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「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑦

愛してる、そばにいて0783

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 類が目を瞬かせた。
 本当に驚いているらしい彼の顔に、つくしが憮然とする。
 「なによ、その意外そうな顔?」
 「……いや、意外だったからさ」
 「意外って、好きでもない男とセ、セックスしたりしないし、プロポーズを受けたりしないわよ」
 つくしの言い分に類がまた苦笑してしまう。
 「そうだね。好き……とは、まあ、何度か言ってくれたことはあるけど、今までお前、俺のこと愛してるとは言ったことがなかっただろ?初めてじゃない?」
 それこそ意外でキョトンとして、けれど、思い起こしてみればそのとおりだったことに今頃ながらに彼女も気がついた。
 愛していなかったわけではない。
 伝えるのを惜しんだわけでもなかったけれど、……ただ彼女には、‘愛してる’という言葉はあまりに重すぎて、好きだと伝えることの方がずっと容易だったのだ。
 「そうね、そうかもしれない。私はあんたが好きだし、……愛してる」
 「うん」
 「あんたが私を好きでいてくれる気持ちもわかってる。愛してくれてる、……これからもずっと私と一緒に生きていたいと言ってくれた、その気持ちも信じてる」
 「うん」
 「でも、じゃあ、静さんは?」
 「……っ」
 ハッと類の顔が再び強張って、つくしの目をジッと見た。
 その目を反らさずに見つめ返す。
 「静さんのこと、忘れられていないって言ってたよね?憶えてる?」
 「……ああ」
 「それは今もでしょ?」
 「それは、……それは前にお前が言った、俺が今も静を想っているとか、あいつの下へ戻りたいとか、そういうことじゃないんだ。ただ……」
 「ただ静さんに幸せでいて欲しい、たとえあんたがその幸せに直接関わることができなくても、それでも輝いていてくれれば、そう言ってたわよね?」
 そして、その気持ちがつくしにもよくわかる。
 彼女もまた、司に対してそう思っていたから。
 けれど、運命はそんな二人を―――類とつくしを、けっして結び合わせはしなかったのだ。
 「今の静さんが幸せなのか、そうじゃないのか、私にはわからない」
 そんなことを判定するほどには傲慢なつもりはなかった。
 それでも、一人孤独に耐えて、死と戦いながら一人残してしまうかもしれない我が子を、心配する気持ちは痛いほどによくわかる。
 つくしもまた、母親だったから。
 「だけど、あんたがあの人を気にしてることはわかるのよ。気になって、……心配で、傍にいてあげたがっている。支えてあげたいと思っているのがよくわかるの」
 「違うっ!」
 類の冷静さが崩れた。
 その表情を見られたくないのか、片手で苦しげな顔を隠し、頑是無い子供のように首を横に振り、違うと言い募る。
 「絶対に違う」
 「本当に?」
 本当にそうであったなら、どれだけいいかと思わずにはいられないのは、つくしの女のエゴだ。
 類を追い詰めたいわけじゃないのに。
 いつも彼女に、温もりと優しさをくれた彼を、こんなふうに苦しめたいわけではけっしてないのに。
 「じゃあ、なんで、フランスなのよ?どうしてニースなの?あんたがもう静さんを想ってるわけじゃなくって、あの人が心配で気になって仕方がないわけじゃない、傍にいてあげたい気持ちを抑えられないというのではないのなら、このまま東京にいて、必要な援助をするなり、あの人たちを陰ながら見守ることだってできたはずでしょ?!」
 「それはっ」
 類の父が静に申し出たというように、彼女たちに物質的、金銭的な援助だけをして、彼ら親子を保護することだってできたはずなのだ。
 あるいは、親子としての名乗りは上げられないにせよ、杏樹と交流を持つことだとて可能だったのではないか。
 少なくても、つくしは反対しなかったはずだ。
 そうすることが実際にできたかどうかは別にして、逃げるようにして、あえて彼らとの関わりをそんな形で断ち切ろうとするのは、彼の弱さと優しさだとつくしにはもうわかっていた。
 …あんたは一度愛した女を、見捨てておけるような人じゃないから。
 今またも逃げてしまったら、彼はきっと後悔するだろう。
 つくしと再会する以前、10年もの間、闇に流離い続け荒んでいたように。
 「援助はするつもりだよ。静が受け入れてくれさえするのなら、だけど」
 静が受け入れない可能性は高い。
 実際はどうあれ、ただ幼馴染みというだけでは、類に静母子を援助するいわれはなく、彼女がそれを受け入れては、痛くもない……いや、痛すぎる腹を探られる元だろう。
 それでは類の将来の為に、過去、静が涙を飲んで一人悪者になった意味はなかったし、今となっては、杏樹の出生の秘密をも世間に暴露しかねないデリケートな問題だった。
 「でも、俺はつくしを愛してる」
 繰り返される愛の言葉が嬉しいはずなのに、幸せなはずなのに、……なぜ、こんなにも哀しいのか。
 彼の言葉が、けっして嘘じゃないことは、つくしにもよくわかるのに。
 「愛してるから」
 「じゃあ、静さんのことは?」
 先ほど聞いた質問を、もう一度繰り返し問い直す。
 軋るような胸の痛みと嫉妬は当然だった。
 「あの人のことも、あんたは愛してる、今も。だから、あんな状態のあの人たちを見ていたくないんだよね?あんなにボロボロの静さんや、杏樹をそのままにしてあんたは笑えない。一人だけ、笑ってなんて、生きて行けないから逃げるんでしょ!?」
 「………っ」
 「類、答えてよ?」
 咄嗟に、否定できないそれが真実であり、彼の答えなのだ。
 「お前に対する愛とは違うよ」
 たとえ、燃えるような‘愛’ではなくても‘愛’は‘愛’で、あるいはつくしへと彼が感じてくれる‘愛’とは、また別のものであったとしても、それもまた‘愛’なのだ。
 「そうかもしれないね。それはそう。……たぶん私も、あんたと同じように司のことを忘れられていない。忘れられていないし、きっとこの先も忘れられない」
 「つくし」
 「あんたは、私に司を忘れなくてもいい、お互いに違う人間を抱いたままのそのままで、それでも二人で生きていこう、幸せを作ってゆこう、そう言ったけど、でも、やっぱり私はイヤなの」
 女はエゴイストだから、独占欲が強くて、愛している男には自分だけを愛して欲しい生き物だから。
 「あんたの中に静さんを見るのはごめんだし、……きっと静さんもそう」
 「……………」
 「だから」
 項垂れる類のつむじを眺めて、小さく泣き笑いに顔を歪める。
 「類、私たち友達に戻ろうか?非常階段友達から添い寝友達になって、恋人にもなったけど、なんだろ。親友?戦友?…………そんな感じの友達関係。今も私はあんたのことが大好きだし、愛してる。でも、もうきっと、このままじゃいられないんだよ」




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