「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑤

愛してる、そばにいて0724

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 『潮時かもしれませんね』
 かつてあきらに頼まれた意図とは真逆に、桜子に後ろ向きな決断へと向かわせてしまった。
 つくしには、やりきれない思いがある。
 …ごめん、美作さん。
 家と家という複雑な背景を抱えてはいるものの、結局恋愛は、あくまでも男と女、当事者二人だけの問題で、他人にしてやれることなどほとんどないのものなのだろう。
 それこそ人のことより自分のこと。
 あるかもわからない類の本心など探ることをやめて、静のことなど放っておけというありがたくも痛い忠告を頂戴して、桜子とのヘビーな女子会は終了した。
 …別に類の本心を探るとか、全然そんなつもりじゃなかったんだけど。
 じゃあ、なんだと誰かに言われても困るが、ただ…いてもたってもいられなかった。
 いられずに、静に会いに行ってしまったとしかいいようがない。
 それでも、二度目の再会を約束しているというのに、再度静に会いにいくことを躊躇している。
 おそらく桜子の言うとおり、このままただの知人として…もしかしたら、いつか類に伴って出席した社交界のどこかの会場で、何食わぬ顔で再会の挨拶を交わした方がいいのかもしれない。
 「ふおおお、綺麗~」
 4月も間近。
 ホンの数日前までは開花の兆しもなかった公園の桜の花がちらほらと咲き始め、いくつかの木は満開の花を咲かせて、花見客や通行人の目を楽しませていた。
 一ヶ月ほど前に、花沢邸で観賞した早咲きの寒桜とはまた違う美しさ。
 思わずホウッと息を吐いて、見惚れる。
 …桜子と会うの、今日にすればよかったな。
 あるいは春の陽気の中、散歩に誘ってみても良かったと思う。
 当の桜子本人の見解は別として。
 柔らかな日差しと、吹き抜ける爽やかな風が気持ちがいい。
 こんな陽気のいい日こそ、類と一緒に散歩できたら最高なのだが、さすがに土日祝日ごとに休みとはいかないのが類の立場だった。
 半分眠った状態の類をいつも通り会社へと送り出して、一通りマンションの掃除や洗濯を終わらせ、散歩がてらスーパーまで歩いて買い物にでも行くかと通りかかった公園の並木道。
 「車で出るか迷ったけど、歩きで良かったわぁ」
 …来週また晴れたら、類も引っ張ってこよ。
 さすがに明日はともかくとして、二週連続で休日出勤に励むほどには類は勤勉な男ではなかった。
 第一秘書の遠藤が泣いて頼んだところで、絶対に休みをとることは間違いないはずだ。
 …そんな予想できちゃうとかいいわけ?
 なんだか頭痛を覚えつつも、偶然出くわした桜の美しさに酔いしれ、じっくりと堪能する。
 「SA・KU…RA」
 妙な抑揚と発音での『桜』発言に、つくしは怪訝に横へと視線を流した。
 何人かの散歩客が、立ち止まっては桜を眺め、その中の一人…つくしから数メートルほど離れたところで立っている少年に気が付く。
 スラリとした肢体を、ラフな細身のジーンズとグレイのパーカーに包んだシンプルなスタイルがよく似合っている。
 顔は深く被ったフードに隠れているが、妙に雰囲気のある少年で、彼がそこにいるだけで誰もが不可思議な磁力を感じずにはいられない特別な存在。
 つくし同様、やはり何人かの通行人がチラチラと少年を見ては、コソコソと何事か話しているのが見える。
 …あれ?
 既視感とでもいうべきか。
 桜の精の如き少年の浮世離れした佇まいと雰囲気が、つくしの琴線のどこかに触れる。
 彼女の視線を感じたのだろうか。
 桜を一心不乱に見上げていた少年が、ふっとこちらへと視線を流す。
 …げっ。
 他人をジロジロと不躾に見てしまっていた自覚が彼女にもある。 
 目が合ってしまう前にと、慌てて何食わなさを装い顔を反らそうとして一瞬、目の端に垣間見た少年の美貌に、ハッと慌てて振り返った。
 「あ…っ」
 「……?」
 少年の方は、つくしとは違って彼女の顔に見覚えがなかったらしい。
 思わず人差し指で思いっきり指差してしまったつくしのポカンとした顔を見て、少年は首を傾げて怪訝な顔をしていた。
 「たしか、杏樹…くん?」
 「は?」
 「ええっとぉ~」
 つい声をかけてしまったものの、別に知り合いというほどのこともない。
 …ひ、人違いとか言って誤魔化すのってあり?
 いや、思いっきり名前を呼んでおいて人違いも何もないものだが、今のところ、相手は自分を思い出していないらしいことに勇気を得て、誤魔化そうと口を開きかける。
 が、
 「あ!…おばさん、たしかよもぎとか言う?!」
 「………よもぎじゃないわよ」
 ‘おばさん’呼ばわりがなにげにショックだった。




*****




 道明寺邸を脱出し、一夜明けたさらに次の日の夜間の時間帯。
 どっぷりと暮れた夜の闇をバスの車窓越し、戒は流れて行く景色をぼんやりと眺めていた。
 ジーナがどこへ転居しているのかは、すでにわかっていた。
 学友という名の手下たちの中には、戒ほどではないが、大きな会社を経営する企業の御曹司や富豪の息子たちもいて、我が子の意のまま請われるまま、ワガママを受け入れる親もいたから、むしろ戒よりも多くの権限を手にしている少年たちもいる。
 その少年たちを通して雇った調査員たちがもたらしたいくつもの情報。
 ―――フィラデルフィア。
 NYの隣に位置するペンシルバニア州の南東部に位置するこの地は、北米有数の世界都市であり、人口も全米で第5位の大都市だ。
 名門のペンシルバニア大学や、ドレクセル大学、テンプル大学などを抱える学園都市でもある。
 ニューヨークからアムトラックと呼ばれる列車で約1時間半の距離、バスでは2~3時間ほどのところにあった。
 旅費を抑える必要など戒にはないのだから、移動にはアムトラックかタクシーを使う方が断然早く楽だっただろうが、彼はあえて夜間のバスで、直接目的地に向かうのではなく、一晩をNY市内で潜伏して大回りするコースを選んでいた。
 …本当は意味なんてないことなのかもしれないけど。
 もちろん、父からの追っ手を恐れてのこと。
 あるいはジーナの行方を突き止めての家出だとはバレてはいない可能性もあったが、戒はその可能性をあまり信じていなかった。
 父は道明寺司だ。
 たとえ戒を12才の子供だと侮っていたにせよ、してやられてそれでもなお、彼を侮り続けていつまでも右往左往するほど愚かな男のはずがなかったから。
 どれだけ父を恨み憎もうと、戒はけっして父を侮ってはいなかった。
 しかし、同時に、父の追っ手はない気もしていた。
 なぜなら…、
 …どちらにせよ、わざわざ俺を追いかけて来なくても目的地は知られているんだ。
 現地にSPたちを送り込み、そこで待ち伏せさせればそれで事足りることだ。
 それでも、たとえ父の手の者たちにすぐに捕らえられ、ニューヨークへと強制送還されて、今度こそ海外の寄宿舎へ送られることになるのだとしても、戒はもう一度だけでもジーナに会いたかった。




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