「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑤

愛してる、そばにいて0734

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 司がようやくアメリカに帰国できたのは、戒が発見されて2日後のこと。
 その後もどうしても外せないアポイントやら重要な会議の為に、サンフランスシコ、シアトルと立ち寄らざるを得ず、結局、ニューヨークに戻ることができたのは、さらに1週間も過ぎて後―――実に戒が家で騒ぎを起こして10日以上経ってからのことだった。
 ジーナに会い、SPたちの監視の下、彼女との会談を終えた後の戒は、素直にSPたちに付き従いマンハッタンの屋敷に戻って、とくに何かの反抗をするということもなく、またそれ以前のように一室に閉じこもる生活に戻りもせず、日常生活を淡々と送っていると、司は執事長から報告を受けていた。
 …戒。
 電話に応対した戒の様子は、きわめて落ち着いていて、拒絶するかと思っていた司からの通話にも淡々と応じ、……むしろ近年なかったくらいの従順な受け答えで、戒のまたあらたな変化を司も感じずにはいられなかった。
 しかし、当然というべきか、親子の溝はさらに広がったことはたしかなことで、電波を介した電話でのやりとりの中でさえ、戒は司に対する一片の親子の情愛さえももはや覗かせることなく、あくまでも他人行儀を崩さずただ機械的に応答を返すだけ。
 そうであれば司の方も、これからの戒の進路について、……新年度からイギリスにある全寮制のパブリックスクール(私立校)への編入学を、義務的な態度で申し渡す以外にできることはなかった。
 そして、あれほどNYの屋敷……司の本拠地を離れることを戒は拒絶していたというのに、あっさりと受け入れた心情について、まったく吐露することはなかった。
 「はぁ~、疲れたぁ。……久しぶりに帰ってくると、ホント、ここでさえ、えらく懐かしく感じて、どわってなっちゃうから不思議よねぇ」
 滋がまるで山でも眺望するかのような大げさな仕草で、片手を目の上に翳し、広大な道明寺邸の家屋を仰ぎ見る。
 一瞬、その滋の言葉に、司も見慣れた屋敷を仰ぎ見るようにして視線を流したが、ただそれだけですぐに興味を失い先を歩く。
 「お帰りなさいませ、若旦那様、若奥様」
 「「「「「お帰りなさいませ」」」」」
 いつもながら恒例の使用人たちの花道の中央。
 総執事長の出迎えの言葉に一同が唱和して頭を下げるのに、司はチラリと総執事長にだけ目配せのみで応えたのに対し、滋は愛想のいい笑みで一同に応える。
 「うん、ただいま。みんなもお出迎えご苦労さま」
 司はそんな滋や出迎えの使用人たち、それに屋敷の外では常に間近に付き従わせている護衛のSPたちを後に残し、傍らに総執事長のみを従え、泰然と屋敷の玄関へと足を進めた。
 「……戒はどうしてる?」
 キィ~という音と共に重厚な玄関ドアが観音開きに開かれた先、総執事長が彼の問いに答えるまでもなく、その当の戒が司を待ち構えていた。
 「戒」
 「………………」
 「よう、わざわざ出迎えに来てくれたのか?」
 無表情に父親の顔をジッと見ている戒の屈託を気がつかないフリで、司はあえて何食わなさを装い、いつもどおりに気軽く声をかける。
 そして、腕時計を確認して、
 「……13時か。ちっとランチの時間は過ぎちまったか。移動でなんだかんだ時間食っちまって、昼飯食ってねぇんだわ。お前、メシまだなら俺に付き合わねぇか?」
 いつでも好きな時間帯に好きなものを好きなだけ食べられる環境だけに、実質、司や戒に意見出来る人間がいない道明寺家では、生活習慣はそれぞれ自由勝手気儘で、食事の時間もとくに一貫していなかった。
 もちろん司にしても、自分がそうであるのに、息子にだけ殊更煩く口出しをするはずもない。
 「食っちまってるなら食っちまってるで、茶くらい飲めるだろ?今回はずいぶんヤンチャしたみたいじゃねぇか。どうせなら、その冒険譚でも話せよ?」
 冗談めかして、ニヤリと笑いかける。
 戒の顔は、けっして父親の誘いかけを歓迎している風ではなかったが、それでもいつものようにムクれた態度で無視しようとするのではなく、わずかに視線を落として再び顔をあげると、司の傍らへ足を進め歩み寄って来た。
 …よし。
 内心で拳を握り締め、何食わぬ顔で司は戒へと微笑みかけると、傍らの総執事長へと食事の準備の指示を出す。
 「ダイニングにランチを用意してくれ。軽食でいい」
 「……かしこまりました」
 屋敷に戻ってきた当初はとくに食欲もなかったから、食事をするつもりもなく用意をさせてはいなかったが、戒が付き合ってくれるというのなら話は別だ。
 「若奥様のお食事もダイニングの方でよろしいでしょうか?」
 「……滋?」
 「私室の方で召し上がると伺っていたので、そちらの方へお運びするよう準備させておりますが?」
 自分の部屋付きのメイドと立ち話をしている滋を、総執事長と共に見やって、司は即座に首を横に振り総執事長の提案を却下する。
 「いや、そのまんまにしとけ。本人が私室でいいって言ってんだから、私室に運んでやればいいんじゃねぇの?」
 「え―――ッ!?なになに?司ったら、戒くんとご飯食べるのっ?!ランチはスキップするって聞いたから、一人寂しくランチしようとしてたのに、二人で食べる気なら私も混ぜてよっ!?」
 地獄耳なのか、大声で話していたわけでもないのに、遥か後方にいた滋が、司と総執事長の会話を聞きつけて口を挟んでくる。
 「……若旦那様」
 「いい、持ってくんな。戒、ダイニングじゃなくって、俺の……」
 ゴリ押しにでも押しかけてきそうな滋を忌避して、戒を自室へと誘おうと向き直った司のすぐ真下、なぜか異様に接近して傍らに立ち、自分を睨み上げてくる戒の顔を怪訝に見下ろす。
 「……?戒…………ぐっ!」
 いきなり予備動作もない不意打ちに、司は完全に虚を突かれた。
 司ばかりではない。
 本来彼の護衛であるSPたちでさえ、その意外さで遅れをとってしまっていた。
 脛に突然加えられた革靴での爪先蹴りの衝撃と激痛に、思わず呻き、司が体を折りかけたところへ、戒の両手が司の頭上に伸びて差し迫る。
 「若旦那様っ!」
 「社長っ」
 「司ぁっ!!」
 司が咄嗟に上半身を捻って反らし、襲いかかる戒の手首を掴んで引っ張り寄せる。
 そして、その背を突き飛ばして、顔面への膝蹴りから逃れたのはほとんど本能の成せる技だった。
 あるいは昔とった杵柄、過去の喧嘩三昧だった日々の、習い性のようなものだったかもしれない。
 「くそっ!」
 「……っぶねぇ」
 司に突き飛ばされてたたらを踏んでつんのめったものの、なんとか持ち直した戒が司を振り返る。
 バランスを崩して廊下に座り込んでいた司が、自身の高い鼻梁のあたりを片手で撫で、顔を顰めた。
 「危うく鼻の骨をヤられちまうところだったぜ。……戒、お前、ずいぶん汚ねぇ闘い方しやがるじゃねぇか?」




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