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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0794

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 「よし!牧ちゃん、総二郎さん2軒目行こう!」
 ケロッとした顔をしているが、かなり足にキているらしく似たような体格の女とはいえ、肩にべったりと懐かれるとかなり重い。
 …なんだかんだ言って、花ちゃんもストレス溜まってるんだろうな。
 夫の祥一郎といるところを見るといつもアツアツ夫婦そのまんまで当てられることも少なくないが、激務の夫は不在がちで、結婚10年目の現在、まだ子宝に恵まれていない花木的にはかなり寂しいらしい。
 『み~ちゃんがいるからさ、それはそれでいっかぁとも思うんだけどね』
 そんな風に子供のように可愛がっているペットの猫を引き合いに出す花木はあまり深刻に悩んでいるようには見えないが、つくし自身も過去激務の夫の不在に寂しさや不安を感じていたこともあるし、一時期不妊を悩んでいたことがある。
 二度の流産から何年もの間子宝に恵まれず、周囲からのプレッシャーもあってストレスを抱える悪循環に陥っていた。
 つくしが戒を妊娠したのも、そうしたプレッシャーを与えてくる人間のわんさといるNYを離れてしばらくしてのことだった。
 花木の場合は彼女自身の両親がすでに亡くなっていることもあり、ほとんど絶縁状態の西門家からの圧迫はないだろうが、それでも多忙な夫に変わって常に愛情を注ぐことができる存在が傍にいてくれれば、と思う彼女の気持ちは、かつてのつくしにも重なる部分が多くよく理解できた。
 おそらくそんなつくしの気持ちが伝わって、花木も付き合いの長短に関わらず、つくしに親しみを感じてくれたのだろう。 
 さすがに優紀や桜子ほどには親しいとは言えないが、つくしもまたこの一つ年上の友人を好いていた。
 「…二軒目って、そんだけ酔っててそりゃ無理だろ。兄貴が来るっていうのならともかく、緊急手術が入って午前様だって言うんだ。いくら泊まりじゃないにしろ、ただでさえ疲れてるのに酔っ払いの送迎とか気の毒だぜ」
 「西門さん」
 「んむ~」
 悪酔いしたらしい花木とつくしを先に店から出させ、会計を済ませた総二郎が呆れたように肩を竦める。
 「店にタクシー呼んでもらったから、志織さんを兄貴のマンションに送って行くついでに、お前も送るわ。牧野、お前んちの方が、ここからだと志織さんちより近いよな?」
 「ああ、わりに駅に近いところに住んでるから、わざわざ送ってくれなくてもいいよ。うちに寄り道したら、かなりの大回りになるし、電車で帰るから花木さんだけ送ってあげて?」
 珍しく総二郎の方は自宅の車ではないと思ったら、明日から京都に行く予定があるとかで、そのままここらの近隣のホテルに宿泊して新幹線に乗る予定なのだとか。
 幸い朝一とかそこまで早朝の出立ではなく、わりに余裕がある日程だったことから花木の誘いに乗ったらしのだが。
 「花木さんのウチまで回って、またこっちに戻ってくるんじゃ、それこそ午前様になっちゃうでしょ?」
 「…私も平気よ、よっと」
 さすがに花木も迷惑をかけられないと思ったのか、シャキンと背筋を正すが、それでも身体が揺れているのは隠しようもなく、ヨロケた拍子に肩にかけていたハンドバッグがゴロンと肩から滑り落ちて地面に転がった。
 「はぁ~、二人ともバカ言ってんな。俺がフェミニストじゃなくっても、兄貴の嫁さんと親友の大事な女をこんなところで放り出していけるわけねぇだろ」
 「親友の大事な女って」
 怪訝に総二郎を見返すが、総二郎の方はチロリとつくしに目を向けただけで、すぐに視線を外し、志織が落としたハンドバックを拾い上げる。
 「…まったく。志織さんは俺が支えるし、いざとなったら抱え上げるから、悪いけど牧野、これ待ってやって?」
 「あ、はい。了解」
 総二郎に差し出された花木のハンドバックを受け取り、自分のハンドバックと重ねて肩にかける。
 「あう、前回に引き続きまたもごめんなさい。今回こそは粗相のないようにって、肝に銘じてたんだけどなぁ。…はぁ~、ホント、ダメダメね、私。今日はそんなに飲んだつもりじゃなかったしぃ」
 「そう言えばそうだよね。いつもからしたら、全然飲んでなかったのに、ずいぶんお酒の回りが早かったよね?」
 「…やっぱり?」
 「ここのところ、花ちゃん、病院でもずっとダルそうだったし、体調が悪かったんじゃないの?」
 「具合悪いのか?」
 総二郎も眉根を寄せ尋ねるが、花木の方はそれほど自覚がなかったようだ。
 「…ん~、そうかなぁ。私的には特にそんな感じじゃなかったんだけど」
 いくら酔い潰れるまで飲むのも珍しくはない酒豪とはいえ、他人の迷惑も顧みず時や所かまわずというほど、花木も傍迷惑な人間ではなかった。
 「ま、なんにせよ、あんまり無理すんなよ。医者の不養生…この場合、志織さんは医者じゃねぇか、でも、どちらにせよ、病院関係者なんだからまず自分の健康第一だろ?」
 「まあ」
 「……なんか、西門さんが健康第一とか言うと違和感バリバリ」
 つい本音をポロリと呟いて、「うるせぇよ、チャカすな」と総二郎に小突かれる。
 「とにかく俺が志織さんに肩っつーか、抱えて歩かせるから、このまま帰るぞ。ここら辺だと車が入りずれぇし、とりあえずは大通りまで出よう」
 「は~い」
 「はい」」
 いつの間にか送られる方向で、総二郎に丸め込まれている気がする。
 …ま、タクシーまで西門さんと花ちゃんを送ったら、私はそこで別れればいいっか。
 そんなことを思いながら、花木を半ば片腕で抱えている総二郎をサポートして、大通りへと踵を返したかけたところで、花木が「あ!」と大声を上げた。
 「?」
 「なに?」
 「ないっ!」
 「「は?」」
 異口同音にハモり合って、間に挟んだ花木の顔を覗き込みつつ、総二郎と顔を見合わせた。
 「結婚指輪!」
 「ええっ!?」
 「……マジかよ」
 とんでもない発言にギョッと花木の左手に目を向け探すが、たしかに薬指のみならず五本の指のどこにもそれらしいアクセサリーが見当たらない。
 他の物ならばともかく、よりによって結婚指輪。
 そう簡単に指から外れるものではないが、足腰立たなくなっている酔っぱらいのことだ。 
 「ど、どうしよ」
 「どうしよ、って家に置いてきたんじゃないの?」
 「…さっき、お店の洗面所に立つ前まであったもん。指輪のダイヤがいつの間にか内側に回ってて、グラスに傷がついたかとヒヤっとしたから覚えてるの!」
 指輪がクルリと回るくらいだ、相当緩んでいた証で、滑り落ちた可能性がいよいよ高まってくる。
 「わ、私、店に戻って見て来るっ!」
 「…俺も行ってくる。悪ぃけど、牧野、呼んだタクシーにワケ話して引き止めて置いて」
 「わかった」
 とんでもない事態になった。
 うっかり酔っぱらいの花木の思い違いだったということであれば良いが。
 …まったく。
 なんだかよくわからないが、またも厄介なことになったとつくしは大きくため息をついた。




