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「夢で逢えたら…全207話完+α」
第四章 夢の続き②

夢で逢えたら177

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 今日は冴子の独白です。
 これで彼女の行動の謎は解けるでしょうか?
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 彼を初めて知ったのは、外交官だった父について10年間過ごしたイギリスから帰国し、英徳学園の中等部に編入した13才の時だった。
 英徳に君臨する尊大な王様。
 学園内で見かける彼の姿は、これまで冴子が見てきた名家の子息たちより優美で気品があり、そして美しかった。
 誰もが彼に心酔し、崇拝した。
 それなのに、彼の目の中にある荒んだつまらなそうな色が冴子の目を特に惹いた。
 これまでも、司のような生まれや美質を持った少年たちは何人も見てきたけれど、彼のようにその幸運を甘受することなく、人生に倦み疲れたような人間には出会ったことがなかったから。
 次に出くわしたのが、まさかの路上での喧嘩の現場。
 司のような立場にある少年が、ちまたのチンピラよろしく拳と拳で殴り合い、映画の悪漢よりも凄まじい悪鬼の表情で嬉々として許しを乞う少年たちを痛めつけていた。
 冴子と一緒にいた少女たちは怯えて、怖がったいたけれど、学園内でたまに見かける時にしているイラついてただ不機嫌そうにしている
よりは生き生きしていていいと彼女は思ったものだ。
 いま思えば、あれが冴子の初恋だったのかもしれない。
 けれど、高校に進学する直前、再び冴子は父の海外赴任について北欧地域に転出することになり、司と直接関わる機会はなかった。
 だが、スウェーデンで高校、イギリスのケンブリッジで大学時代を過ごし、単身渡米して道明寺ホールディングスのNY本社に就職
したのは、どういう心境だったのか。
 自分のくだらない乙女チックな感傷を鼻で笑い、冴子は病室のベッドを抜け出し、窓辺から覗く月を見上げる。
 司への想いは、月を愛でる気持ちに似ているのかもしれない。
 自分の物にならない、だが、誰に物でもないこの美しい天体への憧れ。
 道明寺に就職した時には、ただこの世界を席巻する大企業の中で自分の実力を試し、野心をもって挑んだはずだった。
 それが、十数年の時を得て、再会した司は、あの時の姿のまま、いやそれ以上の蠱惑をもって冴子の前に再臨した。
 …牧野つくし。
 中学時代に、1度か2度、見かけたことがあるくらい。
 あの司を一変してしまった女の不在は、やはり再び司を変えてしまっていた。
 それでも、冴子は再会した司に満足していた。
 誰よりも鋭利で冷徹で、不屈のカリスマ。
 心のどこかで彼女の初恋を粉砕した司の屈託のない笑顔を忘れずにいながら、彼に溺れ、自らの野心を彼に重ねた。
 司を支え、司を盛り立てることは自分の野心を満たすことにも繋がる。
 そんな冴子の滅私の心情が司にも通じたのだろう。
 司も彼女を重用し、いつしか男女の関係を持つようになっても、男女の愛憎での繋がりでなく、性別が女だから肉体的なコミュニケーションを含んだと言うだけの臣従という関係に終始してきた。
 司の信用も信頼も、冴子の服従も崇拝も。
 完璧な形での現在だったはずだ。
 それなのに、まさか、再び、あの女が…牧野つくしが司の前に、自分の前に現れるとは。
 ことの始まりは、 司に叛意などなかったが、司に仕えて十年近い年月の間で、激変ともいえるほどの彼の変化に脅威を覚えた。
