「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0653

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 「なに?まだ見てたんだ?」
 シャワー室から出てきた類に声をかけられ、薬指にハマった指輪に見入っているうちにいつの間にか、かなりの時間が経っていたことにつくしもやっと気づかされた。
 薬指に輝く希少な宝石の煌きに、あらためて苦笑が溢れてしまう。
 「高価なプレゼントはよして、っていつも言ってあるのに」
 婚約指輪くらいとは自分でも思うが、桁が違いすぎる。
 ダイヤだろう透明な小さな宝石に囲まれた中央のピンクの宝石は、それほど大きくはなかったが、つくしも伊達に長年大財閥の若奥様をしていたわけじゃない。
 ある程度の観察眼と、高級品の見極めをするくらいの目は持っている。
 「こんなのしてたら、怖くて外も歩けやしないわよ」
 「そんなでもないよ。ほとんどがメレ※だし、どうせあんまり派手なのは好まないと思ったから、ぐっとシンプルなヤツにしたつもり」
 メレダイヤと一口にいってもピンキリなのだし、類の言う『そんなでもないよ』が大したものではないはずがない。
 それでもいつまでも文句を言って、せっかくの類の好意を台無しにするのも憚られ、つくしは小さく吐息を一つついて気持ちを切り替えた。 
 …嬉しかったし。
 バスローブ一枚の姿で風呂から出てきた類は、優美な美貌に不似合いな粗雑な仕草で、ガシガシと髪をバスタオルで拭いている。
 「よくそれだけ乱暴に拭いてて、髪の毛傷まないわよね」
 「ウチの家系、ハゲはいないもん」
 ガクッ。
 「そういう問題なの?」
 「たぶん?」
 相変わらず類の会話のツボはよくわからない。
 頭痛を覚えた。
 それでも以前はボタボタと、部屋にまで水滴を落として平然としていたのだから、その頃に比べれば水飛沫を撒き散らさなくなっただけでも十分御の字だ。
 もっとも、類が放り投げっぱなしにしたタキシードのジャケットや、蝶ネクタイは全部彼女が片付けたのだが。
 「ドレスシャツやら下着類は、ちゃんと一纏めにしておいたんでしょうね」
 「うん、そこらへんはつくしが煩いから、バッチリ脱衣所の端っこに固めて小山にしておいたよ」
 ‘つくし’の名前呼びに照れつつ、
 …小山。
の一言にヒクリと引き攣ってしまう。
 が、一部の表現に気になる部分があるくらいで一々気にしていたら、この物臭男ととてもではないが、一緒に暮らしてなどいられはしない。
 「まあ、いいわ。イイ年してそんなことでドヤ顔されちゃうのはともかくとして、なんかお酒とか飲む?」
 「いいよ。食前酒飲んだだけで、俺もけっこう疲れてるのかけっこう回ってるし。適当に自分で飲むから、お前は座ってな?それともつくしもなんか飲む?」
 「あ~、私はいいや。あとでシャワー浴びてから、烏龍茶でも飲むから」
 結局あの後―――公開プロポーズのおかげでディナーを摂り損ねて、今夜食べる予定だった料理は、部屋にルームサービスで運んでもらうことになってしまった。
 つくしにしてみれば、堅苦しい高級レストランで食べるよりはよほど気楽だったが、せっかく万全のシチュエーションでのプロポーズを用意してくれた彼には申し訳なかったかもしれない。
 「…あのさ」
 「ん?」
 冷蔵庫に屈みこんで、ミネラルウォーターのペットボトルを取り出す類の背中を見るともなく見守て、謝ってしまう。
 「ごめんね?」
 「え?」
 やはり唐突すぎたらしい。
 振り返った類の顔が、キョトンとしている。
 「その…せっかく、ああいう演出をしてくれたのに、食事もしないでさっさとこっち来ることになっちゃって」
 「ああ」
 キャップをひねってボトルの水を煽った類が、ソファに腰掛けているつくしの横へと腰を下ろす。
 「ま、予想の範囲だったし」
 「予想の範囲?」
 「そう。もしかして恥ずかしいとか居た堪れないとか言い出して、帰りたがるかなぁって思ってたから、この部屋とってあらかじめルームサービスでも食べられるように手配してあったんだ」
 「そ、そうなんだぁ?」
 ドンピシャな予測だったが、あらためて聞くとなんともはや。
