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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0803

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 動揺にイマイチ要領の得ない、そんなことばかり呟いてていたが、無理もないことだと彼女からこんなことになった経緯を聞き出すことはとりあえず諦めた。
 どの道戒が目を覚ませば聞けることだ。
 つくしと戒を紹介された医院で降ろし、意識を喪失してしまっていた戒を院内に運び込むと、総二郎が宥め透かした少女を家まで送ってくれ、ちょうど治療が終わるのと前後して戻ってきた彼と、医院内には入院施設がなかったことから、ここ…現在のつくしの住まいへと戒を連れ、先ほど戻ってきたばかりだった。
 戒を自宅に連れてきて良かったのか、つくしは今もって迷っていたが、それでも時間が時間であることもあり、病院の場所と世田谷の道明寺邸ではかなり距離があって、タクシーで連れて行くにしても相当時間がかかり、総二郎の家も同様のこと。
 体力消耗の観点からもやむ得ないことだったと自分を宥めても、それでもかつて昔、司と約束したことが心に引っかかってもいた。
 …もう会わないって約束だったのに。
 不可抗力ではある。
 だからといって、たとえ可能でもこんな状態の戒を一人、家族の誰もいない家に帰すことなどできない。
 「……さって、俺はひとまず家に帰るか」
 気が付けばもうすでに午前も大きく回り、3時になろうとしていた。
 「あ、ごめん、気がつかないで。上に客間があるからそこ使って」 
 「…………いいのかよ」
 「良くはないけど」
 だがさすがにここまで世話になっていて、この時間からでは電車やバスなど走ってはいないだろうし、第一総二郎がそうした公共交通機関を使うはずもない。
 都内であれば24時間タクシーを呼べるところもあるが、このあたりではおそらく予約がなければ来てはくれないだろうし、かといって営業しているところから往復させるとなったら、どれだけ時間がかかるかしれたものではない。
 …料金の方はこの人の場合、気にするところじゃないだろうけど。
 躊躇しないわけではなかったが、だからといって誰も彼もが襲いかかってくるケダモノだと怯え疑うのでは、それこそ被害妄想の極みだ。
 もっとも、そこには総二郎自身への信頼というよりも、類の親友であり―――司の親友である彼が、いまさら女に不自由をしているわけでもあるまいに、わざわざ友人たちと気まずくなり得る彼女に対して何をするとも思えないということもある。
 …ま、鍵もついてるし。
 戒を寝かせているつくしの部屋は、元々この家に住んでいた一家が主寝室として使っていた部屋で、ここばかりではなく各寝室には鍵もついている。
 「屋敷から車呼ぶかと思ってたけど…そうだな。どっちみち、明日、もう今日だが、京都だしな」
 そうだった。
 「ごめん、今お布団敷いちゃうね。そっち、玄関から入って突き当たりのところがお風呂になってるから、良かったら入って?その間に、着替えとか歯ブラシとか必要なもの揃えておくよ」
 「着替えって、男物がお前んちにあるのかよ?」
 「あ~、パジャマとか進が前に家族で泊まりに来た時に忘れていったヤツがあるんだけど、西門さんじゃ小さいかな。長さはともかく、西門さん細身だから大丈夫そうだけど、もしかしなくてもけっこう着痩せしてる?」
 「かな。これでも運動してるし」
 「ああ~」
 そんな気がしていた。
 もちろん茶人である総二郎が日々肉体労働しているわけはないが、司にしても類にしても、今時の企業の広告塔も担っている人物はそれなりに身なりには気をつけるし、総二郎にしてもある意味客商売だ。
 なおいっそう自分の容姿には、磨きをかけているだろう。
 …毎週ジムとか通ってるんだろうな。
 それはともかくとして、
 「パンツとか、近くにコンビニあるし、買ってくるよ」
 「それこそアホ言うな。…いいよ、風呂は。とりあえずお前が構わないって言うんなら、2、3時間、タクシー呼べる時間帯まで寝させてもらって、早々にホテルに戻ってから入るから」
 「ホント、ごめんなさい」
 酒はもう抜けているだろうが、今日も一日移動やら仕事やら忙しいだろうに、ロクに睡眠も取らせずに送り出すことになることを謝る。 
 「いいって。こいつは司の息子だしな。血は繋がっちゃいねぇが、俺もまるっきりの他人ってわけじゃない。乗りかかった船にしては、面倒のてんこ盛りだったが、ま、しゃーねぇな」
 「…うん、ありがとう」
 あくまでも律儀に礼を言うつくしに、総二郎も珍しく邪気のない優しい顔で笑う。
 「じゃ、俺も寝かせてもらうわ。お前の方も下手に俺が後ろに張り付いてるより、その方が気楽だろ?」
 その通りだが、まさかそのまんま肯定するのも気が引けて曖昧な笑みで、遠巻きの肯定に変えた。
 総二郎がそう言うのも、以前つくしが男性恐怖症を患っていて、密室に異性と二人でいるのがプレッシャーに感じると告白したことを憶えていてくれたからなのだろう。
 …あ、布団。
 慌てて戒の枕元から立ち上がろうとしたつくしを、総二郎が制止する。
 「ああ、適当に自分で布団敷いて寝るから、お前はここに居ろ。俺もこう見えても布団くらい敷いたことあるし」
 「え~、そうなの?」
 総二郎は腰が軽いが、それでもあくまでも女性関係限定で、そうした日常生活に関しては司や類と似たり寄ったりのお坊ちゃまだという認識がつくしにはあったから、意外だった。 
 「そこが会社経営の御曹司どもとは一味違うところなんだよ」
 「…ふぅん?」
 何がそんなに得意なのか、胸を張ってニヤリと笑う総二郎につくしが苦笑する。
 手をひと振り、踵を返しかけ、 
 「あ、そうだ。…ここの表札、廣方って苗字になってたよな?」



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