「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花③

愛してる、そばにいて0681

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 戒のライナー少年への暴行は、不問に付された。
 というよりは、そもそも戒の行った暴行自体が存在しないものとなったのだ…その暴行を受けた本人によって。
 「……無茶するよ」
 「目玉をくり抜いてやったとでも言うならともかく、骨と骨の間の肉にボールペンを突き刺してやっただけだ。運悪く神経にでも触ってなきゃ、すぐに完治するさ」
 「はぁ」
 ため息をついた少年のそれが、唯一戒への抗議だったか。
 見た目は白人そのものの少年マックスは、他の少年たちよりはまだ戒に遠慮のない物言いをできたが、それでもなんでも言えるわけではない。
 そして、たまたまライナーへの暴行現場にいなかったことから、マックスは暴行には加わらなかったが、それでもおそらくは、彼もまたその場にいれば、やはり他の少年たち同様暴行に加わらざるえなかっただろうし、そうであれば他の少年たちと同じく今頃謹慎処分を食らっていただろう。
 「勘違いするなよ、マックス。ヤツが勝手に自分で自分の手にボールペンを突き刺しだただけの話だ。そうだろ?」
 「……そうだね」
 別に戒がそう証言するべく、誰かに示唆したり、強要したわけではなかった。
 ライナーが自分でそう教師に自供し、周囲の少年たちもそれに迎合しただけのことで。
 誰が見てもありえないことだったが、それでも怪我を負った本人がそう言うのだ。
 他の誰もそのことに対して、異議を唱えられようはずもない。
 『俺が…フザけてて、誤ってボールペンを手の甲に突き刺してしまっただけです』
 そして、自身が受けた暴行に対しても、仲の良い仲間同士、度の過ぎた格闘ゴッコの果ての怪我だったと。
 誰が見てもリンチの痕に他ならなかったし、名の知れた名門私立校のこと、これまでは表立ってそうした暴力事件はそうなかったが、それでもそれに近いことを学校側は見て見ぬふりをしてきていた。
 もちろん学校側にしろ、教師たちにしても、ライナーの自供のそうした矛盾や欺瞞に気がつかないはずもない。
 たとえ暴力ではなくても、ストーリーキングの刑など、重篤なセクシャルハラスメントによるイジメもいいところだ。
 しかし、戒の罪が不問にふされた理由の第一は、そうした学校側の姿勢よりも何よりも、別の大人の事情…ライナー少年の親が、一口にセレブとは言っても、道明寺財閥の足元にも及ばない階層の出身であったことが大きかったに違いなかった。
 ましてや現在戒は、道明寺財閥の後継者というだけではなく、父の再婚によって大河原財閥の一族にも数えられている。
 場合によっては、大河原家の後継者にもなりうる立場なのだ。
 …バカバカしい。
 戒的にはそうしたことは瑣末なことで、ライナーが格下の家柄の人間だから制裁を加えたわけではなかったし、いっそのこと、道明寺財閥や大河原財閥ですら凌ぐとんでもない家柄のヤツにでも怪我を負わせ、父や祖父母の度肝を抜いてやるくらいなことをしでかすのも悪くはなかった思いもある。
 「Ready... set hut!!」
 ふいに耳についた掛け声と、うおおおおっと言う雄叫びに注意を惹かれ、なんとはなしに戒が視線を向ける。
 「…………」
 「珍しいね、戒がアメフトの練習に興味を示すなんて。汗臭いスポーツなんて興味ないって言ってなかったっけ?」
 「ただ目を向けただけだ」
 「そう言わないで、どうせなら、ちょっとくらい見ていかない?少しは興味が湧くかも知れないよ?今年のチームはかなり調子が良くて、メンバーも近年にないベストな人材を確保できたって、うちの兄貴も言ってたし」
 「お前の兄貴って、ハイスクールだろ?」
 「去年はジュニアハイのキャプテンだったから、コーチに頼まれて何くれとなくこっちのチームにも顔を出してるんだ」
 「ふぅん」
 マックスの言うとおり、戒は汗臭いスポーツになど興味はない。
 という以前に、縦だけでなく横幅もでかい連中の中にあって、肉弾戦のスポーツで自分が勝てるとは思えなかった。
 負けず嫌いなだけに、戒は勝てない勝負はしない。
 狂犬だと言われ、無鉄砲なところなあった若き日の父とはそこは真逆で、戒は計算高かった。
 だからこそ体格に勝る連中の中にあってでも彼は崇められたのだし、たとえクレイジーと呼ばれたにせよ、自分の地位を確立することができたのだ。
 生き抜くことができた。
 …弱者に生きる道はない。
 特にこの弱肉強食のアメリカ社会では。
 ジュリオはまたも練習をサボって、家族の為に今日もアルバイトに励んでるのだろうか。
 練習しているジュニアハイスクール生の中に、ジーナの弟の姿はなかった。




*****




 「電話?あったのか?」
 「はい」
 積み上げられた書類の山に一段落つけ、疲労に重い目頭を揉み込むようにして司は目を閉じた。 
 「メルフィHD社長との会談までにはまだ時間がございますから、少し仮眠なり、休憩をとられては?」
 「ああ…いや、いい。それより、電話の件だ。例の報告書、昨日の分を寄越してくれ」
 「…………かしこまりました」
 充血した目に過労が出ていたが、司がそう言う以上、若き日のひよっ子時代ならばともかくとして、側近中の側近とはいえ、部下である西田にそれ以上忠告できる言葉などあるはずもなく、内心で眉根を寄せつつ、種別に分別した棚から一通のA4封筒を取り出し司へと差し出す。
 どちらにせよ、司にとって今もっとも大きな関心事は、この封筒の中身であることは間違いないのだ。
 小さく息を吐き、いささかだらしない格好ではあるが、引いた執務椅子の背もたれに寄りかかって、楽な姿勢で司が封筒から中身を取り出した。
 写真と、びっしりと書き込まれた英文で構成された報告書を次々と捲っては、顔色一つ変えることなくざっと目を通してゆく。
 「……ふぅ」
 若き日の、それこそ荒れて野放図を繰り返してきた時代から司を見知ってきた西田でさえ、そうそう見たことがない司の意気消沈した様子に、よほどの厄介事なのだと察せられた。 
 手にした書類を封筒ごと西田へと差し出し、司が顎をしゃくる。
 その言外の指示を受け取り、西田が封筒から出されたままの報告書を司と同じように繰り、内容を確認してゆく。
 ギィ。
 執務椅子から立ち上がった司が、明るい日差しを室内へと差し込ませているガラス窓へと歩み寄って、見事な眺望を見せている高層階からの景色へと顔を向けた。
 しかし、今の彼はニューヨークの街並みなど見てはいない。
 「やっぱ、このまま…ってわけにもいかなかったか」
 「………社長」
 「悪いが、近々俺のスケジュールを空けてくれ。プライベートのことで、どうしても時間をとる必要ができた。…お前にも世話をかける」
 西田を通して、自分に会いたいと言ってきているジーナにどうしても会う必要がある。




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