 5年前に洲崎麻紀乃が現れた時も、司に多少の変化があったが、逆に麻紀乃の容姿に執着する司を見て、彼にも人間らしい弱さがあるのだと、意外に思うと同時に彼を支える自分の意義を再確認し、誇らしく思ったものだ。
 麻紀乃への嫉妬など一片もなかった。
 ただの身代わり、司にとって牧野つくしに似た抱き人形にすぎないのだと、瞬時に悟ったから。
 案の定、麻紀乃の人格や個性に辟易した司は、麻紀乃にほとんど執着を見せなかった。
 時折慰めに、麻紀乃の容姿を愛でることもあったようだが、NYに呼び寄せようともせず、湯水のように金や贅沢を与えるだけ。
 愚かな女はそれを愛情と勘違いして、自分にまで嫉妬を向けてきたが、冴子にとって麻紀乃は、顔の周りを飛び回る羽虫のようなもの。
 そして、他の何人も存在する女たちも、司にとって肉欲の捌け口と、仕事を円滑に進めるための駒の一つにすぎない。
 自分もまた似たようなものであるにせよ、誰のモノにもならない司に満足していたというのに。
 すでに、弱味を握り、自分の魅力と肉体で確保していた司の第一の秘書の山之内が命じられた調査の詳細を横流しさせ、キャサリン・マーベルの身上書を手に入れた。
 司の秘書になるおりに、彼の手足として円滑に動くために西田から司のプロフィールを与えられていた以外に、冴子自身も司のことに関しては公式に発表されている以外のことも個人的に調べている。
 もちろん、司が高校3年生の時に暴漢に刺され、それ以来彼の経歴に出てこない『牧野つくし』、司が冴子の知らないどこか子供ぽい顔でまとわりついていた女についても調べてあった。
 だから、キャサリン・マーベルの調査書を読んだ時、衝撃を感じた。
 なんだ、この女は。
 司が興味を持ち、再び、冴子の知らない顔で執着しだした女は。
 もちろん、牧野つくしと重なる経歴はない。
 容姿も出身地も、国籍さえも違うこの女が、一時期…牧野つくしが南米・ブラジルの街で泊まったホテルに同時期に居合わせ、同じ火災事故に居合わせた偶然から始まる、この不自然さは。
 その不自然さに冴子は、司が調べようとしなかった些末なことを掘り下げて調査しだした。
 道明寺のルートを使えば不可能はない。
 そして、その道明寺の力を存分に使える立場に冴子はいる。
 マーベルが、火災事故から二年間、闘病生活という空白を持ち、その間に何度もその傷を修復する整形手術を受けたという事実。
 事故で失った目を移植で再び得て、そのために目の色が元々の色とは異なるようになってしまってもいるし、喉も火事の影響で痛めて、声質そのものもかわっているらしい。
 まるで別人だ。
 おそらく、マーベルの親しい人にとっても、現在の彼女は過去の彼女とは違和感を感じる存在へと変化しているのだろう。
 そして、それまで実母が日本人だといえ、一度も日本の地を踏んだことがなかったはずなのに、事故後、突然の日本への渡航。
 それも牧野つくしの家族が住んでいる土地に数日滞在している。
 その後、体調が回復しだすと、一人息子のレンを連れ、おそらく父方から提供されたと思われるNYのマンションへとロスアンゼルスから転居し、なぜか『セリ』というファーストネームではなく、『キャサリン』というセカンドネームで世間では通称させた。
 さらにおかしなことに、ロスアンゼルス在住の実母とはその母が亡くなるまで交流があったようだが、手術前につきあっていた友人たちとはいっさい交渉を絶っている。
 奇妙というよりも、それらの事実は一つの確信を冴子にもたらした。
 冴子のその確信を後押しするように、この十数年ほとんど現れることのなかった花沢類までもが、司やマーベルの近辺へと現れ、司同様、マーベルに付きまとい始めたのだ。
 あの花沢類が!
