「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花③

愛してる、そばにいて0665

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 「誕生日パーティ?」
 「そう。さすがに結婚式や50周年記念の時みたいに、数日間に渡る大規模のものは執り行わないけど、今年は復活させるの」
 すでに一ヶ月を切っている。
 準備等に関わることのない戒が知らされないのはそれほどおかしなことではないが、それでも司のただ一人の息子として、父親の誕生パーティに出席するのは当然のことのはずだ。
 そうであれば、父親から直接伝えられるべきだと思うのは間違いか。
 …別にだからってどうってことない。
 自分自身が望んだことだ。
 父親との間に壁を築くことは。
 戒の微妙な表情に、「あ」と滋も気がついたらしい。
 「えっと、ここのところ司も多忙でまたニューヨークにいないじゃない?来週頭に一度こっちに戻ってくるはずだから、その時に伝えようと思ってたんだと思うわよ?」
 「いいよ、妙な気を使わなくって。そもそもあいつが多忙で留守がちなのは、いまに始まったことじゃないだろ?」
 「……まあ」
 フォローしようとしたようだが、フォローになっていない。
 本当に重要なこと―――父親にとって重要だと思われることは、即座に伝達されている。
 それがなされていないということは、司にとって自身の誕生パーティを開催することを、息子に伝える必要などそう重要ではないということなのだろう。
 …俺だって、別に聞きたくもないさ。
 できることなら欠席したいくらいだ。
 「……でも、去年まではそういうのは控えてただろ?」
 「それはね。どこも台所事情の苦しいこのご時世だし、イイ歳した男の誕生日祝いもないだろうってヤツだったから」
 もちろん、それだけではないだろう。
 近年、道明寺家の醜聞が続いている。
 戒の出生。
 司自身の醜聞―――庶民の女を鳴り物入りで嫁にもらっておきながら、愛人を家庭内に引き入れ、妻を叩き出したことに始まって、その後、後妻に迎えた愛人の生んだ次男が不慮の事故死を遂げた。
 そして、その死にも様々な黒い憶測が社交界のみならず世間にも流布している。
 あくまでもプライベートのことだったから、株価等に影響することはなかったとは言え、誰が聞いても聞こえの良い話のはずもなく、そうした噂を助長するような派手な催しは控えていたということもあるのだろう。
 だが、滋との結婚によって、そうしたお喋り雀たちの口さがない噂話さえも捩じ伏せ、今や道明寺家はかつて以上の繁栄と発展を遂げることに成功した…そういうことなのだ。
 それを今年から再開するということは、道明寺家の威信の回復を内外に誇示することが目的なのに違いなかった。
 「私からすれば、自分の祖父母に会うのに、一々そんな機会を狙ったりする必要もないと思うんだけどねぇ」
 つい自分の中の物思いに耽りかけていた戒が、そんな滋の彼の顔色を窺うような言葉かけに、我に返って目を瞬かせる。
 「せっかく車で30分もかからない近場に住んでるんだから、気軽に好きな時に遊びに行けばいいんじゃないの?もし気後れするようなら、私が一緒に行ってもいいし?」
 まるでごく一般庶民のような感覚の物言いをする滋にとって、身内とはそれだけ気安く温かな存在なのだろう。
 …親族に命を狙われて、愛もない結婚を選んだくせに。
 嘲る気持ちもないわけではないが、しかし、戒は滋のそうした妙に無邪気な明るさを嫌いではなかった。
 ただ苦手なだけで。
 「なんなら、今日は…ちょっと無理だけど、来週あたり一緒にロングアイランドのお屋敷に遊びに行ってみる?」
 「冗談よせよ。俺があんたの同伴に付き合うのは、あくまでも俺の気まぐれとあんたへの義理を果たす為なんだからさ」
 「…でもさ?」
 「誰が、誰に会いたいって?勝手な憶測して、俺に妙な先入観持ったり、無駄に詮索するのはよせよ?必要以上に俺に関わるな。あんたは自分の娘のことと…旦那の思惑だけを気にしていればいい」
 ツンを顎を反らせて、あとは滋を一顧だにすることもなく戒が食堂を後にする。
 その背ばかりが伸びて、まだまだ華奢な後ろ姿を見送った滋が、小さくため息を付き苦笑した。
 「まったく、親子揃って口を開けば同じようなこと言うんだから」




