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「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑦

愛してる、そばにいて0779

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 真夜中や朝方にふと目が覚めてしまうことがある。
 夜の静寂でたった一人目覚めることは、時にとても寂しく恐ろしい。
 たった一人、この世の中で切り離されてしまったような哀しみと孤独。
 朝になってしまえば忘れてしまうような埒もない感慨で、また再び普通の毎日が始まって、普通の一日を終えてのその繰り返しがあるだけ。
 けれど、そんな毎日が平穏だと、ごく幸せで些細な毎日の一コマでしかないのだと、‘平凡’を与えてくれる人がいるからこそ感じられた幸せ。
 いつものように手を伸ばし、つくしはその幸せを与えてくれる温もりを探した。
 けれど触れるのは冷たいシーツの感触ばかりで……。
 身を切るような寂しさに、つくしは薄くそっと目を開いた。
 泣いたまま眠ってしまった瞼は重く腫れぼったく、乾いてしまった目脂で開けづらい。
 …類、どこ?
 うつ伏せかげんに枕に伏せていた頭をわずかに上げ、キョロキョロと暗闇に沈んだ寝室を探す。
 …いない。
 ギシッ。
 ゆっくりとベッドの上に体を起こして、ベッドに座り込み、落ちてきた長い髪をかきあげる。
 昨夜、……いや、おそらく彼が帰ってきてから、まだ数時間も経っていないだろう、先ほどのことが思い出された。
 「ハァ」
 溜息。
 「そうだ。類、締め出しちゃった……んだ」
 自分でも思わぬほど密やかな声は掠れて、とても自分のものだとは信じられないほどに弱々しい。
 …今、何時だろう。
 泣き寝入るようにしてベッドに入った時も、すでに午前をとっくに過ぎて真夜中の時間帯だったが、寝室の窓には朝日の気配がまだなかった。
 日の長い夏の時間帯なのだから、まだ3時とか4時とかそんなところなのかもしれない。
 寝室なら他にもある。
 けれど―――。
 着の身着のまま、すっかりしわくちゃになってしまっている洋服に顔を顰め、つくしはベッドから降りた。
 ガチャ、キィ~、パッタン。
 寝室を出て視線の向かう先、探すまでもなく、……類はそこにいた。
 居間のソファに腰を下ろし、項垂れるようにして。
 いつからそこにいたのだろう。
 まるで彼は人間というよりも、大理石か何かでできた精巧な彫像のようだった。
 ―――王子様の夢。
 あたかも童話の世界の王子様が抜け出したかのような、相も変わらぬ美しい男性の姿に、つくしは目を細めた。
 どれだけの時を過ごそうとも、彼に見惚れずにはいられない。
 彼女のスーパーヒーロー。
 手の届かない月や星を崇めるように、ただ見つめるだけで、好きだとさえ言うことさえもできなかった初恋。
 けれど、共に時を過ごすうちに、彼もまた人を愛することもあれば、叶わぬ想いに傷つき、惑い苦しむこともある一人の人間なのだと知った。
 温度や手応えのない、ただ行き過ぎて一方的に憧れているだけだった彼が、一人の人間に変わって……。
 彼を知れば知るほどに、
 …愛さずにはいられない。
 まるで魂の一部のような人。
 類が悲しめばつくしも悲しくて、苦しんでいる彼の姿に苦しんだ。
 彼が幸せだと笑ってくれれば、それだけで幸せだった。
 あの高校生の日もそうだったように。
 ―――ただ幸せになって欲しい。幸せだと笑っていて欲しい人。
 それは今も変わらない。
 類が彼女を助けてくれたあの日から、ずっと。
 そして、おそらく類にとっての彼女も同様だった。
 何気ない毎日を作ろうという彼の言葉に救われていたのは自分だけではなく、彼にとってもきっとそうだったのだ。
 二人で作ってきたぬるま湯の中での楽園。
 そのままだったなら、そうして二人手と手を取り合ったまま、一生を終えてしまっても全然かまわなかった。
 …絶対に、幸せでいられた。
 確信がある。
 けれど、人はそれまで生きてきた軌跡を、自分が成したことの結果を、自分自身で贖わくてはならない。
 どんなに辛くても、苦しくても、……寂しくても。
 自分たちゆえに、誰かを傷つけ悲しませたままで捨て置くのは、―――それは、罪だ。
 …もう子供じゃないから。
 軋るような痛みと哀切と、愛しさに突然襲われて、彼女の目から再び滂沱の涙が溢れ出す。
 それは悲しみの涙だけじゃない。
 けれど、もちろん喜びの涙なわけもない。
 自分でもわからないたくさんの複雑なものを内包した感情。
 もしかしたら、それは予感だったのかもしれない。
 つくしの歩み寄る気配に、微動だにしなかった形の良い頭が動いて、ビー玉色の目がそっと彼女を見上げてくる。
 「つくし」
 つくしは何も言わないまま類の傍らに立った。
 類は膝の間に立った彼女を見つめ、そして、その大きな手をつくしへと伸ばす。
 彼の手に誘われるように、つくしは無言のまま体を屈め、何度となく口づけた彼の頬へと羽根のようなキスを落とした。
 「チュッ……ぁ」
 彼女へと伸ばされていた腕が、そのまま彼女の細い腰に巻きついて、彼女をソファへと引き倒すようにしてしがみ付いてくる。



 ーーー類。
 つくしーーー。



 今、見つめ合う互いの目に映るのは互いだけ、そこには他の誰もいない。
 つくしが両腕を類の首に回して、抱き寄せる。
 互いの顔と顔とが自然に近づき、軽やかなキスを何度も繰り返す。
 「…………ん、ハァ……ぁ」
 キスしてキスされて、キスを深め合って、引き寄せ合い、……二人の影が完全に重なった。 




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