「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花③

愛してる、そばにいて0677

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 実際、疑われても仕方がないところではある。
 もちろん、類との関係を進めたのは隼斗との結婚生活に終止符を打ち、離婚届を出してからのことだが、それでも見る人によっては、千恵子のように穿つ人間がいてもおかしくはないことだ。
 「どんなにご大層な理由があったって、そういう経緯でくっついて、上手くっていうのはごく少数の人だけなんだからね。ましてや、花沢さんっていったら、あの大企業の御曹司でしょ?」
 玉の輿目当てで娘を英徳に入れた母親にしては、ずいぶん真っ当な物言いだが、そんな金の亡者のようなところのある千恵子でさえ、やはり不倫に対しての見方は手厳しい。
 だが、
 …不倫じゃない。
 少なくてもつくしと類、当事者の二人には明白なことだ。
 「不倫じゃないよ」
 「じゃあ、なんなのよ?性格の不一致って。そんな性格なんてものは、結婚前からある程度わかっていたことなんじゃないの?」
 「はぁ〜、もう終わったことだし。…第一、お母さんには関係ないことなんだから、その話はもういいでしょ?」
 「……それはそうかもしれないけど」
 不満げな顔は、おそらく関係ないと断言されたことに対してだろうが、いくら厚顔な千恵子にしても、強く言うには疚しさや罪悪感もあるのだろう。
 「まあ、終わりよければすべて良しって、言うからいいけどね」
 「……………」
 人生は死ぬまでが人生で、どの地点であっても終わりとは言えないはずだが、おそらく千恵子の認識では、将来性に優れた男性と婚約したことを、人生の最終目標地点だと言いたいのに違いない。
 それで言うのなら、司と結婚した時もまたそう言えたのだろうが。
 「………あのさ」
 そんなことよりも、つくしにがここを訪れた目的は、ただ長く断絶していた両親に会いに来る、それだけではなく他にもあった。
 「なぁに?…あら、ちょっと薄くなっちゃたわね」
 啜ったお茶の湯呑を眺めて顔を顰め、そんな呑気なことを言っている千恵子の顔を見ながら、つくしは何度か唇を舐め言葉を選ぶ。
 しかし、結局はどう言いようもないのだからと、心を決め口火を切った。
 「あのさ、戒、会いに来たんだって?」
 「え?」
 さすがにつくしの口から飛び出した名前に、千恵子も驚いたらしい。
 びっくりした顔があまりに自分に似ていて、思わずつくしも失笑を洩らしてしまう。
 「進から聞いたんだけど」
 「ああ、そうよね。……うん」
 「なにか話した?」
 あらかたは進からも聞いていた。
 案の定、困った顔の千恵子が、否定に首を横に振る。
 「…そっかぁ」
 意気消沈するほどではなかった。
 別に何を期待していたわけでもない。
 それに、もし戒が会いに来ていて、たとえ千恵子や晴男に会っていたとしても、つくしと司の馴れ初め…過去の経緯や離婚の際の取り決めを考えれば、会えて良かったという再会のはずもなかった。
 …この人たちじゃ、あの子に上手く説明できたとも思えないし。
 自分でさえ、戒と再会して何かを聞かれたとして、上手く言葉を選んで彼を納得させられるとは思えないのだから。
 「あんたは、戒君とは?」
 「……会わない約束だったから」
 「そ、そう」
 「お母さんたちも、そう言われてるんでしょ?」
 …司に。
 目を泳がせた千恵子に、つくしがわずかに微苦笑する。
 けっして皮肉を込めたつもりではなかったが、千恵子は責められたと感じたのかもしれない。
 「あのね、その…ね」
 「いいわよ、隠さなくても。今のこの生活を見れば、ある程度は私だって、司とどういう取り決めがあったのかわかるし」
 「……今は援助を受けていないわ」
 それは意外なことだったが、しかし―――。 
 チラッとつくしを仰ぎ見て反らした母の視線に、多少は救われる気がするのは、やはり両親へのわだかまりをいまだ完全には捨てきれていないからだろう。
 「え~、まあ、つい最近からだけど」
 「生活は?」
 「これまでに、十分すぎるほどの慰謝料をいただいたから」
 「ああ」
 貰い続けてはいないが…といったところか。
 「あんたも貰ったのよね?」
 「まあね」
 受け取りを拒否することができず、生活の目処が立ってから返却しようとすれば、それも叶わず、結局は継子の陽太の関係から、善意のボランティア団体を支援するという目的のためにすべて寄付してしまったが、それをわざわざ千恵子に言うつもりにはなれなかった。
 そのことが、また新たな亀裂を生んでしまう可能性もある。
 彼女もまた司からの慰謝料を受け取ったことを否定しなかったことで、ホッとした顔をした千恵子から視線を反らし、つくしはすっかり冷めてしまった湯呑のお茶を啜った。
 生温いお茶は、おそらくかつての牧野家で愛飲していたようなものではなく、高級な茶葉を使用しているのだろうが、この家の人間と同じで、どこかチグハグとしていて、せっかくの茶葉も生かしきれていない。
 「…あのね」
 「うん?」
 今度は千恵子が言いたいことがあるらしい。
 俯いてしまっていたつくしに、千恵子が遠慮しいに口を開く。
 「もしかして…なんだけど」
 「……………」 
 「前の旦那と別れたのって」
 あくまでも隼斗との離婚から離れてくれない母の執拗さに、つくしがうんざりとため息をつく。
 「あのさ、だから」
 「花沢さんが原因じゃないって言うのなら、もしかしてその旦那が、あんたの…あんたが道明寺さんからいただいた財産が狙いだったから、とか、そんなことじゃないの?」




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