「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花⑤

愛してる、そばにいて0717

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 西田を通じて司に連絡をとってきたジーナは、司本人が再び彼女の前に現れたことにずいぶん驚いていた。
 実際、司の方でも、西田の名刺を彼女に手渡した時は、ジーナの言うとおり、もう自分が直接彼女に関わり合いになるつもりはなかったのだ。
 戒は当時10才―――今は12才だが―――、まだ分別のつかない年齢だというのなら、分別がつく年頃までしばらく海外の寄宿舎なり、女から遠ざけ、別の世界に目を向けさせる。
 それがもっとも相応しい処置だと、各国著名のパブリックスクールの資料を集めさせもした。
 だが―――、気が変わった。
 賭けてみたかったのかもしれない。
 金になど阿るつもりはない。
 金で人の心は買えないのだと言っていた少女に。
 何を賭けるつもりだったのか、それを司自身でもしかとは自覚していなかったけれど。
 …ふっ、俺にもまだ青いところがあったってことか。
 しかし、そんな彼女がその言を翻し、変節した。
 しょせん、泥は泥。
 泥に咲く蓮など、そうそう現実の世界にはあるはずもない。
 『………本当に戒のことが大事なのね。なのに、あの子はどうして』
 呟く言葉尻は涙含み、ままならぬ自身の人生を恨んでか、悲哀と苦悩、そして、怨嗟を帯びていた。
 『金が欲しいらしいな』
 だが、そんな彼女の屈託に深く関わるつもりはない司が本題を問う。
 わずかに唇を噛み締め、逡巡したように俯いていたジーナが、小さく息を吐き出し思い切ったように顔をあげた。
 『そうよ、お金が欲しいの。戒と別れれば、10万$の小切手をくれるとあんたは言ったわよね?』
 可愛らしい顔に卑しい笑みを浮かべ、金でカラダは売っても心は売らないとかつて啖呵を切った心意気さえも翻し、そうしてその場にいる少女は、司の良く知る彼や戒の周囲におもねりたかる有象無象の人間達そのものだった。
 けれど、わずかに青ざめた顔色や、かすかに震える唇が彼女の心の奥底の心情を覗かせていたか。
 『10万$?』
 嘲りを隠さず無感動に聞き返す司に、ジーナも悪びれることなく平然と頷き返す。
 『ええ、そうよ』
 『何に使うつもりだ?お前はカラダは売っても、心は売らないんじゃなかったのか?』
 だが、司の問いかけにはそっぽを向いて、反抗的な態度でジーナは投げやりに先ほどの要求を繰り返すだけだった。
 『…気が変わったのよ。あたしがお金をなんに使おうと、あんたには関係にない話でしょ。くれるものをくれれば、それでいい話なんだから。お金をちょうだい。それであんたもあたしもハッピーになれる。簡単な話でしょ?』
 ある意味、たしかに彼女の言うとおり、簡単な話ではある。
 しかし、事情も知らされることなく、金を引き出される無限の財布になってやるつもりはない。
 もちろん、司も彼女の事情など、すでに調べてある程度予想付けてはいたが。
 『はっ、お前ごときが、10万$?たかが、戒に会わない、それだけのことでか?大した買いかぶりようだな。お前に会わせないようにするだけなら、戒の方を遠ざければいい。外国にでもやれば済むことだろうよ』
 『っ!』
 『俺も売春婦風情と息子が懇ろになってるなんて思いもしなかったからな。どうやら頭が沸騰しちまってたようだ』
 司の嘲る言葉での揺さぶりは、賢明に大人ぶって彼と交渉しようとしていた少女の頭を、瞬時に沸騰させた。
 『あんたが!あんたが言ったのよっ!!戒ともう会わないなら、いくらでもお金をくれるって!!』
 『……………』
 『秘書なんかに任せずに、あんたが直接ここに現れたことが、その答えなんでしょっ!?お願いよ、お金をちょうだいっ!そうしたら、あんたの望みどおり、もう二度とあたしはあんたたち親子の前に現れたりしないからっ』
 『金を要求するようなヤツを、信用なんかできるか。金がなくなったら、またゾロ現れて、さらなる要求をしてくるんだろうが?』
 必死のジーナに対して、司はあくまでも冷静だった。
 交渉は冷静さを失ったほうが負けだ。
 そして、より切羽詰っている方が、最初から心理的にもすでに劣勢なのだ。
 『じゃあ…どうしたら、どうしたらいいの?』
 呆然とするジーナに、司が畳み掛ける。
 『全部話せ。自分の持ってるカードも、ド貧乏のくせに金なんかいらねぇと啖呵切ったお前が、急に金を要求しだした事情とやらも、全部な』
 司はけっして怒鳴りつけたわけではなかった。
 けれど、司の威迫が、すべてを見透かすその鋭い眼差しが、ジーナを萎縮させ思考を空転させていた。
 いくら世慣れていても、しょせん彼女はまだ17歳の小娘に過ぎない。
 底の浅い交渉術はあっさりと覆され、司によって屈服させられてしまっていた。
 『あいつが……パパが、病気なの』
 『お前は酒乱の父親に反発して、家を出たんじゃなかったのか?』
 自分の家庭の事情など話していないはずなのに、ズバリと言い当てられたジーナがギョッと司を見返す。
 ジーナの目尻にはわずかに涙が浮かんでいた。
 『一つ言っておくが、戒から聞いたんじゃねぇぞ?』
 『…そうね。あたしのことも、調べたんですものね』
 元々からして、司が彼女の前に現れたのも、彼女の身辺を調査してのことだったのだと思い当たったのだろう。
 ぞんがいあっさりと納得して、ジーナは目尻の涙を何気なさを装って拭った。
 『あんなヤツが病気だろうが、病気で死のうが、あたしには全然関係ないわ』
 『……じゃあ、なんでだ?』
 『でも、あんなヤツでもウチでは大黒柱だった。ウチには、あたしの下にまだ5人も弟妹がいて、一番下の弟はまだ8才なの。その弟が、……お腹が痛いって病院に行ったら盲腸炎だって!とりあえず薬でチラしてしばらくは大丈夫だったけど、再発して、今度は手術しなければダメなのにっ、保証金が支払えないからって治療を拒否されたのよっ!?手術さえすれば助かるのに、このままじゃ、弟は死ぬしかないっ!!お願いよ、お金をちょうだいっ、なんでもする。もう二度とお金の無心もしたりいない。どうか、お願いします』




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NoTitle

いつも素敵なお話、有難うございます。
パスワード解禁されてから、夢中になって拝読しました。
でもやっぱり、ジーナは嫌い・・・
早くこの展開終わってほしいと、思ってしまいます。
すみませんm(__)m

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