「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花④

愛してる、そばにいて0689

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 さすがに店内では、騒がしすぎたらしい。
 『申し訳ございませんが、お客様…』
と、店員に声をかけられたのをきっかけに、つくしは適当な挨拶をして泉田と来栖と別れ、その場を離れた。
 本来なら店内にいるはずが、不測の事態で店を出ることになったのだから、特にアテがあるわけもない。
 …とりあえず類に連絡しとこ。
 スマホの画面を操作して、先に車に戻っている旨を連絡する。
 本当なら本屋の他にも、気の向くまま類と二人でアーケードを練り歩くつもりだったが、街中をウロウロしたあげく、うっかりまた泉田と来栖に出くわしてしまっても厄介な話だ。
 類とは無関係だと否定しておいて、その直後に二人でいるところを目撃されるなど、それこそシャレにもならない。
 しかし、さっきから彼女の脳内を占めているのは、そんな心配などではなく、まったく別のことだった。
 ―――いくらお金があって美人で、ステータスがあっても、やっぱり人間って生死と病気に関することだけは平等なんだな、って思うわ。
 先ほど来栖が言っていた言葉だ。
 看護師としての何気ない一言であることはわかっている。
 ‘ああいう人’という表現が、必ずしも静を限定しているとは限らない。
 …でも。
 来栖はいまだ、つくしが以前勤めていた大学病院―――静がかつて入院していた病院に勤め続けているのだ。
 お金やステータスがある美人など、世の中にはいくらでもいる。
 けれど類の話題が出て、‘Sizuka’の話題へと飛び火して、連想された話に静が無関係ということが本当にあるだろうか?
 しかも、以前泉田は、静が循環器内科の権威である蓬田の患者だったと言っていたはずだった。
 シャレにならない病気で入退院を繰り返している…という言葉の意味。
 蓬田は‘神の手’と巷で呼ばれる有名医師の一人だ。
 世間でも名の知れた大企業の令嬢であり資産家の妻である静が、その医師の患者であること自体は何らおかしいことではなく、その医師の患者であるということは、当然静には、循環器=心臓系のどこかに某かの支障があり、そのことが原因で入院していたということなのではないか。
 そして、そうした臓器の障害がけっして軽症のはずもなく、泉田も静の病を重篤なのではないかと語っていた。
 …まさか。
 また父親や総二郎の言動から、静が日本に、それも東京に戻ってきているのではないかと予測していた類。
 さまざまなことがつくしの脳裏を過ぎっては、彼女を悩ませた。
 コツン。
 「…あ」
 すっかり時間が経つのも忘れ、物思いに耽り込んでしまっていたらしい。
 車の窓ガラスを叩く音に外を振り返れば、類が間近の窓の向こう側から運転席を覗き込んでいた。
 慌てて彼女がロックを外すと、類が助手席側に回り込んで、車に乗り込んでくる。
 「お待たせ。ごめん、待った?」
 「あ、ううん、平気」
 待つどころか、逆にもうそんなにも時間が経っていたのかと驚かされてしまう。
 気が付けば当初の約束の時間から、30分以上過ぎていた。
 さすがの類の顔も申し訳なさそうだ。
 …別にいいのに。
 「連絡くれれば、本屋さんまで車回すよってメールしておいたでしょ?」
 「大した距離じゃないよ。……それより、買いたっかった物って、どれ?荷物、後ろ?」
 そういえば、そんないいわけをしてあったか。
 類が怪訝に、空の後部座席を振り返った。
 「あ、あぁ、えっとぉ。うん、お店まで行ってみたんだけどね、なかった」
 「そうなの?これから別のところへ探しに行く?」
 提案してくれるのはありがたいが、あくまでも口から出まかせ、そんなものなどなかったつくしは曖昧に首を横に振って、適当に話を変えてしまう。
 「ううん、大丈夫。ネットで探した方が早そうだし……そ、それより類の方は?本、買わなかったの?」
 変に突っ込まれてしまう前に、今度は自分から質問し返すことで類の質問の追求を誤魔化した。
 「…ん~」
 そんな彼女の目論見どおりに、それ以上類は、彼女の買い物の話に固執するでもなかったが、それでも彼の透明な目にジッと見つめられ、疚しいわけでもないのにドキドキと胸がイヤな感じに動悸打つ。
