「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花③

愛してる、そばにいて0654

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 「そう言えば、そのニューヨークのレストランでもお花、くれたよね」
 「ああ、うん、なんの花だったか覚えてる?」
 類が手持ち無沙汰に弄んでいたミネラルウォーターのペットボトルに手を伸ばし、つくしが手に取って引き受ける。
 「飲む?」
 「うん」
 大して喉が渇いたというほどではなかったけれど、空調が効いてるだけに多少乾燥しているのか、なんとなく一口、二口でも口に含みたくなっていた。
 キャップを緩めて外し、そのままペットボトルの口に直接口をつける。
 「…あ」
 「?」
 つくしが水を口に含んだ瞬間―――、
 「間接キス」
 「ぶ―――ッ!!」
思いっきり噴いた。
 危ういところで類が避けたので、幸い彼の顔面に向けて噴きかけてしまうような粗相は避けられたが、かなり派手にぶちまけてしまった。
 げへっげへっと咳き込みながら、慌てて近場のテッシュ箱を引き寄せ、濡れてしまったテーブル周りや絨毯敷きの床を拭う。
 「ただの水なんだから、そんなに頑張って拭かなくても平気じゃない?」
 「じゃないでしょう!?なに、急に変なこと言ってんのよ!…ちょっとぉ!鼻の中にまでお水が入っちゃたじゃないっ!!」
 鼻の奥がツーンと痛い。
 ひ~と悲鳴をあげて、恥も外聞もなくティッシュで鼻を噛みまくる。
 「いまさら間接キスくらいで、噴き出すことないのに」
 「っていうか、あんた今絶対にわざとでしょ?」
 「え~」
 「わざとよね!?」
 空っ惚けて首なんか傾げてるが、それでも否定はしない類に軽くイラッとしてしまった。
 「まったく。やっぱりどうせなら、あんたの顔に向かって噴きかけてやれば良かった」
 「はは、さすがにそれは勘弁して」
 つくしはキャップを閉めたミネラルウォーターのペットボトルを、ドンッとテーブルに戻した。
 「水、もう飲まないの?」
 「鼻で飲んだから、もういいわよ」
 「器用だね?」
 皮肉をまともに返され、つくしが引き攣った。
 もちろん今度も、わざとに決まってる。
 楽しそうにクツクツと機嫌良く笑っている類を呆れて見やり、だが、彼の稚気を仕方がないと許容して諦める。
 「もう、いいわよ。それより、え~っとぉ、なんだっけ?」
 ちょっとした人為的なアクシデントのせいで、すっかりド忘れしてしまった。
 「花」
 「ああ、そうだった、そうだった、花ね」
 つい先ほど、つくしも思い出していたところだ。
 「チューリップだったよね?」
 「そう」
 物言いは素っ気ないが、つくしの返事に類は嬉しそうに笑ってくれる。
 「でも、あのお花をくれた時も、たしかプロポーズしてくれるつもりだったのよね?」
 「うん」
 「プロポーズの時にくれるつもりだったのに、チューリップだったんだ?」
 別にどうでもいいことだが、話題に出たついでだと聞いてしまうことにする。
 バラの花だったら、もう少し鈍い自覚のある彼女にしても、何か意味をそこに感じていたかもしれなかったのに。
 「ああ、あれね。花屋に勧められたから」
 「へぇ?」
 「理想の伴侶」
 キョトンと見返すつくしの肩を抱き寄せ、類が彼女の頭のてっぺんに、チュッと軽いキスを落とす。
 「……類?」
 「花言葉なんだけどさ。プロポーズするなら赤いバラが一般的だけど、チューリップもいいって言われたんだ」
 「そうなんだ」
 かなり大業ではあるが、花言葉なんてそんなものだろう。
 しかし、類の方はまだ何かを言いたかったようで、少しだけ考え込むようにして首を捻った。
 「理想…っていうのともちょっと違うかとも思ったんだけどさ。…でも、今思うと、そうかもしれないなって」
 まさか、本当にそんな意味を自分に重ねてくれたとは思っていなくて、あまりの意外さにポカンと類を見返し、すぐに慌てて否定する。
 「いやいやいや、そんな理想とか言われても、私、そんなにご立派な人間なんかじゃないから」
 「ま、それはそうだけど」 
 「………………」
 …ええ、ええ、それはそうでしょうとも。
 あっさり肯定されるのもそれはそれで面白くなくて、ついグレてしまった。
 「もしかして、あんた、私をおちょくってるんじゃないでしょうね?」
 さすがに今度はからかうつもりではなかったようで、疑わしげな顔をするつくしに、類が小さく笑う。
 「もちろん、違うよ。だから、拗ねないで?」
 「拗ねないわよ」
 それこそ一々腹を立てるには、類の場合これがデフォルトだ。
 優しいのに意地悪で、無愛想なのに蕩けるように甘くて、冷たいのに温かい。
 初めて出逢った高校生の時よりも、ずっと近いところにいるはずなのに、つくしにとって類はどこまでも謎だった。
 …綺麗な顔して辛辣なんだから。
 まるで人に慣れない高貴な野良猫のような男。
 野良猫のくせに高貴だなんてと、我ながら自分の妙な形容に笑ってしまう。
 けれど、そうとしか言いようがなかった。
 そして、そんな彼がつくしとずっと一緒にいたい、生きていきたいと言ってくれるから。
 司の願いを叶えてあげることはできなったけれど。
 …今度こそ。
 どうしても類を想えば、司を思い出してしまうのは習い性のようなものなのだろう。  …隼斗さんと一緒にいる時は、ほとんど思い出したりしなかったものね。
 もちろん、司を否定して、彼を思い出さないようにしていたこともあったけれど。
 「……あのね、とってあるよ」
 「ん?」
 「チューリップ」
 「へぇ?プリザーブドフラワー?※」
 「あ!その手があったか」
 言われて初めて気がついた…いまさらだが。
 「いやぁ、そんなんじゃなくってね。思いっきり原始的な方法での保存方法だけど、押し花にしてね、栞にしたの。さすがにチューリップってかなり大ぶりだからどうかな、って思ったんだけどさ?類の書斎の分厚い辞書を借りて押したから、けっこう綺麗にできたよ」
 「ふぅん」
 道明寺家だったら言語道断だと怒られてしまいそうな話だったが、類の方は本好きのわりにそこら辺はこだわりがないらしく、けっこう平気で本に書き込みをしたり、折れ目を入れたりで、かなり年季が入ってボロボロの本でも気にしないで保有していたりする。
 むしろそうした物の方に愛着を感じているのか、捨てたりしないところにつくしも好感を持っていた。
 「サクランボ狩りに行った帰りに、類がお花畑で摘んでくれた花も、実はドライフラワーにしてちゃんととってあるのよね。ほら窓のところにある花瓶、あれに飾ってあるのがそう」
 「そうだったんだ。へぇ、気づかなかった」
 そうだろうと思っていたので、特にがっかりすることもなかったが。
 「でも、あれって普通にそこらへんに咲いてた雑草だよ?」
 逆に驚かれてしまう。
 「雑草かもしれないけど、あんたが自分の手で摘んでくれたお花だもの。とても綺麗だったし、花に貴賎はないでしょ?」
 流石に何もかも全部をとってあるというわけではないが、それでもそうして花をくれる彼の気持ちが嬉しかったから。
 そんなつくしへと、類も柔らかく微笑んで頷いてくれた。
 「そうだね」




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※プリザーブドフラワー:生花や葉を特殊液の中に沈めて、水分を抜いた素材。生花と変わらない外観を保ったまま5年~10年と長期間保管できる。
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