 「ま、結果オーライだよ。俺は元々過程とか全然気にしないし」
 たしかに本来ロマンチックとかそうものとは、縁遠い男だ。
 かといって、リアリストというわけでもないのだが。
 そんな男が―――、
 「よくあんた、あんな演出思いついたわよね?って、いうか、キャラじゃないでしょ?」
 つくしが望めば、類もそれなりに付き合ってくれるが、風情や情緒を理解していても、それを自分が感じて望んでいるかは別問題の話だ。
 それでいて、音楽に限らず絵画などの芸術面にも長けているのだから、なんとも理解しがたい男だ。
 「良かったでしょ?」
 「うーん、良かったって言うか」
 たしかにらしくないことをしてくれたのは、彼女の為だろうと思ったからこそ、ある意味感動もしたが。
 …おかげでつい婚約しちゃったわよ。
 つい先ほど指にハマッたばかりの婚約指輪をコシコシと撫でる。
 「NYで羨ましそうにしたからさ」
 「…は?NY?」
 「ほら、レストランでサプライズ・プロポーズに出くわしたじゃない?」
 「ああ、あったわね」
 最後の夜くらい夜景が綺麗だというレストランで食事をしようと、二人で宿泊していたホテルのレストランへとディナーに出かけた時のことだ。
 「本当は、俺もあの時にするつもりだったんだ」
 「え?」
 「プロポーズ」
 そうだったのかと、つくしも目を丸くする。
 驚くには、かなりの回数プロポーズされてしまっている。
 さすがにそれをまんま伝えるのは、いくら相手が類でもさすがに悪いので、口にはしなかったけれど。
 「花もちゃんと用意してさ。それなのに先を越されて、出鼻を挫かれちゃったからね」 
 類がくれたのは赤いチューリップの一輪挿し。
 プロポーズなのに、赤いバラじゃないのかとちょっと不思議に思う。
 …別にいいけど。
 「そうだったんだ」
 その次の日、セントラルパークでプロポーズを受けたが、何気ない会話の中でサラリとされたその時のプロポーズの方がよほど類らしい気がする。
 けれど、もしやこう見えても意外や意外、類もロマンチストだということなのだろうか。
 「ロマンチストなのは、俺の方じゃないよ」
 今思っていたことをズバリと言い当てられ、またもうっかり思っていることを口に出してしまっていたかとつくしが顔を引き攣らせる。
 「ぷっ、別に今回は口に出してたわけじゃないけどね」
 「……一々人の心を読むのはやめてよ」
 …あんたはエスパーか。
 時々、本当にそうなのではないかと思えるほど、類のカンというか観察眼は鋭かったけれど。
 「つくしの言うとおり、ああいうのは俺のガラじゃない。でも、…俺に王子様の夢をみちゃうくらい、意外に乙女チックな女だろ?誰かさんは」
 もちろん誰かさんが、誰かなんて指摘されるまでもない。
 「これでも、俺頑張ったんだけど?」
 褒めてくれと珍しく阿るような…けれど、やっぱり悪戯小僧のような類の顔に苦笑してしまう。
 「はいはい、おかげさまでいささか薹が立ってますけど、十分乙女できましたよ」
 「プロポーズ、受けてくれたしね」
 三度目の正直だったか。
 「ホント、あんたって、そんな虫も殺さないような綺麗な顔して、ずいぶんな策士なんだから」




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※メレ:宝石の大きさを表し、仏語で小粒石の意。中石を引き立てる脇石や、マリッジリングを飾るダイヤとして使用される。 メレダイヤの品質がリング全体の輝きに大きく影響を与える。
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おめでとうございます!

いつも素晴らしいお話を届けて頂きありがとうございます!
ランキングにもお名前があり、とても嬉しいです。
お話の深みにただただ脱帽です。
ありきたりの言葉になってしまいますが、これからも楽しみにしています。
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

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