「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑤

愛してる、そばにいて0721

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 「ま、先輩はご自分と花沢さんのことだけを考えて、どっぷり今の幸せを強固にする方向だけを考えられた方がいいですよ。昔の女なんて、どちらにとっても気にしていいことなんて一つもありませんから」
 「……………」
 桜子の言いたいことはつくしも十分にわかっていた。
 だからこそ、静に会ったことを類にはまだ言えていないのだし、……類の父から言われたことも話せていないのだ。
 …秘密にしてるつもりじゃないんだけど。
 一つ、二つと、口に出すことを躊躇しているうちに、類との間に少しづつ、言えないことが増えて行ってしまっている気がする。
 おそらく口に出してしまっても、類ならば「ふぅん」と苦笑するだけで、黙っていたつくしを咎めるとか、それで彼女に愛想をつかせるとかそんなことになるはずがないとわかっているのに、なぜか喉が詰まったかのように静の名前を出せない自分がいた。
 「そんなに心配なら、一刻も早く花沢さんと結婚してしまえばいいのに」
 「別に何も心配なんかしてないって」
 「そうですか?」
 「そうよ」
 疑わしげに揶揄ってくる桜子をフンといなして、これもちょうどいい機会だと話を切り返す。
 「人のことより、自分のことでしょ?」
 「……………」
 片眉だけをあげて、なにをいわんやといった顔をしている桜子の余裕の顔に向かって、以前から疑問に思っていて…けれど、遠慮から聞かずにいたことを、つくしも思い切って聞いてしまうことにする。
 聞かないことが友情だと思っていたが、それならばそれで、桜子もつくしに踏み込まないというのならお互い様だが、たとえつくしが自分から話さなくても、桜子の方からなにくれとなく聞き出してくるのが常なのだから、それこそつくしも言いたいことは言ってもいいはずだし、聞くこともできるはずだ。
 ―――人は基本、自分がされたくないことはしないものだ。
 そして、大概において自分が為すことと同じことを、他人にも望んでいることも少なくない。
 だとすれば、いいかげん桜子も自身だけでは向き合えていないようなら、せめて他人に話すことで楽になってもいいのではないか?
 たとえその相手がつくしではないにしろ、彼女が尋ねることがきっかけで、桜子の中にもあらたな変化があればいいと思う。
 …どうしてもあんたが話したくないというのなら、それ以上は聞かない。でも。
 水を向けてスルーされるのなら、それはそれでもいい。
 けれど、せめて話すきっかけくらいは与えてあげたかった。
 「結婚、どうするつもりなの?」
 「珍しいですね。先輩がそんなことをズバリと私に聞いてくるなんて」
 「そう?」
 「もしかして、美作さんからなにか、頼まれたりなんかしたんですか?」
 さすがに鋭い。
 見透かされている。
 実際、桜子が穿ってくるとおり、あきらから桜子の真意を聞いて欲しい、彼女に言えない悩みがあるのなら自分にはそれを受け止める心づもりがあるということを、つくしの口から伝えて欲しいと頼まれていた。
 …もう何ヶ月も前のことになっちゃったけど。
 「以前にも尋ねたよね?美作さんとの間になにか悩みがあるんじゃないかって。あんたはその時は、適当にお茶を濁して話してくれなかったけど、それでもいずれは話したいと言ってくれた」
 「……ええ」
 とはいえ、
 「もちろん、嫌なら、今もしつこく聞き出すつもりはないよ。けど、何も聞かないうちに遠慮ばかりするつもりもないの。だって、私はあんたの友達のつもりだから、なにかを悩んでいるのなら打ち明けて欲しいし、たとえ解決できないにしても一緒に悩んであげたいと思ってる」
 心のうちを開いて見せられるのなら簡単なことだが、そうではないから人は言葉を駆使して、せめてもの真心を他人に伝えるのだ。
 そんなつくしの気持ちは、桜子の心にも響くところがあったのか、曖昧に笑んだ彼女の顔は、いつか見たようにどこか頼りなげで迷子の子供のように弱々しかった。
 「美作さんと、別れるつもりでいるの?」
 「………それは」
 逡巡している桜子の表情を見越して、つくしが言葉尻を変え言い直す。
 「ごめん、言い方変えるね。…桜子は美作さんと別れたいの?」
 間髪入れずに桜子の首が横に振られ、つくしもホッと自然に顔が綻ぶ。
 「美作さんのこと、好きなんだよね?」
 「好きです。好きだし…愛してる。できることなら、あの方と結婚して妻と呼ばれる人になりたい」
 天邪鬼の桜子の素直な告白は、ダイレクトにつくしにも届く真情に溢れていた。
 「それなら、大丈夫だね。あんたは以前、あんたが起業してる事業について、美作家的によろしくないようなこと言ってたけど、美作さんはそのことについてもサポー…」 
 「でも、怖くなったんです」
 「……………」
 桜子は自分の顔の前に広げた、自身の両手をジッと見つめた。
 つくしの手などよりも、ずっと手入れの行き届いた綺麗な手や指。
 それこそ白魚の手指と呼ばれるのに相応しく美しい。
 桜子がチラリとつくしへと視線を流し、どこか泣きそうな震える声音で聞いてくる。
 「私、綺麗ですか?」
 桜子は手指だけではなく、その小悪魔のような蠱惑的な美貌から足の爪の先まで、全身が美しい女だった。
 どんな女たちも憧れずにはいられない絶世の美貌。
 だから、感じたそのままにつくしは同意する。
 「うん、凄く綺麗。美人だよ」
 しかし、桜子はつくしの答えに喜ぶどころか、声だけではなく顔を泣きそうに歪め、ギュッと拳のカタチに握りしめたその美しい手に美貌を埋め、ーーーポツリと呟いた。
 「全部嘘っぱち。あきらさんが好きになってくださたこの顔もこの手も、この体も、全部作り物。何一つ自分のものなんか欠片もない紛い物なんです。……それなのに、それなのに、私はっ」




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