「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花③

愛してる、そばにいて0663

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 話に割り入った澄んだ声音の主へと、司と滋が振り返った。
 司と目があったことに一瞬たじろいだようではあったが、すぐに素知らぬ顔で戒はその視線をフイッと反らせて、滋へと向き直る。
 「ありゃ、珍しいね。おはよう、戒君」
 「……はよ」
 滋との会話の合間に、いつの間にか戒も朝食の席に現れていたらしい。
 いつもは司と滋を避けて、彼らが屋敷にいる時には、めったに食堂に顔を出すことのない息子の久しぶりの姿に、司が目を細める。
 …また、デカくなったか。
 戒を見るたびに思う感慨。
 それだけ我が子に会う機会がないことの証明のようなものでもあり、戒が望んではいないとはいえ、それでも彼の言うとおり、半ば息子を放置している自身の不明を司が自嘲する。
 「以前、俺も一緒に行かないかって、誘ってくれたこともあっただろ?」
 「まあ、私はいつでも大歓迎なんだけどね…」
 さすがに父親の前で、無責任に連れ出すほどには滋も非常識ではなかったらしい。
 司を伺うような視線が、話の引き継ぎを望んでいる。
 片眉を器用に上げ、司が戒の顔を無言でジッと見据える。
 「ちょっと、司」
 取り成すつもりか滋が声をかけてくるが、彼女を片手で制し、司はなおも戒をジッと見据え無言の圧力を加え続けた。
 「……おはよ」
 蚊の鳴くような声だったが、それでもかけてきた戒の挨拶に、司が破顔した。
 「おう、飯の席でお前と会うのも久しぶりだな」
 皮肉ではなかったが、戒はそう感じたのか、わずかに顔を顰め、ソッポを向きかける。
 しかし、自分から口を挟んだことを思い出したらしい。
 ここのところの戒にしては珍しく、司を拒絶することなく、彼との会話に応じていた。
 …いったい何が目的なんだか。
 司は内心苦笑していた。
 あまりに空々しいものになってしまった自分と一人息子との関係に。
 「お前を名指しで来るパーティの招待にもロクに応じねぇっつーのに、サロンってか?お前もわかってると思うが、ガキどもの乱痴気パーティとかと違って、クソ面白くもねぇぞ?」
 司のふざけた物言いに肩を竦め、戒は取り合わない。
 「どうせ俺を招待するようなパーティだって、あんたを目的にお近づきになろうっていう連中の、魂胆見え見えのくだらない集まりでしかないじゃないか」
 「ふぅん?」
 そのとおりではあるが、サロンにしても有閑マダムたちの腹の探り合いの場であり、戒のような若年者はその肴にされるだけで、なおさら楽しめるものではないはずだ。
 むしろ、物見高い連中の格好の餌食になるだけに違いない。
 …それがわからないようなお前じゃねぇだろ?
 戒の内心を見透かそうと見つめる司の鋭い視線から気まずげに視線を反らし、戒が重ねて申し入れてくる。
 「別にいいだろ?M&Dの会長の孫息子のロバート・ジョブスは、去年までウチのエレメンタリースクール※生で先輩だったし」 
 「ダチなのか?」
 首を傾げただけで戒は特には答えないが、それが肯定だろうと否定だろうと、別段司には関係ないことではある。
 だが、これまで戒は、司はおろか滋にも滅多に接触を持とうとはしなかった。
 そんな戒が、自分から隔意のある司に話しかけてまで、物見高いだけでこの年頃の少年にとっては、面白味もなにもないだろう暇人どものサロンになど出向こうとする意図に、違和感を感じずにはいられない。
 「私としては、嬉しいし、ありがたい話だけど?」
 滋が司の意向を伺うよう司の顔を見る。
 躊躇したのはほんのわずかの間。
 「好きにしろ」
 「やりぃ!前々からオバ様方に、戒君を連れて来てってご要望されてたのよね!これで私も面目躍如だわ。バッチリしっかり決めてきてよね、戒君!」
 若い娘よろしくキャイキャイと、黄色い声を上げて喜ぶ滋のテンションとは裏腹に、戒の横顔はすでにアンニュイに背けられ、ここでないどこかへと向けられていた。