 …な、なに?
 「類?」
 「100冊くらい買ったかな?」
 「は!?100冊ぅ?」
 さすがはお坊ちゃま。
 同じ買い物をするのでも、やることが違う。
 お坊ちゃま、というにはかなり薹が立ってはいたが、とにかく限度を知らないという意味では同じことだろうと、頭痛を覚えた。
 「この間、たしかネットでも、ウン十冊とか買ってなかったっけ?」
 にっこり。
 やはり否定しない。
 「…おい」
 「いや、やっぱりさ。ピンポイントで探すのと、目で見て、いいなって思って欲しくなっちゃうのとではまた違うじゃん?」
 「………」
 じゃん?と同意を求められても…。
 …わかんなくはないけどさ。
 類の蔵書のラインナップは彼自身の趣味趣向に偏らず、かなり多岐に渡っているが、それでも蔵書数が蔵書数だけにやはり似た様な本も多い。
 ただその本に、被りがないのは凄いことだったけれど。
 …私だったら、絶対間違って同じ本買っちゃいそうよね。
 「ま、いいけどさ。で?全部、送ってもらったの?」 
 「ん。来週の土曜着で宅配してもらっておいたから、つくし、受け取っておいてくれる?」
 「OK。でも、そんなにずっと後でいいの?読みたいから買ったんでしょ?」
 「どうせ、100冊全部いっぺんに読めるわけじゃないし、ウチにもまだ読みたい本がいくらでもあるしね」
 まあ、そうだろう。
 …全部、読むつもりでいるところが凄いよね。
 そして、実際にその膨大な本をちゃんと読んでいるのだから、さらに凄い話だ。
 「まさか宅配受け取るためだけに、つくしに休みとってもらうわけにもいかないだろ?」 
 「まあねぇ」
 つくしの場合は類とは違って、そこそこの時間帯には仕事から帰宅出来ているのだから、昨今の宅配便事情ならなんとかなりそうなものではある。
 それでも、書庫に片付ける手間や時間も考えれば、やはり時間に余裕がある時の方が助かるのは確かだった。
 「でさ、この後どうする?本屋に寄った後は、お茶でもしてからまたのんびりそこらを見て回る予定だったろ?」
 「ああ~」
 予定外の人たちと出くわしてしまったおかげで、見事にその後の予定がパアになってしまった。
 かといって、やはりとてもではないがつくしには戻る勇気がない。
 「…どうしよ。えっと、類はまだどこか見て回りたいところとかある?」
 「俺?」
 「そう」
 「特にないけど?」
 聞かなくても答えはわかっていたようなものだ。
 散歩は好んでいても、ウィンドショピングはあくまでも彼のつくしへの付き合いで、彼は元々買いたい物があれば、いくらでも相手の方を呼び出すことができる立場の人間なのだ。
 また、そうでなくも彼には、御用達のブティックや宝飾品店があったし、今の世の中、大抵の物がネット上でも購入できる。
 「つくしは?疲れたんじゃない?」
 「いやぁ、私はあんたとは違って、午前中もお休みでゆっくりさせてもらってたから全然だけど」
 「ふぅん?なのに、もうショッピングはいいの?いろいろ見て回りたいって言ってなかったっけ?」
 「……まあ」
 何を買うという目的があったわけでもない。
 彼女もたいがいの女性の例に洩れず、たとえなにも買わなくても買い物に出かけること自体が好きで、見て回るだけでも楽しめるタチだった。
 また、そう毎週毎週時間がとれるわけではない類とのせっかくのデートなのだから、目一杯楽しみたかった、ただそれだけ。
 …残念だけど、しょうがないか。
 類的にも、家でのんびりしていた方が好ましいだろう。
 一日オフの明日は、たっぷりと寝倒すに違いなかったが。
 「ハァ……いいよ、もう、帰ろっか?適当なスーパーに…」
 「じゃ、この後は、俺のプランに付き合ってよ?」
 「は?」
 つくしがいいとも悪いとも言わないうちに、類がさっさと手を伸ばしてカーナビを操作し出し、ピッと音を立てて探し出したスポットを、勝手に行き先に設定してしまう。
 「ここ」 
 「え……ここ?」
 「そ。前から言ってたけど、一緒にプール行こ?そのままどっかのホテルに部屋をとって、泊まっちゃえばのんびりすることもできるし、それこそデートの定番ってやつじゃない?」




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