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「愛してる、そばにいて」
第9章 闇に下る太陽①

愛してる、そばにいて0793

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 「おう!こっちだ、つくしちゃん」
 洒脱な美男が手を上げると同時に、バーにいた人間が一斉につくしの方へと注目する。
 …よりによって、カウンターに座ってるとか勘弁してよ。
 ただでさえ目立つ男なのに、衆人環視状態の中に突っ込んでいくのには大層な勇気と図太さを要求され、内心で回れ右をしたい誘惑を堪えるのに苦労した。
 しかも、
 「…に、あれ」
 「オバさんじゃない」
 コソコソ耳打ち合っているフリで、しっかり聞こえる声で内緒話をし合っている総二郎の傍らに立つ二人の女性の姿になおさらため息だ。
 「というわけで、悪いけどツレが来たからまたね。君たちも俺みたいなオジさんじゃ、話合わなくてつまらないと思うしさ、君たちも君たちに程度の合う似合いのヤツらを見つけな?」
 ポンと女の子の一人の肩を小さく叩き、すれ違いざま色悪そのもののような流し目で二人を悩殺して、総二郎が歩み寄ってくる。
 ウブでもなかろうに、顔を赤らめポウッと総二郎の後ろ姿に見惚れている女の子たちを尻目に、つくしの方がどこまでも平常運転だ。
 女の子たちを甘く煙に巻く一方、さりげなく辛辣さを織り交ぜている彼の物言いに呆れて、傍に立った男を胡乱げに見上げた。
 「なに、その目」
 「よくやるわ、って思っただけ」
 「そ?さすがのお前でも、オバさん呼ばわりはムカつくだろ?」
 「いや、あの子達に比べたらオバさんなのは本当だし…て、いうかむやみやたらに肩を抱いてくるの辞めてくれない?」
 総二郎に誘導されるままにカウンター席から、店の奥の個室席へと移動しつつも肩に伸びてきた手を振り払う。
 「相変わらず、堅ったいな、つくしちゃん」
 「だから、そのつくしちゃんっていうのもやめてよ」
 高校生くらいならまだしも、三十路も大きくすぎてそろそろアラフォーと言われる年代にまで言われたい呼び名ではない。
 「苗字で呼ぶより、ずっと親しみがあっていいだろ?」
 「いや、別に私はあんたとまったく親しみたいとも馴れ合いたいとも思っていないし」
 ケンモホロロなつくしの返事に、何がおかしいのかニヤニヤ楽しそうな総二郎の様子に再びため息だ。
 「なんで、私に連絡してきたりするのよ」
 ちょうどつい最近、総二郎や彼の兄嫁に花木との付き合いを考えなければならないと思っていた矢先のこと。
 「冷てぇな、師匠だろ?」
 「そんなカビの生えたような昔の話持ち出されてもね。…ていうか、携帯番号、あんたに教えた憶えまったくないんですけど、私」
 「ああ、ほら、前に志織さんが酔い潰れてお前呼び出した時あったじゃん」
 「………………」
 そういえばその時も志織こと花木からの直接の連絡ではなく、総二郎からの電話だったと思い出した。
 …花ちゃん。
 さすがに飲む相手が誰でも彼でもと言うわけではないが、可愛い顔に似合わずめっぽう酒好きで、飲み会となれば潰れるまで呑むのが珍しくはない友の顔を思い浮かべ、心の中で文句を言う。
 「花ちゃん…花木さんと会うからって一々私を呼び出すのは、ホント勘弁してよ」
 エスコートされ腰を下ろしたとたん、メニューを聞いてくるウェイターにソフトドリンクを注文して、とりあえずはあれこれ総二郎が注文してゆくのを見逃す。
 どうせグダグダ言ったところで、この口だけは回るスケコマシにはなんだかんだと丸め込まれて花木がやってくるまでは引き止められるのだ。
 「だっていくら兄嫁だっつたって、この俺が女性と二人きりでこんな雰囲気のあるバーで飲んでたりしたら、誤解を招く元だろ?」
 「…だったら、そんな雰囲気のあるバーでなんか二人で飲むなっつーの」
