「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花④

愛してる、そばにいて0691

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 「泳ぎまくって疲れたし、もう、ここでご飯食べて泊まってこ?」
 自分が好きで?泳ぎまくったくせに、そんなことをおっしゃる王子様の仰せに従い、結局2人はプールの上階のスウィート・ルームに一泊することとなった。
 「…ね、たいがい‘王子様’もいいかげんキツい年齢だと思うんだよね」
 「は?」
 対面側で優雅に舌平目のソテーを口に運んでいた類が、苦笑交じりに抗議してくる。
 とっさになんのことかわからなかったつくしだったが、どうやらまたもいつもの独り言を呟いていたようだ。
 バツの悪さに、ムッと口を尖らせ、付け合せの人参をバクリと豪快に口に放り込む。
 …ん〜、美味しい!
 昔取った杵柄。
 以前は苦手だったテーブルマナーも今やかなり板について、ぞんざいなようでそれなりに様になっている。
 「一々、人の独り言に反応しないでよ」
 「ていうかさ?高齢者でもあるまいし、普通、そう独り言なんて言ったりしないものなんじゃないの?」
 「むぅ~」
 ああ言えば、こう言う、つくしもかなりおしゃべりな方だが、おしゃべりではないはずの類に口で勝てた試しがない。
 「はぁ〜、まったくもういいわよ、いいわよ。好きしてください」
 投げる。
 しかし、それしても、
 …やっぱ、こういうとこの食事は美味しすぎて、せっかくカロリー消費してもこれじゃあ全然意味ないわ。
 めったに運動などしないというのに妙に張り切りすぎたせいで、つくしの方は部屋に辿りついた時にはかなり疲労困憊ヘロヘロ状態だったから、今晩は簡単にルームサービスにしようと言ってくれた類の提案に飛びついてしまったのだが、やはり一流シェフの作る料理は美味しすぎて案の定食べ過ぎてしまった。
 緊張感の欠片もない環境下だとなおさらだとプチ自己嫌悪。
 「でも、良かったよ」
 類の声音の調子が変わった。
 「良かったって、なにが?」
 わずかに目を見開き怪訝に問い返す彼女に、類がホッと表情を緩ませ、ふわりと笑ってくれる。
 いつものようにからかうようなものではなく、ただ優しいだけの顔。
 …心配してくれてる。
 それが容易にわかる。
 誰かに…愛する人に気にかけられ、包み込まれているという安心感と幸福感。
 「ほら、本屋を出て車で待ち合わせしたあたりから、なんかお前元気なかっただろ?」
 「…あ」
 気づいてくれていたのだ。
 そういえば、車でも何度か疲れたかと聞かれた。
 「プールで泳いで、だいぶ気も紛れたんじゃない?」
 「類」
 たしかにそうだ。
 肉体的にはかえって疲労していたが、それでも鬱々とした気持ちはいつの間にか晴れていた。
 特に何があったというわけではなかったけれど。
 妙に気が塞いで、グルグルと考えても仕方がないことばかり考えてしまっていた気がする。
 …ううん。そうじゃない。
 自分の気鬱の原因はわかっている。
 「今日はゆっくり湯船に浸かって、もう寝ちゃいな?スポーツの疲労は、いい具合にストレスの発散にもなって、いい眠りを呼んでくれるらしいからさ?」
 類は何があったとは聞かない。
 絶妙なタイミングでいつも手を差し伸べてくれて、彼女が話したいと思った時に、話したいことだけを聞いてくれる。
 だから意地っ張りな自覚のある彼女も構えることなく、彼に甘えることができるのだ、きっと。
 …ありがとう、類。
 「うん。じゃ、お言葉に甘えてそうしようかな」
 まだイイ年をした大人が寝るには、かなり早すぎる時間帯だったが。



*****



 ゴソゴソ、ゴソゴソ。
 「……………」
 …眠れない。
 ハァ~と内心でため息をつく。
 類はともかく、彼女は明日仕事だ。
 いくら早めにベッドに入ったとはいえ、このままではマズい。
 …どうしよ。全然っ眠くない。
 体は心地よい疲労で眠りを欲している。
 ゆっくりと入った温めのお湯は、十分に体を温めてくれて、ストレスも解してくれたはずなのに、ベッドに入った途端なぜか妙に目が冴えてしまって、つくしは困っていた。
 背後の類はいつも快眠快眠快眠…普通は快眠快食快便の三種が入るのだが…なので、ベッドに入れば、時にはベッド以外の場所でも平気で即座に寝入ることができる男だ。
 いつも通りスースーと聞こえる寝息は規則正しく、いつまでもゴソゴソ動いていては、さぞかし迷惑だろうとわかっているのだが。
 …まあ、私がいくら身動きしたって、それくらい平気で気にせず寝てるだろうけどさ。
 目を瞑ると途端に、昼間の出来事が蘇ってしまう。
 気にしいなつもりはなかったが、それでも司との離婚当時もさまざまなことが気になって、あるいは毎夜のように訪れる悪夢に飛び起きては眠れない夜を過ごしたものだった。
 今はもうめったに悪夢の訪れはない。
 たまに訪れることがあっても、隣で眠る類にくっつけば、類は無意識にでも彼女を抱き込んでくれて、安心と安らぎ、温もりをくれた。
 だからこそ眠ることができた。
 少しづつでも前に進むことができたのだ。
 けれど―――。
 背後の類をソロソロと窺って、彼の顔を覗き見る。
 ドキッ!
 「る、類?」
 「……眠れないの?」
 てっきり寝入っているのだとばかり思っていた類が、つくしを見ていた。
 「え?まさか、私がゴソゴソやってたせいで眠れなかったとか?」
 慌てて振り返れば、苦笑されてしまう。
 「いや、寝てたけど」
 「そ、そうよね?」
 よもやウソ寝する必要もない。
 「じゃあ、起こしちゃった?」
 「まあ」
 肯定されてしまった。
 迷惑そうではなかったが、それでも申し訳ないことには違いない。
 「ごめん」
 「いつもだったら、つくしが耳元で寝るなと怒鳴ってても寝れたと思うんだけどね」
 …寝るなよ。
 それはともかくとして、
 「昨日、寝すぎちゃったのかも。そんなに夜更かしするタチじゃないけど、まだ23時だし」
 「でも、いつもこれくらいの時間に寝てるよね?」
 「……ん」
 そういう類は、仕事で遅くなりさえしなければ、平気で21時くらいには寝て、その後好きにさせていたら10時間でも半日でも寝ている。
 いつだったかあまりに寝ているので、実は何か隠れた病気でもあるのではないかと心配になったが、昔からそんなものらしく、さすがに日付は跨いだことはないとドヤ顔をされてしまい、なんとも言いようがなかったことがある。
 「あ、あのさ?」
 「…うん?」
 自分でも大胆なことを言おうとしている自覚がある。
 それでも時には100の言葉より、肌の温もりが心の慰めや……支えになってくれることがある。
 「その、今日…ダメかな?」 




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