「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花③

愛してる、そばにいて0676

 ←愛してる、そばにいて0675 →愛してる、そばにいて0677
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「ふふふふ」
 「…なに?」
 気が付けば含み笑って自分を見ている千恵子を、つくしは憮然と睨んだ。
 潮垂れて不幸そうな母を見るよりは、もちろんずっといい。
 だが、それはそれとして、つくしは彼女の上機嫌があまり嬉しくなかった。
 自分との再会が嬉しい、たぶんそれもあるのだろうが、母の機嫌の良さがいったい何に由来するものか、鈍い自覚のあるつくしにも容易に察せられたからだ。
 …この人は。
 「そんな顔しないでよ」
 「そんな顔?」
 一応は母の方でも、そんなつくしの今の心情に気がついたらしい。
 困ったような苦笑には、多少の疚しさが含まれていた。
 しかし、それでもおそらくは彼女が面と向かって非難したとしても、それで性根を変えるような母でもない。
 かえってかつてのように、つくしに現実を見ろと諭すばかりだろう。
 …争いたくない。
 できることならば、再び母と袂をわかるような事態は避けたい。
 欲得に塗れた卑小な両親への反感と、久方ぶりの再会に涙を流して喜んでくれた彼らへの情愛、二つの相反する思いにつくしは緩く首を横に振り溜息を一つついた。
 「ちゃんと自分を幸せにしてくれそうな素敵な男性を、娘が選んだことを、喜んではダメだってあんたは言うの?」
 「お母さん」
 「あんたは道明寺さんとのことや、…その後の人との結婚を反対したことに、まだ腹を立てているのかもしれないけどね。あたしたちだって、あんたの幸せを願えばこそだったのよ。どこの世間に、我が子が可愛くない人がいるっていうの?」
 「……………」
 千恵子の訴えは、つくしにしてみても我が事としてわからないことではなかった。 
 千恵子も母親なら、つくしもまた、‘戒’という我が子を持つ一人の母親だったから。
 「何も言ってないでしょ?」
 「…だって」
 つくしに親心をわかってもらえないという悲しみにか、…それとも悔しさからだろうか、涙ぐむ千恵子を見ていられず、つくしは母から顔を背けて彼女にハンカチを押し付けた。
 「泣かないでよ」
 「泣いてなんかいないわよ」
 あきらかな強がりは、自分と同じ。
 ごめん、と言ってしまいたい衝動を堪えるのが辛い。
 けれど、哀れみや罪悪感、愛情からであっても、そうしてしまうことはとても今のつくしにはできなかった。
 自分でも意固地だと思うけれど、それでも謝ることは、母のこれまでの主義主張を認めて、自身の訴えこそ誤っていたのだと認めてしまうことになってしまう気がして。
 泣いていないと意地を張った千恵子だったが、それでもつくしから受け取ったハンカチで涙を拭いて、テーブルの上のティッシュボックスから一枚引き抜いたティッシュで、盛大に鼻を噛み出す。
 「ジュビーッ」
 「…もうっ、汚いなぁ」
 「家族の前でまで、いちいち気取ってなんかいられないわよ」
 見栄っ張りな千恵子の正直な物言いに笑ってしまう。
 それで重かった空気が、完全ではないにしろ和らいだ。
 そんな些細なことで和めることこそが、他人ではない、血の繋がった親子というものなのかもしれなかった。
 「前の…って、言っていいのかわからないけど」
 「………」
 「あんたが岡山までついていった人。あの人とはもう正式に離婚してるのよね?」
 隼斗との結婚生活の間、つくしは千恵子や晴男とは完全に没交渉だった。
 二人がそう望んだわけではなかったが、あくまでも娘ではなく、道明寺家側に立とうとする両親がつくしは許せなかったし、受け入れられなかったのだ。
 だから連絡を絶った。
 当時の仕事を辞め、岡山へと引っ越したことは千恵子にも知らせていたが、その後のことは進にも口止めしていたし、両親から連絡されたくないと、連絡先さえも教えさせなかった。
 「1年?」
 「なにが?」
 「結婚生活よ」
 別に隠すことじゃない。
 けれど、言えないこともある。
 「いまさらな話なんだけどね…」と、前置きされ、どんな男だったのか、どういう生活を送っていたのか、そして、なにが原因で離婚したのかなどと、千恵子に根堀り葉堀り尋ねられる。
 「何が原因と言われても、…ん、特にこれといった理由があったわけじゃないんだけどね」
 一言で言うにはあまりにいろいろありすぎて、うまく表現できない。
 たしかにもう司を憎んではいない。
 今は隼斗に対しても割り切った気持ちでいる。
 しかしだからと言って、隼斗がいわば司の手先として、彼に繋がっていたことに関して完全にわだかまりが消えたわけではなかった。
 今も思うところがないわけではなく、正直やはりかなり複雑だ。
 …たぶん、司は私を見張っていたわけじゃない。
 そうは思いつつも、そうではない可能性もまったくないわけではなかった。
 司という男をよく知っているつもりでも、それはあくまでも過去の彼のことなのだ。
 その後のつくしとの相克で、司もまた変わったかもしれず、どう変わったのかは、彼女には知りようもないことだったから。
 …私も変わった。
 変わらないものなど、この世には何一つない。
 つくしが変わったように、あるいは高校時代の彼らとは変わったように。
 昔と変わらないように見えるこの母さえもが、やはり変わっていた。
 それは内面もあるだろうし、見た目の…シワの一つ一つまでもが、やはり歳月を感じさせ、きっと相対する両親にしても、彼女を見て思ったことに違いない。
 …お互い歳をとったよね。
 「まあ、あえて言えば性格の不一致。そんなところかな」
 「…性格の不一致?あんたが?」
 千恵子にしても、生真面目でお人好しなつくしの性格をよくわかっている。
 不審そうなその顔は納得していない。
 「まさかとは思うけど」
 「…うん?」
 「花沢さんのことが、原因でってわけじゃないでしょうね?」
 「は?」
 あまりに思わぬことに、つくしがポカンと千恵子の顔を見返す。
 それで多少は母の疑惑も晴れたようだが、それでも小さく一つため息をついた顔は、まだ納得してはいなかった。
 「あんな素敵な人が相手だったら、血迷っても仕方がないとは私も思うけれどね。不倫はダメよ、不倫だけはね」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0675】へ
  • 【愛してる、そばにいて0677】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0675】へ
  • 【愛してる、そばにいて0677】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