「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花④

愛してる、そばにいて0701

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 「戒が?」
 「はい。一時期、SPたちが止めるのも聞かず、何度かかなり危険な地域にまで出向こうとされていたようですが…」
 さすがに警備を命じられている雇い主の息子の安全が脅かされるとなれば、いくら日頃基本的には戒の言うことにも逆らわないSPたちとて黙ってはいない。
 あくまでも彼らの雇い主は司であり、戒ではないのだ。
 そして、しょせんまだ12才かそこらの子供のこと。
 並みの大人では太刀打ち出来なかった、中・高生時代の司とは事情が違って、無理強いにでも危険箇所から引き剥がすことも行動の自由を制限することもできる。
 それがわかっているからだろう。
 戒もあえて司の意志に逆らって、無茶をすることがなかった。
 そうしたところもまた、父親によく似た親子だと言われながら、司とはまるで違うところだ。
 「籠城してるってか。…ハンガーストライキね」
 そんなもので、戒は本当に自分の要求が受け入れられるとでも思っているのだろうか。
 「こまっしゃくれたところがあっても、まだまだしょせんはガキってことか。で?中で暴れてるってか?」
 「はい。当初、室内で見過ごし難い物音がするということで、総執事長の権限で、坊ちゃんの了承は得られませんでしたが、サブキーを使って坊ちゃんの私室へと立ち入ろうとしたところ、どうやら家具類を移動して出入り口を閉鎖されているらしく、室内に入室することは叶わなかったそうです」
 当然のことだが、保護者である司が常時、戒を監督できないことから、総執事長には戒の世話に関して、ある程度の権限を与えている。
 タマのように…とはいかなかったが、それでも現在屋敷の総執事長は使用人たちの中でも特に選び抜かれた人物で、かつてタマに直接薫陶を受け、長く道明寺家に仕える忠義者だった。
 しかも、前当主である司の父や母ではなく、司の方に忠義を尽くしていることも特出している。
 間違っても彼の若き日、楓の無言の意を受け、司に隠れてつくしをスポイルしていた当時の家令や家政婦長とは違う。
 …俺もガキだったあん時とは違うはずだ。
 「さすがに、窓ぶち破ってまで侵入させるほどのことでもねぇしな」
 「ええ。…やはり心配だったのは、坊ちゃんのご無事ですから」
 当初、戒が使用人たちを拒絶して、私室に閉じこもった時に心配されたのは、彼の自傷行為や体調不良だった。
 けれど、それは戒自身の行動によって、皮肉にも常にその無事を証明し、司たちに把握させることになっている。
 これまでにはなかったことだが、さすがに戒も自身の力の及ばぬやるせなさを物にでも当たらなければやっていられなかったのか、閉じこもって以来、定期的に癇癪を起こしては物を壊しているらしい。
 それこそ往年の司のように。
 当初そのあまりに派手な物音に、戒に何かがあったのではないかと使用人たちはギョッとしたようだが、古参の使用人たちの何人かはかつて荒れていた時期の司を知っていた。
 それまで戒にその兆候はなかったものの、やはり彼らにも蛙の子は蛙という認識があったのだろう。
 すぐに戒が部屋で暴れて、家具や高価な調度品類を壊しまくっていることが予想できたらしい。
 あとはその破壊行動で自らを傷つけてしまわないか、だけだが、さすがに緊急事態かと躊躇しつつも総執事長がドアをブチ破らせようとしたところ、戒自身の声で警告されたらしい。
 自分の意思を無視して無理に押し入ろうとするなら、自らを自傷すると。
 それをこそ恐れていた総執事長は恐れをなして、強引なことをするのは思いとどまった。
 どのみち司の指示がなければ、御屋形のお坊ちゃまを相手にそう滅多なことをするわけにもいかないのだ。
 「ふっ、なるほどな。まあ、ほとぼりが冷めるまでしばらくの間は好きにやらせとけ。2日や3日メシ食わなかったからって死ぬわけでもなし…適当に、効果がないと思ったら出てくんだろ。あいつもバカじゃない」
 戒の私室にもミニバーがついている。
 引きこもった時にもある程度おやつ類が置いてあっただろうし、当然、冷蔵庫もあれば飲料水も置いてある。
 日本同様、現在のアメリカでは、いざとなれば水道水を飲むこともできたから、数日くらい閉じこもろうとどうということはないはずだった。
 そしてまた、そんなことくらいで狼狽する司でもない。
 …それがわからないヤツじゃねぇと思うんだがな。
 さすがの戒も意気消沈していて、ヤケになっているのかもしれなかった。
 「とりあえず閉じこもってるつーなら、一石二鳥だな。なんだかんだ言っても、子供のことだ。しばらく時間をおけば沸騰した頭も多少は冷えて、こっちの言うこともそれなりに受け入れられるようになんだろ」
 「……はい」
 西田も同意して一礼する。
 実際、これまで戒は極めて聞き分けの良い子供だった。
 たとえそこに、父親への不審や反発、内心での不服従があろうとも、表面的には優等生であり、道明寺財閥の後継者としての自分というものをわきまえて行動していた。
 …ガキらしくねぇっつーか。
 そして、おそらく戒の子供らしさを奪い、そうあれと彼が自身を抑制するようになった背景には、司とつくしの離婚、その出来事に前後して現れた遥香と佑都の存在、それらすべてによって自身の置かれた立場や立ち位置が大きく変動し、周囲の戒を見る目が変わったせいなのだと司も察していた。
 ただ問題は…、
 「そのハンガーストライキが、誰に対してなされて、どんな要求を突きつけているものなのか、だな」
 普通に考えれば、司へのアピールであり、ジーナのことへの抗議だろうが、しかし、戒はどこまで彼女への父親の関与を把握しているのか。
 …もちろん察してはいるだろうが。
 司が自身のプライベート用の携帯電話を確認する。
 ビジネス用の携帯電話は彼の直通ナンバーとはいえ、基本西田か、彼が多忙な時には第二秘書なり彼の完全無欠の道明寺秘書軍団が管理し、相手次第で司に取り次ぐが、そのビジネス用のの携帯電話にも、プライベート用の携帯にも、戒からの着信はなかった。
 いつもながらの司からの一方的なメッセージだけ。
 一応メールは届いてはいるようだが、相変わらず一切の返信はないし、電話に至っては着信拒否されてしまっている。
 その一方通行のメールにしても、ここ最近では盆暮れ、クリスマスの定型文的なものと化していた。
 それでもこの多忙な父親にとって、できるだけ折に触れそうしたメッセージを送り続けることだけが、せめてもの戒への、最愛の我が子への変わらぬ情愛の示し方だったのだ。
 …元気か?
 …勉強頑張ったらしいな。
 …お前は俺の自慢の息子だ。
 …たまには土産でも強請れ。
 …いつかお前にも、ここを見せてやる。
等々。
 「俺がNYに戻るまで、たとえ部屋から出てくる気配がないにしろ、見張りを絶やさず、戒が屋敷を出ないようによく見張っておけ。ないとは思うが、自傷にもなおいっそう気をつけさせるように総執事長に申し付けておけよ?安否に応答しねぇようならかまわねぇ。窓をブチ破らせて、SPどもを戒の寝室に雪崩れ込ませろ」
 「かしこまりました」
 「あとは……………」
 …戒があの娘のことを忘れて、立ち直るのを待つことくらいしかねぇか。




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