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「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花③

愛してる、そばにいて0683

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 『久しぶり』
 類からの電話は、いつかのように気軽い挨拶から始まった。
 いつでも、たとえ何年もの間ほとんど音信不通であろうと、互いに言葉を交わし合えば、あっという間にその年月を飛び越え、簡単に以前の交友のままに付き合える親友。
 それがあきらであり、総二郎であり、類だった。
 けれど、類からの挨拶に、とっさに言葉を発することができなかった司の無言が怪訝だったのだろう。
 『……司?』
 「あ、ああ、わりぃ。……久しぶりってほどでもないだろ?」
 『まあね。5年10年単位でほとんど音信不通だった頃を思えば、わりに最近会った方かも』
 電話に出る前の逡巡や屈託とはよそに、話し出してしまえばそれなりに話は尽きない。
 司にしても類にしても饒舌なタチではなかったから、いつもはその代わりのように、総二郎やあきらが間を繋ぐのだが、逆に互いに無言が苦痛でないからこその付き合いだ。
 とはいえ、顔が見えない電話のこと。
 沈黙が続いてしまえば、あとは通話を切るだけになってしまうから、たまの電話では、むしろ逆に直接会う時よりも会話が続く。
 「俺に電話してくるなんて、お前にしては珍しいな。……なんか、プライベートのことで変化でもあったか?」
 我ながららしくもない、探りを入れるような言葉かけ。
 …ズバリと聞いてしまえばいい。
 『お前、仕事用の携帯、電源切ってるだろ?』
 仕事用…と言われて、どうやら類の用件がプライベートではなく、仕事のことだったのだと悟る。
 「ああ。どのみち仕事中の連絡はほとんどが西田が受けてるしな。そうでなくても、電話であれこれ込み入った話なんざ一々受けてらんねぇから、最近は秘書連中を伴っていない時だけ電源入れることにしてる」
 『ああ、それは俺もわかるよ』
 …言わねぇつもりか?
 いや、言う義理さえ感じていないのかもしれない。
 司が逆の立場だったら…言ったかもしれなかったが、やはり言わなかったかもしれなかった。
 どちらにせよ、今の司の立場はつくしにとって何者でもない。 
 そんな自分へ、彼女の新しい男が断りを入れる必要がどこにあっただろう。
 それでも…と思うのは親友への甘えであり、…やはりどこか裏切られたという想い、そして、そうしたものとは裏腹に、当時の類の気持ちはともかくとして、最初からつくしは類のものだったのだから、そこに自分に対する遠慮など全く必要がないのだという自虐的な自覚がある。
 『会社を経由しても、お前の予定は一年先まで真っ黒だからさ。西田秘書にしてもそうそう捕まんないし、とうとうウチの担当部署から、俺の個人ルートをあてにされたってわけ』
 「なるほど。そういえば、大河原が新規採掘を予定している事業に、参画したがっている企業に花沢も名前を連ねていたか」
 『まあ、俺としては自分の管轄でもないのに、一々首を突っ込みたくはなかったんだけど、社長のお声掛りでもあるし、ね』
 「ふん、お前のことだ。誰のお声掛かりだろうが、気が向かなきゃ、わざわざ骨を折ったりはすまい。どうせ、なんか交換条件に美味い話でもあんだろ?」
 『……ふふ、ご想像に任せるよ。お前にも旨味がないわけじゃないだろ?』
 「どうだかな。俺を引っ張りだすつもりなら色つけろよ?」
 『いいよ。どうせ、俺の腹が痛いわけじゃないし』
 「ぷっ、世知辛いヤツ」
 かつては寝てばかりで昼行灯と言われたこともある類だったが、今では司と同じく、海千山千の経済界人たちにも一目置かれる侮りがたい実業家へと変貌を遂げていた。
 一通り仕事の話の段取りを付け、主題を外れてもそれなりに仕事の話を重ねてゆく。
 これが総二郎やあきらであれば、ある程度目処が付けば、あとはお互いの近況なりプライベートな雑談へと移行するのだが、司と類とでは仕事の話を終えれば、あとは雑談とは言ってもさらっと情報交換する程度で、互いにあれこれ話すくらいなら総二郎やあきらから聞いた方がよほど早かったし、特に目新しいものがあるわけでもない。
 けれど―――。
 …あいつらは言ってなかった。
 類とつくしが一緒にいるとは。
 彼ら二人も、よもや知らなかったということがあるだろうか。
 …いや。
 思えばはるか以前、総二郎が不審な電話をかけてきたことがある。
 互いにもはや少年時代とは違う。
 司だけではなく、総二郎も多忙な身の上。
 完全なプラベートな用件だけでは、たとえ総二郎にしてみても、めったには司に電話などかけてはこないから、その時にも仕事に絡めての連絡だったが、妙に屈託を託つていたように思う。
 その時は、総二郎の縁談話が本格的に進んでいたからそのことで憂鬱に感じているのだろう程度に穿ってはいたが。
 そして、それを言うのなら、もう一年近く前のことになるだろうか。
 司がつくしと、NYの空港で予期せぬニアミスを果たした直前のこと。
 司に会いたがっていた類。
 それに、いくら親友の息子だとはいえ、戒のことにこだわっていた類の言動は、彼の性格を考慮してみればいかにも奇妙なことではなかっただろうか。
 一つの帰結がある。
 つくしがNYにいた理由。
 彼女がそこにいた…というだけで、瑣末を無視していた司だったが、彼女ははたして一人でNYに来ていたのか、ということだ。
 …お前もいたのかよ、類。
 もしかしたら、自分を遠く見下ろしていた彼女のそのすぐ背後には、この長年の恋敵である…どんなに運命に抗いつくしを騙しても、けっして勝つことのできなかった親友の姿があったのではないか?
 『ふぅん、俺もまだしばらくは日本だし、そっちはずっとニューヨークだろ?』
 「ああ、そうだな」
 父や母・楓が道明寺財閥を統率していた時代はすでに通り過ぎ、現在の財閥を率いているのは司だった。
 そして、道明寺ホールディングスの本拠地はアメリカ。
 以前とはもはや司の立場も地位もまるで違うものだ。
 日本に出張することはあっても、もはや日本に居を構えて長期間滞在することはないだろう。
 そして、類は日本にいる。
 ―――つくしもまた。
 いずれ類も花沢物産の後継者として、世界各地へと派遣される日が来るに違いなかったが、その傍らにはつくしが付き従うのだろう。
 ―――つくしが。
 彼がこの世で唯一愛する女が。
 …っ!
 『じゃ、またしばらく連絡できることもな…』
 「類っ」
 『……………』
 込み上げる嫉妬と憤り…そして悲しみの衝動に、類の言葉を遮り、けれど続く言葉が出てこない。
 喉が詰まって、声が出なかった。
 …聞いてどうする?
 そんな思いとは真逆な衝動に、たまらず司が再び類に呼びかける。
 「類っ」
 『…なに?司』
 「お前、お前……俺に、何か言うことがあるんじゃねぇのか?」
 「………」
 そこに、類の傍らには、つくしが。
 …あいつが、お前のそばにいるというのか。




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