*****




 「おっはぁ。てっきり親の目がないのをいいことに、自堕落な生活を送ってるのかと思ってたけど、こうして見ると、あんがい規則正しい生活してるのね」
 ここのところ、滋が屋敷にいる時には、毎日とまでは言わないが、かなり頻繁に一緒に食事を取るようになった戒が、彼女の斜め向かい側、司がいれば彼が座る当主席から右手へと先に腰を落ち着け、給仕係が配膳した料理を口にしていた。
 「…おはよう」
 「学校?」
 「いや」
 「ふぅん?」
 和気藹々とまでは言わないまでも、少なくても顔を見れば回れ右、間違っても一緒に食事をとるなどということはなかった以前に比べれば、滋が話しかけたことには応えるようになったのは、やはり格段の進歩と言えるに違いなかった。
 「ねね、明日、国務長官の奥方が主催のサロンがあるんだけど、行くでしょ?」
 「…どうするか」
 「え~、行こうよぉ」
 思案するように首を傾げる戒の方へと身を乗り出して、滋が揉み手する。
 そんな彼女をよそに、戒は落ちてきた長めの前髪をただ淡々とかきあげ、憂鬱げに思案していた。
 …なんか妙に色気のある子よね。
 時々そんな彼の仕草にドキリとさせられるのは、彼女が戒の美貌に夫である司の美貌を重ね合わせているからなのか、それともいつの間にか、周囲の暇人奥方たちに影響されて、滋自身、ショタコン趣味へと走り始めてしまっているからなのか。
 …ヤバいかも、私。
 それでもその暇人奥方たちの催す集まりに参加するようになってから、戒ともこうして格段に親しみが増したのは確かなことだった。
 …ホント、親子揃って人に慣れない野生の獣みたいに、やたらと警戒心強いんだものね。
 噂に聞く司の最初の妻、戒の母親という女はよほど権高い女だったのだろうか。
 しかし、庶民出身だと聞くのだから、滋自身の属する階級の女たちよりも高慢ちきということもあるまいと、不審にも思う。
 …いったいどんな女性だったの?
 「戒君ってさ。そんなに愛想がいいわけじゃないけど、司なんかよりずっとあたりは柔らかいし、紳士じゃない?なまじ下心がある小父さんたちより、ずっと小母さんたちに人気があるのよね」
 鼻で嗤う戒の容姿は、本当に司にそっくりだ。 
 そのパーソナリティもかなりよく似てはいたが、滋の言うこともまんざら世辞というわけではなかった。
 ちまたでの悪評―――戒の在学する学園でまことしやかに囁かれている、気に入らない生徒たちへのイジメを取り巻きたちた示唆して、次々に退学に追い込んだという噂を払拭してしまうほどに。
 …そんな暴力的な子には、とても見えないものね。
 「なに?」
 「え?」
 「ジッと俺のこと見て、なに?」
 「あ、ああ。いやぁ、相変わらずの鬼気迫る美少年だなぁと、見惚れてただけ?たはははは」
 臆面もなく言い放って豪快に笑う滋の屈託のなさに、一瞬だけたじろいだような顔をした戒だったが、すぐにいつもの冷たい怜悧さを纏って小さく嗤う。
 「俺にあんたが見惚れるのは、俺が美少年だからじゃないだろ?」
 「は?」
 今度は滋の方が驚かされる番だった。
 「あんたが俺に見惚れて、つい見てしまうのは、あいつに似てるせいだ。俺の顔が俺の父親にそっくりだから、俺を自分の傍に置いて連れ回したいんだ―――あいつの代わりに。けど、似ていない部分に戸惑って、前の女の影を俺に見て、複雑な気分になる。そうだろ?」




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※エレメンタリースクール※=小学校。
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