 司と同じく、人に慣れない野生の獣のように孤高を好み、『牧野つくし』だけを愛した花沢類が。
 「…いまさら、死んだはずの女が現れるなんて」
 たまらず冴子は震える両手で顔を隠し、身内を荒れ狂う激情を堪える。
 手の中の怜悧な顔は青ざめ、噛みしめる唇は今にも切れてしまいそうだ。
 その般若のように嫉妬で歪んだ醜い顔が見たくなくて、堪らず冴子は鏡のような窓ガラスから顔を背け、カーテンを引いた。
 何度、何度、あの女を司の元から排除したいと願ったことか。
 目の前で、何の疑いもなくたつ女の背を押し、司の前から永遠に消し去りたいと思ったことか。
 最初は、穏便に済ませるつもりだった。
 自分の劣情というよりは、つくしに執着し、壊れてゆく司を押し留めたいという気持ちが先立っていたからだ。
 あの女が司を弱くする。
 高校3年生の時の事件の時に、司の傍につくしがいたと聞き、『だから、あの道明寺さんが隙を見せたんだ』と思った時同様、つくしの存在は司を弱くし、隙を作らせると冴子に危機感を抱かせた。
 だから、冴子が動いた。
 だが、絶対に司に疑いを持たせてはいけない。
 自分の思惑にも、つくしの正体に関しても。
 まずは、司の命じたつくしの調査書を改ざんした。
 マーベルがつくしだと思わせるような記載を削除し、極力遠ざけ、別に判明したショッキングな背景…マーベルの一人息子レンの出生の秘密を意図的にクローズアップした。
 つくしの方には、司の元から離れなければという危機感を抱かせる方面へと示唆する方向へ。
 麻紀乃同様の贅沢な夢を見ているわけではないとは思ったが、司は魅力的な男だ。
 どんな女も司に求められれば惹かれないはずはない。
 くだらないと思いつつ、麻紀乃の稚拙な嫌がらせに便乗し、つくしの顔を合成したアダルトDVDや写真を送りつけることで脅威を感じさせたのだ。
 『司の傍から離れなければ、嫌がらせばかりか、自分のキャリアや居場所を失うかもしれない』。
 あえて不出来な作品を送り付けたのは、あまりにリアルなものよりも脅迫者の意図を察してくれるだろうという心理的な効果を狙って。
 麻紀乃の嫌がらせでは、単純に嫌がらせの域を出ず、こちらの意図を察してくれないだろうという意味合いのものだったが、つくし自身の気持ちはともかく、司の執着心がその冴子の思惑を覆した。
 それでも初めの頃は、司に強引に囲い込まれた彼女に同情してもいた…心の奥底では平穏ではなかったにしろ。
 だが、次第に、司の執着が冴子の思惑を超えて深まっていくのが、傍にいる冴子にも伝わって行った。
 司が他の女との交渉を厭う様になった。 
 つくしの身代わりとして傍に置いていたはずの麻紀乃にさえ、見向きもしなくなった。
 つくしを引きずり寄せ、傍に縛り付けようとした司の目に映っていたのは、単なる執着でなく、自らさえも滅ぼしかねない狂おしいほどの恋情だと悟った時、冴子の怜悧な頭脳が感情に支配された。 
 許せない。 
 赦せない。 
 誰のものにもならないはずの司が、たった一人の女の為に身を亡ぼすかもしれない恋情に身を焦がし、たった一人の女の足元に額ずこうとしている。
 その憤りに目が眩んだちょうどその時、つくしが恐れる炎を演出するシャンパンタワーと、彼女と重なるようにつくしへの嫉妬に身を焼かれる麻紀乃が現れたのだ。
 あの時の冴子の策略は、彼女が至高のものとしてきた冷静な判断力の賜物ではなかった。
 女の醜い嫉妬と憎悪が生み出した愚かしい暴挙。
 自分に嫉妬する麻紀乃が自分を注視しているのに気が付き、そっとそそのかかした。
 麻紀乃は自分が謀略するまでもなく、簡単に思惑どおりに動き、つくしは炎の脅威の前に倒れた。
 だが、それが何になったのか。
 司の思いをさらに深みへと進ませ、つくしへの執着を自覚させただけ。
 冴子は自嘲する。
 深みにはまっているのは自分の方だ。
 司への恋慕と執着に振り回され、元の自分はどこにもいない。
 …どこかで自分を疑い始めている司の疑惑を反らすため、つくしを助け出し、自分は何食わぬ顔でこの場に戻ってきた。
 だが、あの一瞬。
 つくしをウーゴの元から連れ出し、司の元へと返そうとしたあの時、傍に余人がいなければ、飛び交う銃弾の中に突き飛ばしたいと言う衝動を押さえることができただろうか。
 つくしを叩きのめし、司を惑わすその眼差しをくりぬき、その細い首に手をかけ地獄の底へと追いやりたいと言う願望を実現せずにいられただろうか。
 …愛とは憎悪に似ている。
 そして、その愛憎の汚泥の中にハマり込んだ自分は…。
 暗闇の中、冴子は頬を伝う涙の感触に、目を瞑った。

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