*****



 ガゴッ!
 「ぎゃっ!」
 大通りに出て総二郎が呼んだタクシーを探そうとつくしが目を凝らしていたところ、ふと途切れ途切れに耳についた騒音と人の争うような怒声に、眉根を寄せ音源へと顔を向けかけたその瞬間―――。
 「きゃあああああっ!!」
 つんざくような女の子の悲鳴にギョッと振り返って、足を踏み出していた。
 疎らな人通りのある通りを歩く人々も、やはりつくしのようにギョッと足を止めては振り返り、だが大半の人間は後ろ髪を引かれながらも余計な関わりを恐れてその場を足早に離れてゆく。
 つくしにしても、自分がバカなことをしている自覚あった。
 深夜も近いこの時間帯、酔っぱらいも多いこんな繁華街の通りでの喧嘩沙汰。
 「…の…野郎っ!………かっ、おらあっ」
 ドガッ!
 「ぐわぁっ!」
 「進藤っ!!」
 ズシャーーーッ、ドンガラガッシャーーーンッ!
 関わり合うなど正気の沙汰じゃない。
 そんなことは、彼女もよくわかっている。
 けれど……、
 「キャーーーッ!!いやあ、いやあ、いやああっ、誰かぁ!誰かぁ!!誰かああああっ、誰か助けて、人殺しぃっ!」
 …ああっん、もうっ!
 最大マックスの悲鳴に、走る速度を一気に上げ、暗く陰る小道の向こうを透かし見る。 
 ギラリ。
 「ひっ」
 塀の角を曲がった途端に広がっていた凄絶な光景につくしが思わず棒立ちになる。
 地面に何人もの人が転がっていた。
 おそらく先ほどの悲鳴の主だろう、高校生くらいの女の子と、その彼氏か友達か、ツレだろう同年代の背の高い少年だけがその場で唯一地面に足を踏みしめている人間だった。
 あきらかに、その片割れの少年が周囲の凄絶な惨状を作り出していたことは間違いない。
 つくしの脳裏にいつの日にか見た光景が彷彿と蘇り、その既視感に喘ぎ息を詰まらせる。
 一番手前にノびている、いかにもこの界隈にタムろって粋がっていそうな派手なナリの男の手に握られていた刃物に、ちょうど通りかかった車のヘッドライトの明かりが反射して、つくしの目に禍々しい赤い血の色を焼き付けた。
 思わず怖じけて、後ずさった間近に転がっていたジュースの缶に足を乗せ、蹴躓いてしまう。
 ゴキュッ。
 「ぎゃっ!?」
 ガンッ、ゴンッ、ゴロゴロゴロ。
 つくしの足に蹴飛ばされて、コンクリート壁にブツかって跳ね返り転がる缶の音が、夜の喧騒の狭間に妙に響いて争いの中央で闘いの覇者よろしく仁王立っていた少年の注意を引く。 
 「誰だ」 



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