「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑤

愛してる、そばにいて0743

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 「先輩」
 睨めつけてくる桜子の視線に困って、つくしが視線を彷徨わせた。
 しかし、つくしの斜め対面側、桜子の隣の席に腰を下ろしたあきらが、即座に取りなしてくれる。
 「牧野を責めるなよ、桜子。俺が無理に頼み込んで、行き先を教えてもらっただけだ。最初はそれさえ渋って、なかなか教えてくれなかったくらいだぞ、な?」
 あきらの視線に応えて、仕方なくつくしも頷く。
 「まあ」
 「……はぁ~、あきらさんがその気なら、私のスケジュールをすべて把握されることくらい容易なのはわかっています。あきらさんが、わざわざ確認したかったのは、私の予定ではなくって先輩の予定の方でしょ?」
 「は?」
 思わぬセリフに驚いて、つくしがあきらへと視線を戻す。
 苦笑しているところからして、どうやら桜子の推測の通りらしい。
 「私の予定って」
 「私に聞く耳を持たせるために、クッションがわりに先輩に同席させたかったんですよ」
 「美作さん?」
 「バレたか。悪いな、牧野。……そもそも桜子には、俺からのアクションすべてを拒否って避けられてたからな。話し合うもなにも、婚約を解消してくれ、相応の慰謝料は払う、の一点張りだ。それじゃさすがの俺にも、どうしようもない」
 「…………そんな打ち明け話を、本当にこんなところでなさるおつもりですか?」
 桜子のセリフで、つくしも気がついた。
 たしかにあきらに近々桜子に会う予定があったら、自分も同席させてくれ、それがダメならせめて、会う予定を聞かせてくれと依頼されていた。
 つくし的にも、あきらと桜子は婚約解消云々を決する前に、ちゃんと話し合うべきだとは思っていたが、かと言って、本人が思い決めてしまっているものを、いくら友人だからと言って、無理強いにお節介をするようなマネはしたくなかったのだ。
 だから迷いつつも、食い下がるあきらに、今日のスケジュールだけは教えた。
 遅刻してきた桜子が、今日の予定を変えようとしたのには焦らされたものの、いっこうに現れないあきらに、彼の方でも都合が付かなかったのかとある意味安堵していたのだが。
 それにしてもたしかに桜子の言う通り、世間でも著名な人間が、醜聞にもなりかねない内輪の話を、誰に聞かれてもおかしくはないこんな場所で、堂々として良いはずがない。
 「ね、お店出た方がいいんじゃない?」
 「まだ、食事もしていないのに?」
 あきらが自分の前はもちろんのこと、揶揄るように、桜子とつくしのサラダや前菜的な料理しか並べていない皿に視線を流す。
 「私はもう食事はけっこうです。帰りますよ、……先輩は?」
 「あ…う、う…ん」
 …どうしよ。
 つくしとしては、深刻な話をするのなら場所を移してからにした方がいいという意味での提案のつもりだったのだが、あきらかに桜子の方は、店を移すどころか逃げに入っている。
 あきらの意図もわかっているだけに、つくしもすぐには応じ兼ねて、どうしても曖昧な返事になってしまう。
 「じゃ、いいです。私はお先しますので、あとはあきらさんと先輩で…」
 業を煮やした桜子が彼女らしくもない邪険さで席を立つ。
 が、
 「待てよ」
 テーブルに置いた桜子の手を上から押さえて、あきらが引き止めた。
 桜子同様、常には紳士的なあきららしからぬ強引さに、つくしだけではなく桜子も驚いたようにあきらを振り返る。
 「逃げるなよ。話があると言っただろう」
 「逃げるわけではありません。……が、婚約解消の申し出の理由なら、そもそもの両家の取り持ちをした大叔母を通して、そちらにもお伝えしたはずです」
 「…………俺にはロクに反論もさせずに、言いたいことだけを言い逃げしてか?」
