと事情があって、この家を新築してすぐに海外転勤することになってね、しばらく空家なの。で、その間しばらく家に風を入れないのもなんだからって」
 「お前が住んでんのか?」
 「そ、半年限定だけどね。その間の留守番と管理を頼まれて間借りしてるってところ」 
 「なるほどな」
 家は空家にしているとすぐに劣化してしまう。
 2年、3年というスパンでの転勤であったのなら、不動産屋を介して正式に賃借人を探したのだろうが、さすがに半年という期間で賃借人を募るには短すぎる。
 また、ちょうどその頃つくしが住んでいたマンションの契約更新の時期で、以前に類と暮らしていた頃に勤めていた病院とは違う病院に正職員として転職したのを期に、職場に近い場所への引越しを考えていた矢先のこと。
 当初、進夫婦に来た話だったが、進夫婦もマイホーム購入を考えていたとはいえ、一般の会社員や独身者とは異なり、おいそれと官舎をでるわけにもいかず、それならば進夫婦が信頼できる相手に、という風に頼まれたらしい。
 そこでお鉢が回ってきたのがつくしだった。
 以前に住んでいたマンションもそうだったが、この家も駅に割合近く特に車を必要としていなかったから駐車場は不要だったが、豪邸を除けばこうした戸建住宅に住むのはつくしは初めてだった。
 身の丈の範囲のこじんまりとした一軒家住まい。
 それを、つくしは意外に気に入っていた。
 …花ちゃんたちみたいに猫を飼ったりとか、それこそ、犬を飼うのもいいかもしれない。
 さすがにこの規模の家で一人暮らしは広すぎるが、給料は安い職種でも慎ましい生活のおかげで、中古の一軒家をローンで購入する為の支払いくらいは出来るし、類と生活していた頃に貯めた貯金で頭金も十分なんとかなりそうだ。
 本当のところ、桜子に電話口で語ったように、男はもう懲り懲りだとばかりに普段から恋愛を忌避して、どうしても一生独り身を貫き通すというほどものでもなかったが、正直、やはりもうそうした感情やその手のことに付随して起こるいざこざからは遠ざかりたいというのは本音のことだった。
 シャッツの代わりというわけでもないけれど、あの愛情深く優しい生き物がずっと一緒にいてくれるなら、時には耐え難く感じる一人っきりの寂寥もいくぶんか紛らわされるのではないだろうか。
 「どうせ、半年…あと3,4ヶ月のことだし、必要な郵便物とか滅多に来ることもないから、表札はそのまんまにしてるのよね」
 「なるほど」
 まだ何かあるのか奇妙な顔で考え込んでいる総二郎に不審を覚え、つくしが首を傾げて尋ね返す。
 「なに?」
 「…いや、てっきり前旦那の苗字をいまだに名乗ってんのかって思ってただけ」
 「は?」
 「なんでもない。じゃ、今度こそ、おやすみ。お前も無理すんなよ」




*****




 「……抗生剤…処方……るし、若いから……え下……ばすぐ…回復す…と思うよ」
 「すみ…せん、夜勤で疲れて…のに業務外に往診なんてお願いしちゃって」
 「マキさんが恐縮する必要はないさ。いつもウチのカミさんが何かと世話になってるんだし、第一、俺を引っ張りだしたのは総二郎なんだから」
 「ははは」
 途切れとぎれに聞こえていた会話が少しづつ明確になって、完全に意味のある言葉となった頃には、彼の意識は急浮上していた。
 うっすらと目を開きかけて、あまりの眩しさに向きを返え仰向けた状態で目を開く。  ぼんやりした視界が徐々にカタチとなった。
 見覚えのない天井は飾りっけのない白いクロス貼りで、まだ新しいのか真っ白な色合いにシミ一つないが、丸いLEDシーリングライトだけが嵌め込まれた天井はひどく殺風景で寂しく、ずいぶん低く感じた。
 …ジーナの家?
 そんなありえないバカなことがふいに思い浮かぶほど、彼の日常生活とはかけ離れた目の前の光景に、自分が今どうしてこんなところにいて、こんな状態でいるのかとっさに思いつかないことに気がついた。
 腕を上げ、頭に手を当てようとして、布団の中の利き腕を引き出そうとしたとたん、ビーンッとした痛みというよりは痺れる感覚に戒は呻いた。
 「うっ」
 ついでそこに心臓があるかのようなズキンズキンとした痛みに、顔を顰め、反対側の手で傷口を庇って抱え込む。
 「お、マキさん、坊や、目が覚めたようだぞ?」
 「え?」
 自分のことを言われているらしいセリフに、不機嫌に顔を歪めたまま今度はしっかりと目を見開き、覗き込んできた女の顔をジッと睨み据える。
 「……良かったぁ」
 感極まったように涙ぐんだ女が、泣き笑いの変な顔で戒へと微笑みかけてくる。
 …誰だ?
 妙に懐かしい気がする。
 けれど、寝不足にくすんだ顔色の化粧も剥げ落ちた女の顔に、戒はまったく見覚えがなかった。
 止める間もなく小さな手がすっと伸ばされて、彼の髪を柔く撫でる。
 「一晩中高い熱を出して、大変だったんだよ。ずっと苦しそうだったけど、よく頑張ったね」
 まるで幼い子供に言い聞かせるようにして話す女の手は、優しく温かかった。



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大好きです!

いつも楽しく読ませていただいております♡こ茶子さまのお話し大好きです!シリアスな部分が最後のハッピーエンドを最上のものにしてくれていて毎回電車の中やバスの中ででも涙してしまいます。いつもステキなお話ありがとうございます⸜( ´ ꒳ ` )⸝

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