「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花④

愛してる、そばにいて0704

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 次の日に出直すということも検討したが、あいにく夜から恵里香が自身の実家に一晩泊まる予定があるそうで、忙しないからと類と二人、つくしも休日明けの月曜日まで花沢邸に宿泊することになった。
 「類さんにとって、ここは実家なんだもの。そんなに急いて帰ってしまうことはないわよ。幸い会社からもそんなに遠くはないし、つくしさんの職場からはちょっと遠くなってしまうかもしれないけれど、たった一日だけのことじゃないの。私もまだまだつくしさんとは女同士のお話もしたいのよ。ね、お願い」
 そう両手を合わされてお願いをされてしまえば、嫁(まだ嫁ではないが)の立場としては断りきれなかった。
 ましてや、めったに顔を合わせることもない疎遠な親子への、恵里香の心遣いだと思えばなおさらのこと。
 類にしてみれば久々の実家だろうと、何ヶ月何年と顔を合わせることがない親だろうと別段思うところはないらしく、恵里香の懇願を受け、つくしへとどうする?と言った視線を投げかけるだけで決断は彼女に丸投げだったからなおさらだ。
 「はぁ~、本当、今時こんなおうちってあるのねぇ。まるで武家屋敷みたいじゃない?」
 「そ?」
 「うん」
 とはいえ、花沢邸はむしろ侍屋敷だろう。
 むしろ西門邸の方が本来の武家屋敷に近い。
 総二郎の家も純和式で、花沢の屋敷同様枯山水の中庭を有していたが、どちらかといえば質実剛健な花沢邸よりも華やかで雅だ。
 貴族的な佇まいの家屋敷は総二郎の純和風な美貌にぴったりだったが、この花沢邸は類や彼の父親の甘く西洋人形風の美貌にはアンマッチだった。
 …まあ、いいけど。
 食後のフリーな時間、いつものように近くの公園ではなく、類の実家の中庭を二人で手を繋いでそぞろ歩きで散策することにする。
 各所で掃き掃除をする使用人や、庭の手入れに勤しむ庭師と出くわし、会釈をされ会釈を返すが、つくしとしてはいい年をして手繋ぎして歩く自分たちが、まるでバカップルのようで恥ずかしくて仕方がない。
 たしかに海外ではそう珍しいことでもないかも知れないが、ここは日本だ。
 ―――しかも、初めて訪れた恋人の屋敷で、痛いオトナぶりを晒すことが、なんともつくしの性分としては居た堪れず耐え難い。
 しかし、そんな彼女とは真逆に、神経の待ち合わせなど初めからない類の方は、まったく人目を憚ることもなく、平然と普段通りの言動を繰り広げてくださっている。
 つくしの顔を間近で覗き込んだり、たわいない話を耳元で囁いたり。
 …べ、別に特にイチャついてるってわけじゃないけど。
 「あ、ほら」
 しまいには急に肩に腕を回され、抱き寄せられてしまった。
 「ちょっ!」
 「そこ、石が埋まってるから蹴躓くとかなり痛いよ?」
 「え?あ……ああ、ありがと」
 広い胸に頬を寄せ、上目遣いで類の顔を振り仰ぎかけて、ちょうど建物の影で立ち話をしていたらしい使用人二人と目が合ってしまい、生ぬるく微笑みかけられカッと顔に血が上る。
 …うひぃ。も、もうなんて言うか!
 「うちは総二郎んとことは違って、完全に整えられた人口美じゃなくってあえて野性味を残させてたりするからさ。まあ、野放図に放置しているわけでもないけど、それでもけっこう足場が良くないところもあるから足元気をつけて?」
 「………はい」
 よけいなことを考えているのはやはりつくしだけらしく、類の方は至極真面目に忠告してくれるから文句を言うこともできない。
 が、さりげなくつくしから視線を反らして背けた彼の顔の動きが怪しい。
 「ね、もしかして、笑ってない?」
 「え?」
 振り向いた顔はなおも真面目さを保ち何食わなさを装っているが、妙に悪戯小僧めいた目が楽しげに煌めいていて…とっても怪しかった。
 「私のヘマが面白いわけ?」
 「いや、ヘマが面白いというより、ヘマをしないかとドキマギ、キョロキョロ、挙動不審な行動しては、結局ドジしちゃってるのがね」
 歯に衣着せぬ相変わらずの失礼な物言いに、背中を抓ってやろうとして抓めず、仕方なく爪を立てる。
 「いててて」
 「ウソばっかり。抓める贅肉がないとか、ホント、ムカつく」
 「……やっぱり一緒にプールに通う?」
 「なんでそうなるのよ!」
 類と一緒に出掛けたプールデートが楽しくなかったとは言わないが、類との場合はデートというよりも、もはや本気の競泳状態で、かなり疲れさせられること請け合いで、どうしても二の足を踏んでしまう。
 …まあ、だからいいんだろうけどさ。
 「でも、変な気負いがなくなったでしょ?」
 「……まあ、多少は」
 だが、これも性格だ。
 どうしても類のようには、人の思惑や人目を気にせずに生きることなんて、つくしには出来ない相談で…。
 「大丈夫だよ。……たとえつくしがここで派手に大の字に転がってたって、みんな見て見ぬフリしてスルーしてくれるからさ」
 「………………」
 それはそれで微妙だと思うのは彼女のワガママなのだろうか。




