「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑤

愛してる、そばにいて0720

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 静のプライバシーや花沢家の事情もあり、いくら友人とはいえ、全部が全部、桜子に話すというわけにはいかなかったけれど、ここ数日の鬱屈を彼女に話し、つくしもだいぶ気持ちが晴れていた。
 …やっぱり気にしていないようで、気になってたのかな。
 極楽極楽…と、なぜかまたも受けることになってしまった、桜子プロジュースのエステサロンの新作エステの施術を終え、桜子と二人、バスローブ姿で豪奢なスウィートルームもかくやとばかりの個室で紅茶を片手に寛いでいる。
 「………実は花沢さんと藤堂さんの不倫の話は、一時期ヨーロッパ社交界の一部でも公然と囁かれていた話ではありました」
 「えっ!?」
 「まあ、本当に根も葉もないという範囲でのことですけどね」
 「そう、なんだ」
 その社交界にいたこともあるつくしにとって、ホンの一部とはいえ、そうした噂がどれほどその世界に済む人間にとって致命的で、時には多くの人間たちの人生や運命をも変えてしまいかねない危険なものであるかよくわかっていた。
 ―――単なる噂が、一つの家門や会社を追い詰めて、破滅させてしまうこともありえるのだ。
 だからこそ類の父が、自身の息子と静との関係に神経を尖らせ、道明寺楓や道明寺家がつくしを排除しようとした。
 「根拠もない噂を公然と囁くには、花沢物産や藤堂商事は大きすぎます。また、藤堂さんの婚家が、そうした誹謗中傷をするには、マズすぎる家柄でしたからねぇ。それに、当の噂の片割れである花沢さんが、ほとんどヨーロッパにはいなかったこともあって、それほど大々的には広がらなかったんでしょうね」
 「………そうなんだ」
 「もしかしたら、花沢さんが先進国に近寄らず、ほとんど発展途上国…藤堂さんとの関わりがある地域での活動を控えていたのは、そうした事情があるのかもしれませんね」
 おそらく桜子の推測どおりなのだろう。
 類自身は人目や人の噂など気にする男ではないが、気遣いがないわけではない。
 自分のことはともかくとして、既婚者の静の立場を考えれば、そうした噂が公然と囁かれることが彼女にとってどれほど危険なことか、類も考慮しなかったはずがなかった。
 類は優しい男だ。
 愛した女にはこの上なく優しく献身的で、自身の欲望や幸福よりも、愛する女の幸せを選ぶタイプの男だった。
 「まさか先輩、藤堂さんに会ったのって、いまさら過去のアレコレを持ち出して、勝手に引け目を感じて身を引こうとかそういうことじゃないでしょうね?」
 「えっ!?」
 それこそ思いもよらぬことだと、ギョッとする。
 「どうやらその顔をみると、そういうつもりなわけではないようですね」
 「そ、それはそうだよっ」
 いくらなんでも極端に飛躍しすぎだ。
 当時がどうであれ、少なくても類は過去のことだと静とのことを言っているのだし、静からは類への現在の彼女の気持ちを聞いてはいないのだから。
 …いきなり私が、今は類のことをどう思ってますか、なんて静さんに聞くのも変な話だし。
 「そんなに先輩って、藤堂さんと親しかったんですか?学生当時」
 「うーん。親しいっていうか」
 ほとんど顔見知り程度にすぎず、下手をすれば憶えていられなくてもおかしくはないくらいに、おそらく当時の静にとって、つくしはどうでもいい人間の一人に過ぎなかったはずだ。
 …それを思えば、静さんがいまだに私のことを、憶えていてくれてたってことだけでも奇跡?!
 「……なにげに先輩って、自己評価が凄く低いんですよね」
 「なによ?」
 うんざりしたような顔で紅茶を啜って、ため息をついている桜子の態度にムクれて、つくしがムッと唇を尖らせる。
 そうしていると、とても30才も半ばを過ぎた女のやることとはとても思えないが、不思議につくしにはそうしたことがよく似合う。
 子供っぽいというわけではないはずだが、どこまでもナチュラルなのだ。
 どんな人間が相手でも、シチュエーションでも、自分を飾らず、他人に阿るということがない。
 「まあ、いいですけど。どちらにせよ、なにが理由であれ、花沢家は先輩を受け入れることを忌避するどころか、両手を挙げて歓迎してくれているわけですし」
 「…両手を挙げてってことはないと思うけどね」
 どちらがよりマズイかを両天秤に賭けて…というやつで、それこそある意味、花沢家にとっても究極の選択だったに違いない。
 …不倫より、ド庶民のバツ2女の方がマシだって言うんだから。
 「今の段階で、私がどうこういうべきことは何もありませんが…」
 口調の変わった桜子の言葉につくしが顔をあげる。
 「先輩はもう、藤堂さんのことはあまり気にされない方がいいですよ」
 「気にって、ただ知人としてお見舞いに行っただけだよ」
 自分でも信じていないことを桜子が信じてくれるはずもなく、けれどそのことには特に反論せずに桜子が言葉を続けた。
 「花沢家が…というか、どのお宅でも同じことだとは思いますけど…」
 「……………」
 「藤堂さんが離婚されないかぎり、花沢さんとの未来はありえないことです。そして、もし、藤堂さんが離婚されるとして、その理由が花沢さん、もしくはご主人である男性以外の方が原因であるというのなら、今の状況では、藤堂さんはおそらくけっして離婚することも…離婚を望むことすらできないだろうということです」
 「離婚できない…はともかくとして、望むこともできないってどうして?」
 つくしにしてみても、不倫が原因であるのなら、たしかにその原因を作った側が離婚を望んでもそう簡単に叶うことではないのは理解できる。
 けれど、静が望まないというのは?
 …やっぱり、ご主人を愛しているから?
 かつて静が類と不倫関係に陥っていながら、彼を捨て夫のもとへと戻ったようにか?
 あるいは、類の父が言っていたように、静や彼女の夫、その実家の宗教観ゆえに、ということなのか。
 …桜子も静さんがカトリックだってこと、知ってるのかな?
 ありえない話ではない。
 社交界は狭い世界だ。
 旧華族の出身の桜子と、大企業令嬢の静。
 互いに直接には面識や交遊はなくても、あるいは名前や互いの身上くらいは見聞きして承知していても不思議ではなかった。
 「もちろん、すべてを捨てる。家や弁護士としてのキャリア、……我が子さえも奪われても良いというのなら、できないことは何もない話かもしれませんけれどね」
 キッパリと言い切った桜子の顔は複雑なものを含み、彼女の小さな笑みにはどこか苦いものが滲んでいた。




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