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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0797

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 「やだ、離してよっ」
 「いいじゃん、こんな真夜中にほっつき歩いてるなんて、どうせ家出中なんだろ?ウチに泊めてやっから、俺らと遊びに行こうぜ」
 「帰るところなのっ!触らないでっ!!」
 ネオンのきらめく大通りの片隅や、そこかしこの路地裏でよく見かける光景。
 一人の少女に男3人が群がり、そのうちの一人が嫌がるミサの細い腕を掴んでさらに暗く細い路地の奥へと引きずり込もうとしていた。
 ミサも危険を感じているのだろう、必死に足を突っ張り、男たちの誘導する暗がりに連れ込まれまいとしているが、多勢に無勢、そうでなくても少女の細腕で複数の男たちの力に抗えるはずもない。
 「誰かぁ!助けて!!」
 ついに思い余って通りかかる通行人を振り返り助けを呼ぶが、男たちの一睨み、あるいは単純に最初から厄介ごとに巻き込まれるのを恐れて、視線を反らして足早にその場を立ち去って行くばかりだ。
 戒がミサと徹に初めて出くわした日と同じように。
 「その手、離せよ」
 ゲラゲラ笑って、ミサの抵抗を物ともせず引きずって行こうとしていた男たちが、背後からかかった声に、一斉に振り返った。
 「なんだよ、てめぇ」
 独創性のカケラもないお決まりのセリフで、気怠げに立つ戒を威嚇してくる。
 「俺のツレ」
 ミサを指し示して顎をシャクった戒に、男たちが顔を見合わせ、ミサの腕を掴んでいた男の手の力がわずかに緩む。
 「こっちに来い、美咲」
 戒の出現にホッと安堵するよりも、戸惑って事の成り行きに固唾を呑んで動けないでいたミサが、その言葉で弾かれたように戒の方へと走りだし、…かけた。
 「やっ!」
 「待ちなよ、美咲ちゃん?やっぱ、俺たちと遊んで行こうぜ。そっちの彼氏、高校生か?大学生ってことはねぇよな、お前も来いよ」
 「おい、克己」
 ミサの手を掴んで引きずり戻し、仲間に羽交い締めにさせたリーダーらしい男の意図を捕らえかねているのか、他の二人も怪訝に異議を唱える。
 「見ろよ、あの坊やがしてる腕時計。アレ、三沢さんがしてるの見たことあるけど、たしか300万とかするロレックスだぜ」
 面白半分だった男たちの気配が一気に変わる。
 だが、それでも欲にまみれた頭にもいくらか冷静な部分が残っているのか、あきらかに面倒を引き受けてまでミサに執着する風情ではなかった男が、落ち着きなくリーダー格の男の顔と戒の顔、それに彼が身につけた時計のあたりを見比べ異口を唱えた。
 「…パチ物※なんじゃねぇの?良くてバッタ物※か」

 「バッタ物かはともかく、身なりも見ろよ。そこらのガキとは雲泥だ。金持ってることは間違いねぇだろ?」
 あきらかに戒の外見だけを見て、彼を侮ったセリフ。
 普段の彼だったら、たとえ夜の闇に紛れていようと、冷たい視線の一睨みで、侮るセリフも口にさせはしなかっただろうが、やはり今夜の彼はどこか精彩に欠いて覇気を失っていた。
 しかし、たかが街中のチンピラ如きに舐められて、唯々諾々と従う戒ではない。
 「あたしも戒もどこにもいかないわ。お願い、て、手を離して。…お、大声だすわ!」
 震える声音で、それでも懸命に男たちに抗おうとするミサを鼻で笑い、当然のことながら男たちはニヤニヤ嗤うばかりで取り合わない。
 「…好きにしなよ。さっきだって助けを呼んでも、誰も助けになんか来なかっただろ?見たからに俺らと同類で遊んでそうな美咲ちゃんみたいなオンナが、こんなところでこんな時間に助けなんか呼んだって、誰も余計な口出しなんかしてくれねぇよ?無鉄砲な美咲ちゃんの戒君くらいなもんじゃねぇの?」
 「言えてる」
 「そこらでイキがってるガキなんかじゃ知らねぇ楽しいことを、俺らがたっくさん教えてやっからさ。そう怯えるなよ?」
 男の一人がイヤがってるミサの顎を掴んで、覗き込むように顔を近づける。
 「ひっ」
 「…おい」
 「化粧濃いけど、もしかして中学生か?肉付き良くって超エロい身体してんのに、こういうロリっぽいオンナ、俺、けっこう好みなんだよな」
 「おい」
 怒鳴っているわけではないのに不思議に通る低い声音に、一度は反れかけていた男たちの意識が戒へと引き戻される。
 男たちが振り向いたその瞬間、戒がまるでボールを落とすようにして手に持っていた缶を垂直に落とし、予備動作なくいきなり足を振り上げ、地面に転がる寸前のジュースの缶を蹴り飛ばした。
 ガゴッ!
 「わあっ」
 「きゃあっ」
 「ぎゃっ!」
 ミサの頭上スレスレを通り過ぎた缶を、ミサの正面にいた男はかろうじて避けることができたが、彼女を羽交い締めにしていた男の方は対応が遅れ、モロに顔面に缶の投石を受け、小柄な少女の体を離して顔を押さえて蹲る。
 男たちが体勢を整える間もなく、目で周囲をすでに探っていた戒がすぐに腰を落として、あらかじめ目をつけていた石とアスファルトの欠片を手に取り、間を置かずに男たちへとその石を投げつける。
 シュッ!ガッ!!
 「ぎゃ!」
 シュッ!ガツッ!!
 「ギャァ」
 見事なコントロールで男たちの顔面を標的に次々命中させてゆく。
 「きゃあああああっ!!」
 「美咲、走れ」
 「…っ!」
 今度こそ正しく戒の意図を受けて、美咲が戒の傍へと走り寄る。
 「クソッ、この野郎っ!誰が逃がすかっ、おらあっ」
 頬骨に投石を受けたものの、虚を突かれただけで大してダメージを受けなかった男が、美咲の背中に大きな手を伸ばし、捕まえかける。
 が、
 「進藤あぶねぇっ!」
 音もなく軽いフットワークで男のサイドに回り込んだ戒が、横合いから長い足で男の首を狙って回し蹴る。
 男が仲間の警告に反応する間もなく伸ばした腕が空を切り、戒の蹴りで俯せにすっ飛んでゆく。
 ドガッ!
 「ぐわぁっ!!」
 「進藤っ!!」
 ズシャ―――ッ、ドンガラガッシャ―――ンッ!
 店頭に並んで設置されていた新装開店の花輪に、蹴り飛ばされた男が突っ込んで薙ぎ倒し、もんどり打ってアスファルトの地面に突っ伏したまま動かなくなった。
 間一髪で男たちの捕縛の手を逃れた美咲が、戒の背中に隠れ、身を寄せた彼のシャツを握り締めてくる。
 まるで怯えた仔犬か仔猫のように、ブルブルと小刻みに震えている小さな温もりのリアルな感触に、なぜかほんの束の間和まされて戒の殺気と緊張が緩んだ。
 「ガキが舐めんなぁっ!!」



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※パチ物…偽物
※バッタ物…本物だか正規品ではない物。
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