*****




 橋の欄干から池を覗き込んで鯉にエサをやったり、ゲコッと現れた大きな牛蛙におわっと仰け反ってケラケラ笑ったり、踏まないようにその蛙を跨ぎ越して、また二人で意味もなくクスクスと笑いあう。
 「…楽しそうだね」
 「スッゴクね。類は楽しくない?」
 「楽しい…かな」
 小首を傾げ、ちょっとだけ類は考え込むような仕草で、まるで他人事のような微妙なお答えを返してくる。
 しかし、そんな答えでもつくしは特に気分を害さなかった。
 類はイヤなことはイヤだと言うし、気が向かなければ彼女がどんなに望んでもやらない男だから。
 つくしと散歩をしているという事実だけで、つまりそういうことなのだ。
 「つくしが楽しいと俺も楽しいからさ」
 「なによ、それ」
 照れ隠しに類を小さく睨むと、優しく微笑み返される。
 特別な何かがなくても、ただこうして彼と二人でいられるだけで、穏やかで普通の毎日がこの上なく楽しく幸せなのだと、そう感じられる。
 「今時さ、東京にいてこういう場所って中々ないじゃない?…それが個人のお宅だなんて凄い贅沢」
 ふふふと、類も笑って、欄干の上に引っかかっていたカマキリを指先でつまみ、手のひらの上に乗っけて、つくしへと差し出してくる。
 「うげっ」
 「あれ、ダメ?」
 仰け反る彼女に無理やり突きつける稚気はさすがにないようで、無理強いはしてこない。
 いかにも花や蝶と育ってられ、風にも耐えられないお坊ちゃまのようでいて、類はあんがい虫や蛙のような両生類、爬虫類も平気なら、汚かったりすることにも神経質ではなかった。
 …汚部屋に住んでても全然平気だしね。
 もしかしたら、東南アジアやアフリカなどの発展途上国を回った経験もあるのかもしれなかったが、おそらくこの屋敷に原点がある。
 いかにも西洋人形のような見かけの類が、こうした野趣溢れる庭の屋敷の子だということがたしかに意外でもあったが、彼にも子供時代もあれば、虫採りに興じた頃もあっただろう。
 …戒も虫が大好きだったっけ。
 「子供の頃は私も平気だったんだけどね。今は、苦手かな。蛙とか蛇も…触るのはちょっとね。類は動物も平気だよね?」
 「うん」
 むしろ動物が苦手なのは司の方で、繊細なのも彼の方。
 いかにも繊細そうな類は真逆に図太いくらい。
 「ふふふ、ホント、あんたって意外さの塊」
 「そうかな?」
 「てっきりそういうの嫌いだと思ってた」
 「まあ、大好きってほどじゃないけど、虫も蛙も蛇も……人間も似たようなものだよ」
 「は?」
 「同じ地球上の生き物ってこと」




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