「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑤

愛してる、そばにいて0732

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 「どこら辺で、パパやママと最後にいたか憶えてる?」
 泣きじゃくる幼女をなんとか宥め、小さな手の片方を引いていたつくしがあれこれ話しかけ、彼女から少しでも情報を得ようと先ほどから努力していた。
 「ミホちゃんね、あそこの木のところでりんごあめ食べてたの」
 「うんうん?」
 「お兄ちゃんとパパがヨーヨー釣りに行っちゃったから、ママとリョウヘーと待ってたのにぃ、~~~ぅぅっ」
 「あ!ミホちゃん、ほらっ、ヨーヨーだ!あそこの辺にいる男の人がミホちゃんのパパだったりしない?」
 話しているうちに再びベソをかき出したので、つくしが注意を反らす。
 最初、‘ミホちゃん’は自分が迷子になっていることに気がついていなかったらしい。
 根気良く話を聞き出すうちに、ミホちゃんはどうやら御年3才、かなりおしゃべりも上手だが、さすがに自分の苗字や住所などはわかっていなかった。
 「……どうしよ、類?」
 「ん~、さすがにこれだけの人ごみの中で、はぐれた相手を見つけ出すのは大人でも難しそうかな。……たしか、入口のあたりに受付あったよね?」 
 「あ、そっか!」
 それほど大規模な祭りではないので、迷子所までは設置されてはいないだろうが、それでも受付に行って預けておけば、そのうち親の方でも気がついて迎えに来てくれる可能性が高い。
 しかし、二人の会話に、どうやら自分がどこかに一人置いていかれてしまうとミホちゃんも察したらしい。
 やっと見つけた頼れる大人と離れる心細さか、ミホちゃんは繋がれていない方の手を拳の形に握り締め、その手を目元にあて、再びくすんくすんと啜り泣き出してしまった。
 「ありゃ、どうしたの?ミホちゃん。パパとママならすぐに見つかるから泣かないで?」
 「ママに会いたい。パパやおにいちゃんやリョウヘーにあいたいよぉ。え~ん」
 「……しょうがないね」
 人ごみからつくしや幼女を守って、先導していた類が仕方なさそうに息を吐き出し、ミホちゃんの足元へと腰を落とす。
 「類?」
 「おいで?」
 類はキョトンと自分を怪訝に見上げるミホちゃんへと小さく微笑みかけ、彼女の小さな体を両手で掴んで肩の上へと跨らせてしまう。
 「え?ちょっと」
 「……これなら、遠くまで見えるだろ?」
 背の高い類の肩車に、最初は恐怖を感じたのか、慌てて彼の薄茶色の頭にしがみついていたミホちゃんも、その言葉に恐る恐る顔をあげて周囲を見回した。
 「うわあ、おっきぃ!パパのたかいたかいより、すごい」
 「ちょっ、ダメだよ、ミホちゃん!手を離したら危ないからっ!」
 慌てて類の肩の上の幼女の体を、つくしが掴んで支える。
 「大丈夫だよ。足しっかり掴んでるし」
 「で、でもぉ」 
 「……怖い?」
 小さな手を類の頭に回して、キョロキョロしている幼女へと類が尋ねかける。
 「ううん、ヘイキだよぉ!」
 「だから!いくらなんでも手を離したらダメだって!」
 キラキラした目で燥いでいる幼女の一挙一動に、つくしの方がハラハラさせられてしまう。
 「まあ、こっちからもよく見えるだろうけど、親の方からもよく見えるだろうからさ」
 「…そうだね」
 長身の類にさらに肩車をされているのだ。
 ミホちゃんは、人ごみの上をはるかに突き抜け、状況も忘れて周囲の人々を見下ろし、すっかりベソをかくのも忘れてご満悦のようだ。
 「とりあえず、俺たちまでハグれないようにしよう」
 「うん」
 それでも自分たちの方はまだ携帯電話もあるのだから、万が一ハグれてもなんとかなるだろうが、当のミホちゃんの方は簡単にいなくなってしまいそうだったから、その点、類に肩車されてしまっている状態なら、どこにも行くことができずかえっていいかもしれないとつくしも思い直す。
 「あ!あっち、あっち!」
 「ママいたのっ?」
 「ううん」
 ガクッ。
 勢い込むつくしとは真逆に、ミホちゃんの方はけっこう平常運転だ。
 「あそこ、さっき、りんごあめかったとこ!」
 「どうする?」
 「親が戻ってきてる可能性はあるけど、受付へ直接行った方がいいだろうね」
 「そうだよね」
 意見の一致に、とりあえずは…と受付へと向かうことにする。
 ミホちゃんの両親をつくしは知らないが、それでも一応は周囲を見回し、つくしもミホちゃんと一緒に彼女のママを探しながら歩く。
 ふと、空けた人垣の間に、見覚えのある小柄な背中を見かけた気がして、つくしは思わず立ち止まった。
 「……つくし?」
 横を歩いていた類がすぐに気がつき、彼も立ち止まってつくしの視線の先へと目を向ける。
 「どうしたの?」
 だが、つくしの視線の先で振り向いた少年の容貌は、予想していた少年のものとはまるで違っていた。
 内心の小さく落胆は表に出さずに首を横に振る。
 「ううん、ごめん、なんでもない」
 「……そうなの?」
 「なんか知り合いに似た人がいたんだけど…でも、勘違いだったみたい。……行こっか」




*****




 「わあああああああん、ママァ、ママァ、ままあぁっ!!」
 迷子になっていた時よりも、なぜかさらに大声で泣きじゃくる我が子を抱きしめ、母親だという女性が類とつくしへと会釈するのに、つくしも頭を下げた。
 案内所へと幼女を連れていったのは、結果的に正解で、既に母親だという女性が焦った顔で待ち構えていた。
 「ほらっ、ミホ!お世話になったんだから、ちゃんとお兄さんやお姉さんに、ありがとうしなきゃダメでしょ?」
 しかし、生憎母親の気遣いは、ほとんど半狂乱状態の娘の耳に届いていない。
 妹の代わりにか、幼女より2、3才年上らしい、たぶんまだ小学生にはなってないだろう少年が、母親の意を受け彼らに礼を言う。
 「ありがとう」
 「ん」
 「どういたしまして」
 キチンと90度の最敬礼で頭を下げる少年の礼儀正しさに微笑ましく、自然、笑みが浮かんだ。
 つくしだけではなく、類の子供たちを見る顔も柔和で優しい。
 思えば、つくしの甥の春樹に対しても、戒や咲のことも忌避することなく、彼は気長に遊び相手になってやっていた。
 …意外っていうか。
 類は基本無愛想で人見知りな男だが、子供や動物の類いは嫌いではないらしく、けっして愛想が良いわけでもないのに、不思議とそのとうの子供や動物にも慕われることが多かった。
 …きっとわかるんだ。
 類は優しい。
 一見冷たいその横顔に隠された温かさ。
 こういう時、あらためて感じさせられる。
 ミホちゃんのママを捜す途中、買って手に持っていたべっ甲飴の袋を、類が唐突に少年へと差し出した。
 「これ、あげる。妹が泣きやんだら、後で妹や弟とわけて食べな?」
 類の言葉にキョトンと顔をあげた少年の顔が、自分の手に置かれた菓子の袋に満面の笑みを浮かべ、大きく頷いた。
 「うん!」




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