「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花③

愛してる、そばにいて0655

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 チュ、チュッと髪からうなじに、少しづつ素肌へと降りてくる類の唇に、官能の火種の予感がして、つくしは熱い吐息を零した。
 気が付けば、いつの間にか逞しい片腕に抱き寄せられたまま、ソファへと横倒しに倒れ込んでしまっている。
 「……ぁ」
 服の上からつくしの背を撫で下ろしていた大きな手が、前に回って胸元に触れられそうになって、思わず小さな声が上がる。
 抗うつもりはないのに、咄嗟に伸ばした手でその手を抑えてしまったのは無意識のことだった。
 しかし類は、そんな彼女のやんわりとした抵抗さえ、戯れの一つに変えて、掴まれた手をそのままに、うなじに埋めていた唇を滑らせて、進撃を開始する。 
 うなじを彷徨っていた類の唇が、抑えられてしまった手のかわりのように、胸元へと移動して、痕にならない程度の強さでキュッと吸い上げた。
 流されてしまえばいい。
 いつもはひんやりと冷たい手の生み出す優しい快楽に、身を任せてしまえれば…ちゃんとそう思えるのに、気が付けばその熱い唇に自由な方の手のひらを当て、
 「あ、あのさっ!」
声を上げ制止してしまっていた。
 とたん、ベロリと濡れた舌先に手のひらを舐められて、つくしが甲高い悲鳴を上げる。
 「いっ…ひ~」
 「…ぷっ」
 つくしからしてみても、我ながら色気のない素っ頓狂な声だったが、見事に類のツボにハマってしまったらしい。
 「くくくく、何その変な悲鳴」
 「………だって」
 肩を震わせ、笑い転げている類のつむじを眺める。
 せっかくいい雰囲気だったのに、いつの間にかいつもながらのコメディチックな展開にしてしまっていた。
 申し訳ない気持ちと軽い落ち込みと、わけのわからない自己嫌悪に凹んでしまう。
 けれど、結果的に邪魔されたカタチの類の方は、特に不満ではない様子でむしろ機嫌は上々、本当に楽しそうに笑っていた。
 それでも彼の声音にわずかに含まれた微苦笑を、つくしも感じずにはいられなかったけれど。
 彼女の肩口に頭を寄りかからせたまま、仰向き加減に顔をあげ、上目遣いでつくしの顔を覗き込んでくる。
 超至近距離での美貌の凄まじい破壊力に、つくしは息を呑んだ。
 どれだけ一緒にいるようになっても、近い存在になってさえ、彼の美しさに慣れることなどできやしない。
 欲情に潤んだビー玉みたいな目が、彼女の顔をジッと見つめていた。
 その蠱惑的な魅力に魅せられて、カアアアァッと頭に血が上って、それだけでもうわけがわからなくなってしまう。
 …美人は三日で飽きるって、よく言うのにっ。
 つくしの周辺ではそのことわざを、ことごとく裏切る超絶美形がボロボロと存在しているのだ。
 それなのに彼の誘惑するような、色気に満ちた眼差しから視線を反らすことがいかにも難しかった。
 「イヤ?」
 「……イヤってわけじゃないの、ただ」
 「うん?」
 待っていてくれる類の優しさに、体ばかりではなく心の強張りまでもが解される。
 それでも、刹那な情動だけで流されてしまうには、あまりにもつくしは生真面目過ぎたのかもしれない。
 もしかしたら、ただ臆病なだけなのかもしれなかった。
 ソロソロと、大きな体の下敷きになってしまっている体を起こして、つくしは自分を立て直す。
 もちろん類もまた、全部の体重をかけないようにして……彼女がそうすることを許してくれたからこそできたことだ。
 男が本気になって押さえ込まれてしまえば、到底女の力では抗うことなどできないことは、つくしも身に染みて知っている。
 「ただね。…こんな体勢で今言うのも何かな、とも思うんだけど、さ。その、たぶん今言っちゃわないといけないことだと思うから」
 つくしでさえ何を言いたいのか、もし自分が類だったらわからないだろうと思うくらいのシドロモドロな物言い。
 珍しく妙に生真面目な顔をした類が首を傾げて、マジマジと彼女の顔を見つめてくるのに、ゴクリと喉が鳴った。
 唾を飲み込んで、唇を舌で湿らせ口火を切る。
 「あんたがキャラじゃないのに、あんな演出までしてプロポーズしてくれたもんだから、感動してつい受けちゃったんだけど…ね」
 「まさか、辞めたとか言い出すつもりじゃないよね?」
 類でもさすがにショックなのか、どこかポカンとした顔で念を押してくる。
 できればそうしたいけど、なんて言ったら盛大にグレてしまいそうな雰囲気だ。
 「そうじゃないよ、そうじゃないけどさ。でも、もしあんたが、そうするべきだと思ったら撤回してくれてもかまわない」
 「………なに?」
 つくしの真剣さが伝わったのだろう。
 居住まいを正して、類も真剣な顔で問い返してくる。
 「私、もしかしたら妊娠できないんじゃないかと思うの」
 「妊娠…って」
 さすがの彼にしても予想外の言葉だったのか、驚いている。
 けれど、類個人の気持ちはともかくとして、彼には花沢物産専務、花沢という大企業を背負ってゆくべき後継者としての義務と責任があるのだ。
 普通の男とは違う。
 「……実は、私、戒の前にも二度妊娠してるのよ」
 ごくプライベートなことだ。
 いくら芸能人的に人目に晒されることも多かった有名一家のことだと言っても、さすがにそうしたことまで知っているのはごく一部の人間と身内に限られていた。
 「でも、妊娠を継続できなかった。流産したの」
 真実、産みたいと思っていたかは別として。
 「そのせいか、2度の流産の後、戒を妊娠するまでもずいぶん間が空いてしまったわ。…もちろん、戒の後にも子供を作る気がなかったんじゃない。できれば、戒に兄弟をとも思ってた」
 司が望んでいた。
 そして、つくしもまた。
 戒が生まれて、初めて本当の夫婦になれたのだ、きっと。
 …私たちの宝物。
 戒が生まれた日の喜びと嬉しさ、幸福を一生涯忘れることはないだろう。
 こんなにも愛しく、可愛らしいと思える存在が、この世にいるものなのかと感動した。
 そして、おそらく司もまた。
 だからこそ、つくしは司と戒、二人に、もっともっとたくさんの家族を作ってあげたかったのに。
 けれど、望んだからといって、必ずしも誰にでも望みが叶うわけではない。
 少女の日のつくしはそんなことを思ったことなどなかったけれど。
 愛する人と結婚して、望めばいくらでも子供を産むことができる、その程度の認識だった気がする。
 「隼斗さん…二度目の結婚の時には、特に子供を望んでいたわけじゃなかったけど、…夫婦だもの、できる可能性がなかったわけじゃないわ。それなのに、結局、私は妊娠することはなかった。もしかしたら、私はそういう体質なんじゃないかと思う」
 そう認めてしまうことはこの上なく辛いことだった―――かつてはそうは思わなかったけれど、愛する人の子供が欲しい、そう思える日がまた自分に来るなんて。
 しかし、だからこそ辛いのだ。
 そして辛いと認識することが、また辛く苦しく、哀しかった。
 「私は赤ちゃんを…類の子を、産んであげられないかもしれないの」
 「だから?…俺とはやっぱり結婚できない、そういうこと?」




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