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「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑥

愛してる、そばにいて0770

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 つくしはできるだけ私見を挟むことなく、類の父や、桜子、静自身が語ったことを類に話した。
 ―――かつて、静が類と不倫交際していた当時、静の夫も不倫をしていて、彼女が離婚も考えていたこと。
 ―――当時から患っていたようだが、婦人系の病から貧血を併発し、静が心臓肥大という病に陥ってしまったこと。
 そしておそらくそこには、長年の過労や心労もあるのだろう。
 彼女がかなり重篤な症状に陥っているのは、繰り返される入退院や急激に窶れて老け込んだ外見から、たとえ聞いていなくても十分つくしにも察せられたし、類も同様だったのに違いない。
 病のことについてつくしが語りだすと、類は眉根を寄せ、その秀麗な美貌にはたしかな苦悩が浮かんだ。
 また、静が病に倒れれば当然のこととして、杏樹の今後が心配され、そうしたこともまた、静にとってのなおいっそうの苦悩と心労にもなっていたに違いない。
 彼女の実家や、婚家が頼りになればまだしも、辛うじて治療費については援助をしてくれているらしいが、過去の経緯や、……もしかしたら杏樹誕生の経緯から、実家とは疎遠になり、また、静はけっして肯定しなかったが、それでも杏樹が夫の子ではない以上、婚家がアテになるはずもない。
 今は、夫の事情で杏樹は彼らにも必要とされているようだが、それでも静の語り口から、けっしてそれは、親としての情愛などではないことは容易に察せられたし、杏樹の口ぶりからも母への情愛とは真逆に、父とされる人物への情愛がカケラとも感じられなかった。
 …万が一静さんに何かあれば、旦那さんの事情によっては、杏樹の進退はきっと凄く変わってしまう。
 寄る辺なき母娘。
 肩を寄せ合うようにして、互いを庇い合う母子の姿を、どうしてもつくしは忘れることができない。
 ところどころ、彼らが語らなかったことを、つくしが保完してしまったことはあっただろう。
 「旦那も不倫、ね。それらしい気配は当時からもあったんだから、いまさら目新しいことじゃないよ。それに離婚を考えていながら、静が俺と別れたっていうことは、あいつにとっての俺は単なる一時の慰め、結局は人生の伴侶とかそうした相手として考えてはいなかったってことだろ?」
 「それは」
 類の父親が関わっていたと、果たしてつくしが言ってしまっても良いものなのか。
 ましてや静自身が、直接類に語らなかった心情を、つくしが代弁して語るなど僭越でしかない。
 そして、類の父親のことについても、たとえ静が否定しなかったからといって、それは肯定ではないのだ。
 道明寺家がそうした体質を持っている家だったからといって、花沢家も同じような体質を持っているとは言えないように。
 だから仕方なく、たしかな真実だけを口にする。
 「静さんの旦那さんに世間体を慮る瑕疵があって、どうしても静さんと、離婚することに応じなかったそうよ」
 ―――そして、今現在も。
 「ふぅん?それで?」
 「え?」
 冷めた目と声音での問いかけに、つくしは何を問われたのかわからず目を瞬いて、怪訝に類を見返した。
 「それでって、……なにが?」
 「だから、それで何がどうしたってわけ?」
 「……………」
 「静が死ぬかもしれない病気なのはわかった。俺と不倫していた当時、旦那と離婚するつもりでいたこともね。だから、それでなんなわけ?俺とお前に、そのことがなんの関わりがあるんだよ?」
 「関わりがあるのか、って……そんな冷たい言い方」
 「じゃあ、なんて言えばいいの?たしかに昔俺は、静と付き合ってた。惚れてた。人生のほとんどを、まるで女神みたいに崇めて、あいつがすべてだと思っていたよ。でも、それが今の俺に、なんの関係があるのかってことだ」
 わかっていたことでも、類から静への愛の言葉を告げられることは苦痛だった。
 …こんな私でも、嫉妬するものなのね。
 だが、そんなことよりも、彼女が思ったのは別のことだった。
 …本心じゃない。
 類は、静を今も無関係だなどとはけっして思ってはいない。
 断言するには、類の表情や態度は彼が言うように、あまりに白けていた。
 いつもは怜悧に澄んで、悪戯っぽく光に満ちていた目が、暗く虚ろに澱んでいなければ、彼の本心をつくしでさえ疑うことはできなかっただろう。
 「お前は、俺の何?」
 「私は」
 「お前が言ってるのは、お前を捨てて俺に静をとれ、あいつの下へと戻れ、……そういうこと?」 
 つくしがショックに目を見開き、小さく悲鳴を上げる。
 たしかにそうした意味合いにとることもできたかもしれなかったが、けれど、つくしにとってはそこまでの意図があってのことではなかった。
 類に言われるまで、思いもしないことだったのだ。
 ただ伝えたかっただけ。
 しかし、思い起こせば、その指摘は静にもすでにされていたことだったのだ。
 ―――私に類を譲って、あなたは身を引く、そういうつもりなのかしら? 
と。
 「そうなの?」
 「ちが…っ」
 両手を口元にあて、必死で首を横に振る。
 ただ彼らの苦境を、類にも知らせるべきだと思ったのだ。
 知っておきながら、見て見ぬフリをすることができなかった。
 …あんたの子が、あんたを慕ってやってきたというのに、その子を見捨てることなんて、あんたにできることじゃない。
 けれど、いざ類が自分ではなく、静を取る可能性があるのだと示唆されてしまえば、そこまでの覚悟ができていなかった傲慢な自分を発見する。
 衝撃を受けているつくしの様子に、どこまでも冷たかった類の目が、わずかに柔らかく和んで、ゆるゆると首を横に振った。
 「もう終わったことだと何度も言ったよ。俺はお前と生きてゆく。ただそれだけで、他には何も必要がない」




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