「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花④

愛してる、そばにいて0709

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 「子…というのも、もう不似合いな表現だが」
 ふっと笑んだ類の父親の顔は苦笑を含んではいたが、けっしてそこには静に対する嫌悪も悪意も透けてはいなかった。
 そう、もちろん、類の父が言っているのは静のことに違いない。
 …お義父様は類から静さんを遠ざけたいんだなんて、類は言っていたけど。
 「類には何人か著名の幼馴染みがいる。司君の妻だったあなたも幾人かは知っているだろうか?あるいは、類から?」
 「えっと、西門さんや美作さんとは学生時代にもそれなりに顔見知りでしたし、つ…道明寺さんのお姉さんも、彼らとは親しかったことは聞いています。社会人になってからは、学生時代のようには交流できていなかったようですが」
 「そうだろう」
 類の激務は、上司である父親のせいでもあるのだから、そこらへんの事情は十分にわかっていたに違いない。
 「まあ、もっとも類がほとんど彼らと音信不通に近かった数年間は、仕事のせいとはいえ自ら望んだようなものだから、一概にそればかりが原因とは言えないだろうがね」
 類は静との関係に悩んでか、本来なら赴任するはずではなかった発展途上国や危険地帯へも自ら志願して、転勤を重ねていた数年間がある。 
 そして、ある意味彼がそうせざる得なかった遠因は、やはり静なのだろう。
 「ふっ、三つ子の魂百までも…とはよく言うが、どこまでも祟るものだ」
 独り言をごちで、類の父が盃に残っていた酒を一気にグイッと煽った。
 すっかり夜桜を眺めての酒宴という気分ではなくなっていたが、酒がなくなったのを見越して、酒の追加を誰か使用人にでも頼むか、つくしは迷った。
 「…酒がなくなったようだ」
 「お酒を頼みましょうか?」
 「いや、明日は仕事だからね。私ももう酒を過ごすには若くはない」
 「……………」
 否定も肯定もすることができず、つくしは曖昧に頷き視線を落とした。
 「同い年の彼らとはかなりヤンチャもしたようだが…」
 つくしの記憶の中の学生時代の類は寝ているばかりで、司のようには積極的に他人を害したり悪さをしていたという記憶はない。
 十把一絡げというには、あまりに大物たちすぎるが、たしかに悪たれ仲間だったという意味では、彼らに虐げられた人間にとって、司も類もそう変わりはなかっただろう。
 「それでも学生時代の男友達は、いずれ宝になる。だが…あの女だけは」
 苦々しげな言葉尻に、堪らずつくしが口を挟む。 
 「お義父様が先ほどおっしゃった、類さんよりも2才年上の幼馴染みというのは、…藤堂静さんのことですか?」
 類の父がわずかに目を見張ったのは驚きからだったか。
 類の言葉が再びつくしの脳裏に蘇り、そしてついで静の横顔へと変わって…学生時代の仲睦まじい二人の姿が思い浮かんだ。
 「類が?」
 「…静さんとも面識あります」
 「そうか」
 ありえない話ではないと思い至ったのだろう。
 それだけ類は静に首ったけだったし、たとえ静が英徳に在学していなくても、静の久しぶりの帰国の時でさえも、まるでナイトよろしく類が静に付き従っていたことは、つくしの記憶にもハッキリと残っている。
 「類が子供時代、花沢の唯一の跡取り息子という意識が私には強くてね。…今思えば酷なことだったが、甘やかすと母親からも引き離して、過大な期待から厳しく接しすぎた。一時期、自家中毒にまで追い込んでしまったことがある」
 「……………」
 類からも聞いていたが、学生時代、総二郎やあきらからも聞いていたことだ。
 そして、
 「病ませてしまった。自分の内側に篭って、あきらかに尋常ではない様子に、花沢の後継どころか、普通の社会生活を営むことすら危ぶませてしまった。…どれだけ苦悩したことか」
 ―――後悔したことか。
 それは父としての矜持だったのか、意地だったのか、口にされることはなかったが、しかしその表情が語らずとも、彼が悔いて類に対して申し訳なく思っていることをあきらかにしていた。 
 「そうしたことは?」
 「聞いています。F3…西門さんたちにすら心を開かず、拒絶的だった類さんを、何くれとなく気にかけて、外の世界へと連れ出したのが静さんだということも」
 「………………」
 わずかに視線を伏せ、類の父がつくしの言葉にすぐに頷きを返さなかったのは、静への反感からなのか。
 それでも、
 「そうだな。そのことに関しては、私も感謝しているし…一生涯恩に着るべきことなのだろう。だが、その後のことを思うと、どうしても複雑な思いを拭いきれないでいるのだよ」
 「その後のこと…」
 類の父がなんのことを言おうとしているのか、つくしにもわかる気がした。
 「いい年の大人のことだ。親がしゃしゃり出るまでもない。何があったにせよ、本人たちの責任だということは、私も十分承知している」
 「……………」
 苦痛に軋んだ声音は怨嗟なのか、あるいは自嘲だったのかもしれなかった。
 「だが、類は自身の進退だけを考えていれば良いという身の上ではない。あれの成すことは花沢の役員が成したこと、会社全体のモラルや良識を問われることになる。学生時代とは違うのだ」
 学生時代とは違う―――まさに。
 司が道明寺財閥そのものであるように、類もまた花沢物産そのものといずれは言われることになるだろう人物であり、現在もその支柱の一つ。
 個人の事情が、時に集団の利益のために無視されることはよくあることであり、それが正義とされ、多くの場合容認されてきた。
 「十数年前…あの女がいまだ独身であった頃、類との結婚話を打ち明けられたなら、私は歓迎しただろう」
 「……っ」
 切れれた口火は、意外ではなかったというのに、つくしは息を飲む。
 あくまでもそれは仮定であって、現在ではないというのに、誰よりも祝福された人、類に似合いの女性として彼に並び立っていた静への密かな羨望と……嫉妬が蘇る。
 「家格的にも釣り合いがとれ、あの女の…あの子の人柄や才能にも一目置いていた。…だが、あの女はそうはしなかった。類を捨て他の男を選んで結婚していながら、……花沢の後継者として正しい道を歩きだした息子の前に現れ…よりにもよって、最悪のカタチ、不倫の道へと引きずり込んだのだよっ」




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