 ウェイターにはあらかじめ話しておいてくれたのか、個室だというのに、部屋のドアは開け放たれたままだ。
 バーの中は薄暗くそれでも大きな声を出さなければ十分プライバシーは保たれていたが、逆に個室からバーの内部は、店の間接灯に反射した光でチラチラ動く人の動きが十分にわかる。
 もちろん、そうしたことが、男性と二人っきりで密室にいることを忌避するつくしへの総二郎の気遣いであることはいくら鈍い彼女にだとてわからないはずもない。
 小娘の頃ならばいざ知らず、つくしももう人の機微にそれなりに聡くなったいい年齢の女だった。
 「一杯居酒屋とかは…まあ、あんたじゃ無理か。じゃあ、普通にどっかのレストランとかで食事にすればいいんじゃない?」
 それにしても、つくしと同じく一般庶民の花木とコテコテのセレブ臭漂う総二郎とでは、行きつけの店からして違うだろうが。
 そこらへんは、つくしが行きつけている店でも文句を言わず、特に不満も持っていなかったらしい類のような男とはまるで事情が違う。
 …気安そうで、そういうところ西門さんも生粋のお坊ちゃまだし。
 「しょうがねぇだろ。俺もだけど、志織さんも仕事持ってるだろ?あれでも一応兄貴の奥さんなんだし、どうしても兄貴のスケジュールに合わせての外出になるから、そのぶんやっぱ時間的にそんなに早い時間でお互いのスケジュールに合わせるって言うのは無理な話だ」
 「それは、まあ、そうだろうねぇ」
 「志織さんとしては医者になったことで一人、一族からあぶれた兄貴と、俺ら家族を少しでも交流させたいって気持ちはわかんだけど」
 そこにはおそらく自分のような一般庶民の女と結婚したことで…といった気持ちもあるに違いない。
 すでに総二郎の兄は花木との結婚の前から家を出ていたのだし、そうであれば花木との結婚で揉めたということもなかろうが、それでもという思いは似たような立場を経験しているつくしにも理解できた。
 だが、総二郎の苦笑にはそうした兄嫁のお節介をありがたくは思っていない本音が透けている。
 「お兄さんのこと、西門さんは赦してるんでしょ?」
 「兄貴の選んだ選択だ。赦すも赦さないもねぇよ。それでまあ、多少こっちにもしわ寄せが来たことは確かだけど、自分で自分のやりたいことを見つけられたんだ。弟としてもその意志は尊重してるし、尊敬もしてる。が、それとこれとは別っつーか、未成年のガキだって言うならともかく、この年で兄貴や兄弟と交流もクソもねぇだろ」
 「……その綺麗な顔で、‘クソ’とか正直辞めて欲しいけど」
 「なになに、つくしちゃんも俺の顔、綺麗だとか思ってたの?やっぱり」
 やっぱりと言うところが鼻につくが、向かい側の席から甘く誘惑するような眼差しで覗き込んでくる男の顔を冷めた目でいなす。
 「普通に綺麗だと思ってますけど?」
 それがなにか?と、つくしの平然とした態度に難なく出鼻をくじかれ、総二郎も別に本気で彼女を誘惑しようと思っていたわけではないのだろう、あっさりと態度を改める。
 「ツマンネーな、お前ホント。ガキの頃は、ごく普通の純情一直線、純朴少女そのものだったくせに、ずいぶん熟れて、可愛げねぇ女になったもんだぜ」
 「お生憎様、いつまでもガキのまんまじゃいられないわよ。…でも、あんたは幾つになってもほとんど変わらないわね」
 「まあな。ま、お前の場合、司と類で俺らに免疫ありすぎるほどあるし、…そうやって誰が相手でもほとんど態度変えねぇから、付き合い安くもあるんだけどよ」
 「それはどうも?」
 礼を言っていいんだか、どういうものだか。
 「で、花木さんは?」
 つくしの問いに腕時計を確認して、
 「もうすぐ来るんじゃね?兄貴の方も一応は、急患が入らなければこっちに来るって言ってたけど…俺、正直、志織さんのこと苦手なんだよな」



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