「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑤

愛してる、そばにいて0741

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 「どうせ午後まで寝倒すつもりだって思ってたんだもの」
 「そのつもりだったけど、肝心のつくしがベッドを空けちゃったから、隣が寒くて目が覚めた」
 「ちょっ!」
 …な、なんてこと言うのよっ。
 人目を憚らないとんでも発言に、つくしがギョッと周囲を見回す。 
 「ぷっ、休日の公園なんて、みんな自分のツレや家族のことで手一杯で、他人のことなんてそう気にしてる人はいないし、誰も俺たちの会話なんて聞いてないよ」
 つくしの挙動不審な反応に、相変わらずの厚顔無恥男がケラケラと笑い出した。
 「そりゃあ、そうかもしれないけどさ」
 だが、ただでさえ目立つ類だけではなく、杏樹という天使ばりの美少年まで一緒に連れ立っているのだ、どうしたって目立たないはずがない。
 チラホラと視線を向けては、きゃあきゃあ燥いでいる女子高生たちや、女子大生風の若い女性の姿も少なくなかった。
 と、
 …あ、そうだ、杏樹。
 先ほどまで連れ立って雑談をしていた、少年のことを思い出して視線を向ける。
 ―――少年は、まだそこにいた。
 新たな見知らぬ闖入者の登場に、気後れして離れてゆくでもなく、さりとて人懐っこく割り入ってくるでもなく。
 ただ、不可思議な感情を帯びた目で、ジッと類の顔を見上げていた。
 「…………?」
 その視線に類も気がついたのだろう。
 怪訝な顔で、類が自分の腰ぐらいの位置にある杏樹の顔を見返して、首を傾げた。
 「花沢類?」
 「え?」
 「違う?」
 …知り合い?
 しかし、つくしがそう尋ねる前に、不思議そうに類が少年へと返事を返す。
 「ん、そうだけど?」
 類の肯定に、唇を噛んだ杏樹が顔を俯け、だが、すぐに顔を上げた。
 そして、類にではなくつくしへと、引き歪んだ笑みを見せる。
 「……つくしさん、俺、帰るよ」
 「え?」
 「じゃあね」
 「あ、…う、うん、またね?」
 驚いているつくしが呼び止める間もなく、杏樹が手を振り踵を返す。
 去ってゆく少年の後ろ姿を、なんとはなしに、つくしは類と二人で唖然と見送った。
 「……あの子」
 「え?」
 さっきから、つくしは‘え’ばかりだ。
 類も何か感じることがあったのか、杏樹の後ろ姿を、ジッといつまでも見つめ、―――やがて、何かに気がついたようにわずかに目を瞠って、……ポツリと呟いた。
 「……un ange?」




*****




 ―――un ange(アンナンジュ)。
 類の呟きが、妙につくしの耳に残っていた。
 フランス語で‘天使’ange(アンジュ)の女性名詞での言い方で、めったに他人に興味を持つことがない類にしては、らしくないと言えばらしくはないが、単純に少年の名前や容姿から連想して、女の子のように可愛い、という意味合いでの呟きだったのだろう。
 公園でよく出くわす散歩仲間の少年のことは、類にも度々雑談として話していたから。
 けれど、呟きを零した時の類の表情が、なぜか気になってしまっている。
 「………こだわりすぎかな」
 「何がこだわりすぎなんです?」
 すっかり物思いに耽って時間を忘れてしまっていたらしい。
 かけられた声に顔を上げると、いつの間にか待ち合わせ相手がテーブルの脇に立ち、彼女の独り言に首を傾げ彼女を不審げに見下ろしていた。
 「あ…、桜子」
 「すみません、先輩。すっかりお待たせてしてしまって」
 「…あぁ、いや」
 腕時計を確認してみれば、たしかにかなり約束の時間が過ぎてしまっていた。
 だが、それよりも―――、
 …やば、もうこんな時間だったんだ。ずいぶん予定時間過ぎちゃってるけど…大丈夫かな。
 別のことが心配になってしまい、つい吹き抜けになっている2階のカフェから、階下のエントランスホールを見回しかけてしまう。
 しかし、相手はそんなつくしの挙動不振な行動を、特に不審には思わなかったらしい。
 「いつものこととは言え、こうもジャストなタイミングで、首都高の事故にハマってしまうとは思ってなくって…」
 「渋滞してたんだ?」
 「凄かったですよ。もう迂回路まで行く先々で混んじゃって、連絡した時も、今日の約束自体をキャンセルした方がいいか迷ったくらいです」
 「そっかぁ、大変だったねぇ。まあ、連休中だから、なおさらどこもそんな感じなんだろうけどね」
 向かい側に座った桜子が、おしゃれな金鎖のブレスレット型の時計を眺めて溜息をついた。
 「どうします?ビュッフェ・タイムもだいぶ時間が過ぎてますから、今からだとかなり忙しない感じになってしまいますよ?少しここで時間を潰して、普通に席を予約して早めのディナーにしますか?」
 時間帯的には、まだまだランチでもいける時間だ。
 つくし的には予定通りでもまったく問題ないのだが、桜子のようなセレブな女性には、いわゆる残り物的なのがイヤなのだろう。
 「ん~、正直、私はどっちでもかまわないんだけどね。でも、あんたにとっては、今日のランチ・ビュッフェも、敵情視察っていうか仕事の一貫なんでしょ?」
 「……まあ、そうですけど」
 今日のランチ・ビュッフェは、海外の有名パティシエを招いてのデザートがメインの企画だとかいうもので、ブライダルに絡めたエステコースと、ホテル・レストランのグルメコースとのコラボで、顧客獲得を狙っている企業家の桜子に誘われ、つくしもここ5ツ星ホテル併設の三ツ星レストランにやって来ていた。
 豪勢なランチはともかくとして、つくし的には別の事情でも、急な予定変更は避けたい。 
 「せっかくのビュッフェなんだし、行こいこ。絶品デザートもそうだけど、ここのホテルのレストランのお料理も美味しいって評判だから、がっつり食べるつもりで来たんだもの」
 伝票を片手に、食べる気?満々で意気揚々と立ち上がったつくしに、桜子も苦笑する。
 「先輩ったら、よほどお腹を空かせて来てるんですね。またいつだかみたいに、せっかくの食べ放題なんだからとか言って、朝ご飯まで抜いてきたんじゃないでしょうねぇ?」




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