 「っ」
 「桜子」
 口を挟むまいと思っていたのに、あきらの言葉の意外さに、思わず桜子の名前を呟き、ついつくしも彼女の顔を振り仰いでしまう。
 たしかに桜子からは、婚約解消の詳細を聞いてはいなかった。
 たが、あきらや桜子の話からして、二人が直接会って、彼らの間でも話し合いが持たれていたという印象がなかったのだ。
 …一応は会ってたんだ。
 意外ではあったが、それも当然か。
 さすがの桜子も、事務的な申し出だけで済ませるには、あきらとの間にそれなりの年月があったということだろう。
 それなのにーーー。
 肝心な話には言及できなかったところに、常には強気なはずの桜子の弱さが見えた気がした。
 「その顔やカラダ。ーーーそんなものが本当にそれほど重要なことか?」
 「あきらさんっ!」
 「美作さんっ!?」
 悲鳴のような桜子の声音に、慌ててつくしも周囲を見回す。
 しかし、むしろ桜子の激烈な反応にこそが衆人の注目を引き寄せたようで、彼女の叫びにチラホラ振り返る人々の視線が痛い。
 カッと頬を赤く染めて、桜子が苦しげに顔を歪めて再び椅子に腰を下ろした。
 「悪い。だけど、こうでもしないと、お前はまた逃げるだろ?お前が俺のことをどういう男だと思っているにしろ、俺はこのままなし崩しに、お前との間を終わりにはしたくない。……牧野」
 「え?……あ、はい?」
 唐突にあきらに呼びかけられる。
 桜子の背けている横顔ばかりを注視していたため、一瞬つくしは、あきらに自分が呼びかけられていることに気が付けなかった。
 「このあとの予定に変更あるか?」
 「え?予定?」
 …予定の変更とか言われても。
 元々桜子と食事をした後、のんびりドライブがてら、東京近郊の温泉地で、のんびり日帰り入浴でもして来る予定だったのだ。
 もっともあきらに予定を聞かれた時に、彼が現れることも念頭にあったから、その予定も変わる可能性があるかもしれないとは、つくしも思っていた。
 「桜子と温泉行く予定だったんだろ?うちの車で送るから、……悪いけど、もう少し俺たちの話に付き合ってくれ」
 「え…あぁ」
 「私はっ」
 桜子の手を握ったままのあきらが、桜子の反論を抑えてしまう。
 「じゃ、ここで話すか?」
 「………………」
 縋るような桜子の顔に、どうするべきかと迷って、結局つくしは桜子自身に尋ねることにする。
 「桜子、どうして欲しい?私はやっぱり、美作さんともう一度ちゃんと話すべきだと思う。部外者の私が同席していいのか、私には判断つき難いんだけど、あんたが一緒にいて欲しいと思うのなら一緒にいるつもりだし、二人っきりで話したいというのなら、私はここで失礼するよ」
 あきらも地位のある男だ。
 万が一にも、二人っきりにしたとて無体なことをするとは思えない。
 そうでなくても、元々理性的な男だ。
 今は珍しく強引に出ているが、それも筋を通せば、ちゃんと納得してくれるはずなのだ。
 …間違ってもストーカーになったりするタイプじゃないよね。
 むしろあきらが引きずる結果になっているのは、曖昧なまま逃げを打っている桜子自身が原因なのだと、おそらく彼女もわかっているはずなのだ。
 つくしからの問いかけに、桜子が唇をぐっと噛み締め、束の間逡巡したように俯き、……やがては、彼女も覚悟が決まったのだろう、目を瞑って大きく息を吐き出した。
 「わかりました。……たしかに、自分の言いたいことだけを言い捨てて、すべてを終わらせようなんて、ムシがいい話すぎましたね。あきらさんのお気が済むまでお付き合いしますよ」
 「桜子」
 「……桜子」
 顔をあげた桜子がつくしへと弱々しく微笑む。
 「すみません、先輩。そういうことですので、お付き合いくださいますか?一人だと、意気地のない私は、また逃げ出してしまうかもしれませんから」




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