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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0801

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 「とにかく熱が高いのよ」
 「……39度8分か。ガキの知恵熱ってこともねぇだろうし、兄貴からもらった解熱剤は飲ましたんだろ?」
 「ん、今さっき痛み止めや抗生剤と一緒にね。夢現って感じで中々飲んでくれなくて、けっこう手間取ったけど」 「なら、もう少しすれば多少落ち着くだろうし、意識も戻るんじゃねぇの?」
 「………それならいいんだけど」
 戒の枕もとに腰掛け、顔や首、パジャマから出ている部分の汗をタオルで拭うつくしの顔色は、ベッドで寝ている戒よりもずっと青く顔色が悪かった。
 戒の方は痛み止めの影響もあって、目が覚める気配もない。
 目の前にいるこの二人の関係を知っている総二郎でさえ、‘母親’というものはこういうものなのかと感心してしまう。
 …ずいぶん長く会ってなかったって言うのにな。
 「ま、こいつがいつもかかりつけにしてる大病院ってわけじゃねぇけど、別に潜りの医者にかかったってわけでもねぇんだ。熱が出てるのも怪我のせいというより、元々風邪気味かなんかみたいだったしな」
 「…らしいね」
 「一応、縫った後に痛み止めと抗生剤も処方されてるんだから、そんなに心配しなくてもいいんじゃねぇの?」
 「まあ、それはそうなんだけど」
 医療職ではないとは、つくしも病院勤めの端くれだ。
 よもや死ぬほどの大怪我だと思っているわけではなかったが、それでも青白い顔で苦しそうな顔をしている戒の顔を見ていれば、自分の胸も苦しくなるし、可哀想で仕方がなくなる。
 一昔前なら洗面器に氷水でも入れて、濡らしたタオルで頭を冷やしてやるところだが、今の世の中、アイスパックという便利なグッズもあり、一度額や患部に貼ってしまえば、後はせいぜい氷枕の具合を確認して汗を拭いてやることくらいしかできない自分が返って歯痒かった。
 どう見ても彼との会話に乗り気ではないつくしの背後で、しばらく苦しげな吐息を洩らしている戒とそんな彼を看護するつくしを黙って見守っていた総二郎だったが、再び口を開く。
 「こいつんち…世田谷の屋敷には、俺から一晩泊めるって連絡しておいたから」
 「…あ」
 すっかり失念していた。
 失念していてよいことではなかったが、つい目の前にいる‘戒’の実物…それも大怪我をして弱っている十年近くブリに見る息子の姿にテンパっていたのだろう。
 「ごめん、西門さん、ありがと」
 父親の親友である総二郎から連絡を入れてもらえたなら、特に心配されることもなく問題もないだろう。
 「えっと、何か言われた?」
 「あ?」
 「その、この子の、おか…あさんからとか?」
 割り切っているつもりで、‘おかあさん’と彼の継母を呼ぶ時の屈託を総二郎悟られてしまったかもしれない。
 けれど、総二郎を戒の顔を見ていた視線をチロリとつくしに一瞬動かしただけで、特にそのことに関しては何も言うことはしなかったし、総二郎も特につくしに遠慮するつもりはないのだろう。
 「いや、今日は留守してたみたいだな。今はNYとこっちで司と別居してるとはいえ、カミさんはカミさんで、今は大河原財閥が経営してる会社の女副社長として経営にも参加してることだし、道明寺家の若奥様業との兼業で何かと多忙だろ」
 「…そうだね」
 道明寺家の御曹司の妻という立場がどれだけ多忙なのか、つくしも経験からよく承知している。
 ましてや、滋は実家の事業にも参画しているというのだ。
 司にも負けず劣らずな多忙さだろう。
 ―――そうあるべき者として、生まれながらに定められた運命を粛々と受け入れ、それを立派に果たし、周囲の誰にもそれを侮られることもなく尊崇されて当然の人間。
 司と同じように。
 卑下するつもりはないが、それでもそれが本来の運命というやつで、いかに自分が間違った…本来ありえない星の下に自分を置いて
いたのかと、つくしはあらためて思い知らされる気がした。 
 「とりあえずちょっと怪我して、夜も遅くなったことだし、俺の知り合いんちに泊まらせるとか適当に言っておいてが…しっかし、お前もやってくれるよな」
 「なによ?」
 呆れたように言われて、背後に立つ総二郎を胡乱に振り返る。
 つくしを見下ろす総二郎の顔は、声音そのままに呆れたような感心したような微妙なもので。
 「人がちょっと目を離した隙に、妙なことに巻き込まれてずいぶんとんでもないもの拾ってきたもんだ」
 「ううっ、そ、それは」
 自分でも無謀無策な行動だった自覚があるだけに、反論できない。
 「それがたまたま、大立ち回りやらかしてヘマこいてる自分の息子だったつーのは、すげぇ偶然だけどよ」
 「それは……本当だね」
 「…んん」
 苦しげに顔を歪めて呻いた戒の頭に手を伸ばし、その父親にそっくりなクルクルの巻き毛が汗で濡れて緩やかなウェーブになっているのを、手で梳いて撫でてやる。
 …大きくなったんだね、本当に。
 何度となく司から送られてきた写真の中の彼は順当に大きく成長してはいたけれど、それはそれとして、彼女の記憶の中の戒はいつまでも最後に別れた…可愛い顔を涙でぐちゃぐちゃにして泣きじゃくっていた彼のままだった。
 「蛙の子は蛙つーか」
 「………?」
 「こいつと最後に会ったのは、司と…今のカミさんの結婚式の時だったか」



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