「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花④

愛してる、そばにいて0708

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 卑下するつもりではなかったが、それが一般論であり客観的というものだ。
 類はおそらくつくしのことを父親が気に入ったのだろうとは言っていた。
 もちろん、それだけではなかったが。
 誰が指摘しなくても、言葉のとおりつくし自身がよくわかっている。
 類はそれでもいい、ありのままのつくしでいればいいと言ってくれたけれど、本人たちはともかくとして、周囲は本人たちさえよければ良いとはなかなかいかないことを、この年齢になれば彼女にだとて理解できていた。
 「あなたは自分を、ずいぶん低く評価しているようだ」
 「そうでしょうか?」
 「少なくても私はそう思うし、社交界にもあなたのことを高く評価していた人間は少なくなかったはずだ」
 「……………」
 なんと言っていいかわからない。
 類の父が言っているのは、彼女が道明寺若夫人……司の妻だった時代のことを言っているのだとわかっていた。
 だが、当時の彼女もまた、司の妻として誰に後ろ指さされぬよう、出自や家柄で彼の役に立てぬのなら、せめて彼の足を引っ張るようなマネだけはしたくない、少しでも彼の力になりたいと我武者羅に突き進むばかりで、客観的に自分を見ることなどできてはいなかったのだ。
 「私はあなたが気に入っている。もちろん家内もね」
 そう前置きした上で、類の父が語ったのは、以前に類が推測したそのままで、司のヨーロッパ赴任時代、つくしがその傍らで、彼のビジネスに絡んだ相手の奥方や令嬢方との交際に心を砕くことで、間接的に彼の仕事を支え内助の功と称されていたことを上げた。
 「あなたの評判は、ヨーロッパの社交界にいればどこからでも聞こえたよ。もちろん、一般家庭の出身で、あの道明寺財閥の跡取りである司君を射止めたことや、その司君が実家の意向を無視してまであなたを娶ったことに対する物見高い目もあっただろう。また、あなたが社交界に現れた最初の頃は、‘シンデレラガール’そんな世間の呼称に対する興味本位や辛辣な意見もあった」
 類の父の皮肉げな口調での‘シンデレラガール’には、それこそ辛辣なものが含まれていた。
 世間で持て囃された一過性の熱狂とはまた違う評価がそこにはあって、類の父もまた似たような見解を彼女に対して持っていたのに違いない。
 「司君との離婚についても…」
 「……っ」
 類の口からは出なかった事柄。
 「あなたに同情する者はいこそすれ、あなたを悪く言う者はなかったよ…心あるものたち、あなたへの好悪は別として、おもねりやへつらいではなく、まともな分別を持った発言ができる人間たちの中では、という意味ではだけれどね」
 「………」
 司との離婚についてつくしが他人から聞くのは、ほとんど初めてに近い。
 彼との離婚以来、彼女は社交界とは完全に縁が切れていたし、一時期は‘シンデレラガール’として時の人になったにせよ、司はあくまでも経済人であり、つくしも一般人だったことから、報道はそれ以上過熱することなく、二人の離婚がそれほど大々的にはとりあげられなかったこともある。
 あるいは、今の道明寺司の妻が、当時の‘シンデレラガール’とはまるで別人だと、知らない人間がいてもおかしくはなかった。
 「あなたとの離婚当時、司君と彼の前夫人・遥香さんとの間にすでに関係があったことは広く知られている」
 司の母は司とつくし二人の離婚を急いだが、司がすぐには認めなかったこともあり、結局は世間に知られることとなってしまったのだ。
 司の次男である亡き佑都の出生の時期が、言わずして道明寺家の事情を世間に知らしめた。
 たとえそれが真実とは程遠いことであったとしても。
 さすがの道明寺家も、一ヶ月や二ヶ月ならばともかくとして、誕生してしまった子供の生年月日までは誤魔化すことができなかったらしい。
 「あなたには一切の非がない。あなたの出身がどうであろうと、我々の所属する国が一夫多妻を認めていない以上、不倫はどこへ行っても醜聞でしかなく、不貞は悪だ。むしろあなたとの離婚のことでは、司君の方が評判を落としている。一概には言えないが、多種雑多な人種の犇めくアメリカでは、日本よりももっと不倫に対して厳しい人たちもいるお国柄だからね。あるいは、アメリカを本拠地にする道明寺財閥的には、かなり厳しい局面に直面することもあったかもしれない」
 つくしには言うべき言葉が見つからなかった。
 たしかに司は自身の不倫を否定しなかったし、つくしとの不仲をその理由にあげることもしなかった。
 たとえ不仲であったとしても、不倫の言い訳にはならなかっただろうが、不倫そのものが欺瞞であり、司の非ではなかったというのに、彼は黙ってそれらのことを飲み込んだ。
 おそらくつくしのために―――ひいては戒のために。
 あるいは道明寺財閥の名誉と対面の為でもあったかもしれなかったけれど。
 もしそうだったのだとしても、それだけだったとはつくしは思わなかった。
 …あいつは愛情には真摯な男だったから。
 類の父の言葉に同意できるはずもなく、だがかと言って、そうではないとも言えずに苦笑するに止める。 
 もしこれが他人事だったなら、どの面下げて…と彼女自身を嘲ったに違いない。
 「しかも、あなたは司君から離婚の際に得た慰謝料のほとんどを、難病支援のNPO団体に寄付している」
 「……お調べになったんですか?」
 当然のことだ。
 それでもつい最近……ホンの2年ほど前のことであり、あくまでも内々でのことだったというのに、それさえも知られているのはさすがだと言うべきか。
 「意外かね?」
 「………いえ」
 以前にも彼女のことは調べたと、言われていたのだから。
 「それに……」
 類の父が言葉を途切らせた。
 ここに来て、初めて彼女へのネガティブな評価を言って聞かせようというのか、口ごもる様子に彼が言葉を選んでいることがつくしにも察せられた。
 「それに、なんですか?」
 「…あなたは英徳学園出身だったね?」
 「え?ええ、はい。高等部からですが」
 「類の同級だったかな?」
 「…いえ、一つ後輩です」
 さすがにそんな細かいところまでは記憶になかったらしい。
 だが、そうした瑣末なことは彼にとってもどうでも良いことだったようだ。
 ただ話の切り口としての話題だったのだろう。
 「類には2才年上の幼馴染みがいてね。あなたの学生時代と被ることはなかっただろうが、幼い頃から我が家とも行き来していた子だった」




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