*****




 トゥルルルルルル、トゥルルルルルル、トゥルルルルルル―――プッ。
 『……戒?』
 「うん」
 やっと繋がるようになった携帯の通話に、戒が一人我知らず小さく微笑む。
 彼女と知り合ってからこっち、ほとんどが料金不払いによる不通か、着信に気がついても某かの後回しにされて、応答してくれないことがほとんどだったから。
 ここのところは、彼女自身の生活にも多少余裕があるからだろう。
 わりに携帯に出てくれることが増えた。
 いや、おそらく生活云々のことだけではなく、ジーナにとっての戒の位置づけが、以前よりも格段に上がったことが最も大きな事由なのは間違いない。
 …だって、もし電話に出られなくても、後で必ず連絡くれるようになってる。
 それが電話にしろ、メールにしろ、少なくても彼を愛玩用のペットか何か同様に見ていた頃にはなかったことだ。
 「そっちはどう?上手くいってる?」
 『もうっ、毎回そればっかり。あたしをなんだと思ってるのよ!ペットシッター歴は長いんだって、何度も言ってるじゃない!!』
 だが文句を言うジーナの声音も、本気では怒っていないのがあきらかな笑い含みのものだ。
 心配性からというよりも、何を話したらいいのか電話をしてみたものの、話のきっかけに困っている戒の毎度の挨拶変わりのセリフであることは、ジーナにもわかっているのだろう。
 『でも、ホントに良かった。いくら動物好きだって言っても、あたしは専門の訓練を受けたとかじゃないし、どうしてもごく限られたおウチの散歩役を見つけられるくらいで、…けっこうバイト先に困ってたから』
 「うん」
 滋がジーナに紹介したのは、大河原系列の会社が支援しているボランティアと教育を兼ねた施設のうちで、盲導犬や介助犬、聴導犬協会の宿舎の清掃や飼育管理の補助といった雑用の仕事だ。
 本来ならある程度の学歴(と、いっても高卒程度だが)も求められるのだが、ジーナは滋の顔で、年齢相応の働きで行える範囲業務のいくつかを任されていた。
 時給的に言えば、いくら滋の紹介とはいえそれほど高額なものではない。
 それでも不定期な収入しか得られない突発的な仕事とは異なり、極めて安定的な収入を得られ、しかもジーナはモデルという華やかな職業を持つ一方で、そうした職種よりも犬猫と関わることを好んでいたから、その仕事を得られたことを殊の他喜んでいた。
 ましてやモデルとしての仕事も先細り、学歴のなさからくる職種の狭さに困っていたところだったのだ。
 …夜の仕事はもうさせたくない。
 本人も忌避しているようだったが、それでも生活がかかってくればせざる得ないこともあるだろう。
 『ずっと頑張って勤めていれば、いずれ正職員にもしてくれて、そうしたら訓練士にもなることができるんですって』
 「へぇ?」
 『滋さんが、もしあたしにやる気があるんなら、働きながらでも訓練を受けることができるトレーナーの学校を紹介してくれるって言ってくれたの』 
 破天荒なところのある滋だったが、伊達に歳は喰ってはいない。
 戒では思いつかなかった着眼点からの支援の申し出を、ジーナにしてくれていたらしい。
 そんなところは適わない。
 滋にも、そしておそらく司にも。
 けれど、それがジーナの為になるのなら、戒もイヤな気持ちではなかった。
 …俺はやっぱりまだまだガキなんだ。
 あらためて実感として、感じさせられる想い。
 「キツくない?」
 『体力的にはキツいけど…でも、毎日が充実しているし、目標ができてとても楽しいわ』
 ジーナの声音はその言葉のように、本当に明るく屈託がなかった。




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