「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花④

愛してる、そばにいて0711

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 「し…びょう?」
 あまりの衝撃な言葉に、つくしは一瞬、類の父の言っていることの意味が理解できなかった。
 …あの静さんが?
 そう思う一方で、病院で見た静の病み疲れやせ衰えた、彼女の玲瓏とした横顔がつくしの脳裏に思い浮かぶ。
 「あの女は心臓に欠陥を抱えているのだ」
 「心臓?」
 「そうだ」
 …やっぱり。
 類の父は静の病状をかなりのところまで把握していた。
 現在の病状も、それ以前の病歴についても、おそらく今日昨日、静のことを調べ出したのではなく、かなり以前から彼女のことを追っていたのだろう。
 あるいは静と類の不倫を知った時からーーー二人が重大なスキャンダルを引き起こすことを危惧して。
 …もしかしたら類が花沢の主幹経済圏を離れていたのも。
 彼自身の希望だけではなく、彼の父親の思惑もあったのかもしれない。
 「……心臓肥大症ですか?」
 「元々婦人系の病を抱えていたらしいが、その合併症として発症したようだ」
 心臓肥大症…さまざまな病気が原因で、心臓の血流量が増加し、それに伴い心臓自体も大きくなる病気で、運動時の息切れ、全身の倦怠感、むくみ、めまい、呼吸困難、不整脈などを引き起こし、場合によっては心不全を起こし突然死することもあるという。
 静の場合は、婦人系の病…子宮筋腫から貧血を併発し、心肥大にまで至ったケースで、そこには長年の激務による過労やストレスも原因の一つとしてあったに違いない。
 家庭的な悩みも抱えていたというから、そのことも。
 岡山の病院でつくしが静に出くわしたのも、ある意味必然というものだったのか。
 つくしが勤めていた病院は、血液内科の他、産婦人科でも地域一体にその名を知られた名医が勤務していて、東京から著名な有名人が訪れることもあった。
 「じゃあ、今回の入院は…?」
 「仕事中、心筋梗塞を起こしたそうだ。幸い手術をするほどの重症ではなかったようだが、長く相当無理を続けていたのだろう。病気を発症してからも、あの女は弁護士を続けていたし、弁護士の仕事は養生の片手間などでできるものではない」
 「……そうですね」 
 門外漢のつくしにも容易に察せられる。
 「だが、さすがに今回の発作を起こしての入院では、これ以上の無理は死を選ぶようなものだとドクターストップがかかったようだ」
 静もそう言っていた。
 しばらく仕事に復帰することは難しいと。
 「とは言え、今日明日死ぬようなものではないし、養生に努めれば十分寿命を全うすることもできるだろう」
 「ええ」
 しかし、一度肥大してしまった心臓はけっして元には戻らない。
 無理を続け治療を怠れば、最悪死に至るケースも少なくはない病だ。
 そして、実際、静は心筋梗塞を起こしている。
 驚きに半ば言葉を失っているつくしの様子に、類の父が首を傾げた。
 「あの女に会った時に、なんの病かと聞いていなかったのかね?」
 「そこまで親しくお付き合いしていただいていたわけではありませんし、そんなごくプライベートなことを、私が伺って良いことだとは思えませんでしたから」
 「なるほど」
 つくしの返答をどう思ったのか、しかし類の父は、そのことに関して何を返すでもなく、二人の間に沈黙が落ちた。
 「…どうしてそんな話を、類さんではなく、私になさるのですか?」
 「類に話すかね?」
 逆に問い返される。
 「いや、質問を変えよう。あなたは、あの女に会ったことを、どうして類に話さなかったのかね?」
 「…それは」
 それは、なんだというのだろう。
 言葉に迷い、口を開きかけては、けれど上手い言葉が見つからずにまた言葉を呑み込んで、結局、つくしは何も言うことができないでいた。
 自分の中でさえ、明確なカタチになっていなかったのだ。
 「私は、アレの…類のあの女への執着を知っている」
 「………っ」
 「あなたも知っているのではないか?高校時代のあれらを知っていたというのなら」
 ―――知っていた。
 そして、類のその想いは何年経とうとも色褪せることなく、時を得て再会した時に静が既婚者であってさえ、彼は彼女に惹かれる気持ちを抑えることができずに、不倫という道へと踏み出してしまったのだ。
 苦しんで苦しんで、それでも一度は立ち直りかけていたというのに。
 さらなる深みへと沈むことも厭うことなく、類は静に愛を乞うて恋の煉獄へと自ら足を踏み出し、……結果、再び破れた。
 …そうだ。
 類が選んだのではなかった。
 静との別離を。
 静が類を捨て去ったのだ。
 「どうあってもスキャンダルに巻き込ませるわけにはいかない。現在、あの女が日本に帰っているのは、一応協議別居の上でのようだが、それでもあの女が離婚を強固に望むようになれば、類が巻き込まれることは必定だ。そして、当然、花沢も」
 「…………」
 類は芸能人ではない。
 けれど、学生時代‘F4’と、仲間たちと並び称され、経済界人ではなくとも知る人ぞ知る人物でもある。
 しかし、それにしても――?
 …どうして、そこまで神経質に心配するの?
 たしかに過去、類の静への執着は、親の目から見ても尋常なものではなかったのかもしれない。
 けれど、それは‘今’ではないのだ。
 類と静が寄りを戻す兆しがあるというのならともかくとして、少なくても現在まったく二人の間に接触がない。
 それにも関わらず、静の離婚問題に類が巻き込まれるという類の父の懸念の根拠はなんだ?
 たとえ二人に実際に不倫関係があったにしろ、もはや10年近く前のこと、普通ならそれこそすでに時効だと誰でも思うものなのではないか。
 「あなたと類の絆を疑っているわけではない。…あなたといるあの子を見て、類がどれだけあなたを大切に思っているか、愛しているのか、私にもよくわかった。親として失格な話だが、あれほど心安らかに楽しげなあいつを見るのは初めてだったよ」
 そうではないかと、つくしも思っていた―――彼女と一緒にいるようになって、少しづつよく笑うようになってくれた類に。
 再会した時にはすでに別人のようになっていたから、一概には彼女ばかりが要因ではなく、彼自身も変わろうとしていたのだろうが、たしかに二人でいることで癒され、育まれているものもあったのだと実感していた。
 「あなたの存在がなければ、……あの女が受け入れさえすれば、類は既婚未婚などという世俗的常識など微塵も気にすることなく、あの女のもとへ戻るだろう。あなたは、私の穿ちすぎだと思うかね?」
 「それは…」
 ―――どうだろう。
 類の父の邪推だとは、つくしにも言い切れなかった。
 それだけ静と類との深い関わり…類の想いを、つくしも知っていたから。
 類の静への想いは、思い出や過去の想いの残滓などという、淡く浅いものなどではないのだと。
 そして、それは彼自身からも告げられ、その屈託を知り、かつての二人の姿もまた、つくしの中にもいまだ焼き付いていることだった。
 けれど、年月の経過がある。
 しかし、
 「鳥の雛は初めて見たものを、母親だと思うのだという。まるでそれを実証するかのようにあの女に執着する息子のことも、私は長年見てきたのだ」
 普通だったら、たとえどんなに大恋愛だったとしても、破れた恋に何十年も連綿とすることもなかっただろう。
 だが、類は違ったのだ。
 「つくしさん、心からあなたにお願いする。けっして、類をあの女に会わせないで欲しい。断じて花沢も私も、あの女を受け入れることなどできない。だから、……だから頼みたい、あなたに。できるだけ早く息子と結婚して、私たちを安心させて欲しい」
 「…でも、私は」




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