「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑥

愛してる、そばにいて0768

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 「え~、いや、ちょっと、仕事のことでさ」
 「仕事?」
 「うん、大したことじゃないから、寝て起きて、明日になったらたぶん大丈夫になってると思う」
 「そ?」
 「うん」
 …とりあえず、今はそういうことにしておいて欲しい。
 そんなつくしをジッと見ていた類が、小さく吐息をつき、気持ちを切り替えたように彼女の背後、ついたままのテレビを見る。
 「まあ、いいけど。なに見てたの?……ウィーンフィル交響楽団演奏?」
 「えっ!?」
 正直、テレビはつけているだけでまったく見ていなかったから、何を見ていたのかと問われても、自分の方が聞きたいくらいだ。
 「ホント、グルグルしてたんだね。……また、めちゃめちゃ不審なチョイスしてるし」
 「は、はははのは」
 「大したことないなら話しちゃえば?」
 「ん~、まあ。……それより、ご飯できてるけど、どうする?さきに食べちゃう?それともお風呂?」
 話してしまいたい衝動と、迷いを天秤にかけて、とりあえずは保留する。
 「どうしようか。今日は外出が多くて、けっこう汗かいたからお風呂も捨てがたいけど。……つくし?」
 「は?」
 「いや、お夕食、お風呂、わ・た・し、だっけ?」
 「はああ!?」
 総二郎やあきらならまだしも、いかにもそういった下世話なジョークなどには無縁そうな清潔な顔して、シラッといつもながらのとんでも発言をしてくる類に、引きつり笑いをして声にドスを効かせる。
 「さっさと風呂に入って来い」
 「ぷっ……それ怖いって言うより、かなり面白い変顔だよ?」




*****




 類をどつき回して風呂に叩き込み、彼が出てくる前に、さっさと用意してあった夕食を配膳してしまう。
 出てきたら出てきたで、また世話がかかる男だ。
 類の変顔発言に少しは気持ちも解れ、マンションに帰ってきた時の自分でもどうしようもないやるせなさや、鬱々とした気分が少しは晴れた気がする。
 …さすがだな。
 そう思わされる。
 もちろん類の冗談は、つくしの鬱屈を見越したもので、彼女がそれで気持ちを持ち直せばよし、そうでなくても彼女が話す気持ちになるまで、特に何事もなかったように振舞ってくれるのだろう。
 あるいは、その屈託の理由さえも、見透かされているのかもしれなかったけれど。
 「へぇ、これなんか新しい味」
 「でしょ?新しく病院の食堂に増えたメニューのレシピを、実は横流しで教えてもらったやつだったり。どう美味しい?」
 「個性的な味だね」
 「なに、その微妙な感想」
 一緒の食卓でくだらない雑談を交わしながら、同じメニューの夕食をつつき、今日あったことを話したり、類の失礼な冗談に小突いて返したり、笑い合ったり。
 「ご馳走様。今日も美味しかった」
 好き嫌いが多い類が完食してくれると嬉しくなって、
 「へへへ、類の苦手な動物性タンパク質を混ぜ込んでたんだけど、ぜんぜんイケてたね。次はモツ系に挑戦しようかなぁ」
 「……失踪するよ」
 「なんでよ!前食べれてたものが今食べれないって、それ単なるワガママなんじゃないのっ!?」
 ニコッと笑った類が、返事をしないまま、そそくさと食卓を離れようとするのに、
 「出すから」
念を押すのに、仕方なさそうに折れて頷いてくれる。
 「努力します」
 「そうして。その代わり、無理そうなら一口で許してあげるから」
なんて折衷案で、つくしも妥協してあげる。
 今日はわりに類も早く帰ってきたから、食事のあとのわずかな時間を、二人でソファに座ってバラエティ番組を見て過ごす。
 いつもの毎日。
 特別なサプライズがあるわけじゃないけれど、これが幸せなんだと、やっと慣れることができるようになったのに。
 ―――泥棒!
 杏樹の声が、苦悩の色濃い寂しげな静の横顔が、彼女を忘れたといいながら、それでも虚ろになってしまう類のビー玉色の目が。
 そして、何よりも、杏樹と類と間に流れていた優しくて、愛しげで、切ない空気と想いが。
 …あんたはどうなの?類。本当のことが知りたい。
 『どわはははっ!バカやなぁ!』 
 『ホンマ、そうなんすよ。こいつ、田舎の母ちゃんにまったく頭が上がんなくって〜』
 テレビ画面の芸人たちの一挙一動に反応して、一緒に見ているつくしの肩を抱く類が、クスクスと楽しそうに笑う。
 いつの間にか、そんな彼の秀麗な横顔をジッと見ていたつくしの視線に、気がつかれてしまったらしい。
 なに?と類が小首を傾げ、言葉にしても尋ねてくる。
 「どうしたの?もう眠い?寝る?」
 「類」
 「うん?」
 「私、昼間に静さんに会ってきたの」
 「……………え?」
 つくしが何を言ったのかわからないといったように、怪訝そうだった類の顔が、徐々に理解を示して、呆然と彼女の顔を見返す。
 本当に意外だったのか。
 聡い類が、彼女のここのところの屈託を、まったくわかっていないとは思えない。
 けれど、それともやはり彼にとって、静の名前を聞くことは、平静ではいられないということなのだろうか。
 「どうして」
 「知りたかったの」
 「…………」
 「静さんがあんたのことを、類のことをどう思っているのか。本当は静さんも、あんたのことを忘れがたく思っているんじゃないか。……あんたもまだ静さんを想っていて、だから、本当は、あの人が心配であの人のことが気になってしかたがないんじゃないかって」




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