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「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花④

愛してる、そばにいて0687

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 ブラブラとその辺を思いつくままに練り歩き、落ち着いた先はいつもとほとんど変わりがないことに本屋。
 スマホでいくらでも読書できる世の中だが、やはり本の虫的には紙の本も捨てがたいらしく、類のマンションにはかなりの蔵書が所蔵されている。
 …いくら高級マンションだからって、床が抜けたりしないのかな。
 そんなよけいな心配もしてみたり。
 つくしもわりに読書好きな方だが、類の広範囲の興味や知識にはとても太刀打ち出来なかった。
 「あっ、これ」
 以前テレビでやっていた有名社員食堂のメニュー最新版だ。
 これまたいくらでもネットでレシピなどを拾えるが、紙の本にはそういったものとは違う楽しみがある。
 「買ってく?」
 「う~、どうしよ」
 いくら本を揃えたところで、家で再現してみたいものはどうせその中のいくつかだけで、シリーズのうち前作2冊をすでにつくしも所蔵していた。
 なかなか良かったから手にとりはしたが、やはり1冊目に比べて2冊目はそれほど目新しいものはなかったように思う。
 …結局作ってないメニューもあるし。
 パラパラと捲って立ち読みの姿勢に入ったつくしに苦笑して、類がポンとつくしの肩を叩く。
 「じゃあ、お前はしばらくここで悩んでな?俺は下の専門書の方を覗いてくるから」
 「あ、うん。何時まで?」
 「他に見たい本とかある?」
 「私は別に」
 彼の蔵書からオススメを選んでもらう方が、闇雲に本屋で探すよりもよほど面白い本に出会うことができる。
 「でも、ここなら適当な雑誌で時間潰せるから、類はゆっくり見てきていいよ。普段なかなかじっくり本を選ぶ余裕もないんだし」
 「そ?」
 「うん」
 類が手首を掲げ、いかにも高級な腕時計の時間を確認する。
 意外にガッシリした手首にハマった時計がよく似合っていて、いまさらだというのにドキッと胸が鳴った。
 特に何かしらのフェチシズムの気がある自覚はなかったけれど、それでも自分とは違う骨太な手足の大きさや逞しさに男の色気を感じてしまう。
 「…なに?」
 「えっ!?い、いや、別にっ」
 ついじぃ~っと見惚れてしまっていた視線に気がつかれていたのだろう。
 尋ねられてとっさに誤魔化したものの、妙に上擦った声音は誤魔化しようもなく、類にクスリと笑われてしまった。
 …うひ。
 けれど、類は特につくしをからかうでもなく、小さく笑って時間を指定した。
 「…じゃ、1時間くらいイイかな?」
 「OK」
 じゃあと、軽く手を挙げて離れてゆく類の後ろ姿を見るともなく見送って、そんなに人が多いわけでもない店内で、つくしよりも多少若い年代の女性たちが、彼女と同じように類の背中を見送り、ヒソヒソきゃあきゃあと騒いでいるのに気がつく。
 たとえ何者なのかわからなくても、そこにいるだけで特別な人間がいるとしたら、類であり、彼の親友たちだ。
 ラフな格好をした類は、ダンディな男性というよりは、いつもより数段若く見えて、童顔なわけでもないのに童顔なつくしと並ぶとぐっと若く見えた。
 類の後ろ姿が地階へと続く階段で消えたのを機に、視線を手に持った本に戻そうとして、今ちょうど地下から上がってきたらしい女たちの一人と目が合って、互いに「あ!」と指さし合う。
 「牧野さん!」
 「泉田さん?……それに、もしかして、来栖さんですか?」




*****




 世間は狭いというには、ばったり会うことがあってもおかしくはない相手だが、思わぬところで出くわしたことで、つくしが勤めている病院の看護師・泉田がきゃあきゃあと年齢にしては妙に甲高い声音で駆け寄ってくる。
 泉田が伴っていたツレの女性・来栖は、泉田と共につくしが以前勤めていた大学病院、司との離婚後に初めて勤めた職場の看護師だった。
 「いやあ、久しぶりねぇ。牧野さんが、はっちゃんと同じ病院に勤めているとは聞いてたけど」
 ‘はっちゃん’とは泉田のことで、来栖と泉田は前の勤め先時代の同僚というだけではなく、看護学校時代からの親友なのだとか。
 「ええ、本当に。来栖さんはいまも大学病院に?」
 「そ、もう骨を埋める覚悟よ」
 「ええ?ユミ、マジ?」
 「マジマジ。総婦長目指してます!」
 どこまで本気かは知らないが、カカカと笑う来栖と揶揄る泉田の会話に、つくしは微苦笑だ。
 「牧野さんは、今はこっちで再婚されたんでしたっけ?」
 「あ~いえ」
 チラッと来栖が目敏くつくしの薬指に目を留める。
 「……単なるファッションリングじゃないわよね?」
 「うわっ、すごい指輪~っ!」
 「……………」
 職場ではつけられないし、普段もめったにつけることはないのだが、たまの類とのデートの時くらいは…とつけてきたのが仇になったらしい。
 さすがに今更隠すわけにも行かず、困った顔でつくしは曖昧に首を傾げた。
 「婚約指輪とか?」
 「……ええ、まあ」
 とりあえず‘結婚’ならばともかく、‘婚約’くらいは差し支えないだろうと頷く。
 ただし、相手が誰かがバレなければ、の話なのだが。
 「もしかして、すっごい玉の輿?」
 「えっ!?」
 あてずっぽうにしては鋭い指摘に、内心飛び上がる。
 とはいえ、驚きすぎてそれほどあからさまな反応をすることがかえってなかったから、不審に思われるほどではなかったようだ。
 「ホント?!」
 「ま、まさか。違いますよ!」 
 「そうお?私も目利きってほどじゃないけど、わりと装飾品好きだし、けっこう夜勤帰りに宝石店入って衝動買いとかしちゃうタチだからわかるけど、相当値打ちものよね?その指輪」
 「どれどれぇ?婚約指輪ならガーネットとか人造石ってことはないだろうから…え、これ、まさかピンクダイヤなの?2ct近くない?カラーも凄い綺麗だし」
 「何言ってんのよ、軽く2ct超えてるわよ」
 「え~、まさかぁ?だってメインの石だけじゃないわよ、これ」
 どうやら泉田も宝石には詳しいらしい。
 手を持たれてジロジロ見られる始末だ。
 時給を考えれば特に高給取りなわけではないが、長時間労働3Kが当たり前の看護師たちは小金持ちも多く、夜勤明けなど疲労とストレスのピークに脳が自制心を失ってしまい、衝動買いに走る人間も少なくないと聞く。
 むしろつくしの方が、類のくれた指輪にどれくらいの価値が有るものなのか問われてもわからない。
 類がくれるものなのだから、普通の値段ではないことは確かだが、とりあえずは極端にバカでかい石ではないことに安堵していた。
 しかし、どうやら大きさはともかくとして、やはり一人でホケホケ歩き回るには恐ろしい一財産を身につけていたらしい。
 …こんなんつけて、一人でなんて怖くてとても歩けないよ。
 すぐ斜め後ろ側についてくれているSPの存在がなければ、安心して歩ることすらできないかもしれない。 
 「ええ~いいなぁ、本当に玉の輿なんだぁ。有望株の先生をゲットしても、きっとこんなのもらえないよわよねぇ」
 「ははは、まさか」 
 乾いた笑いが空々しい。
 「ね、ひょっとして牧野さんの彼氏って、あの花沢類だったりするんじゃないの?」




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