「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0644

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 誰かに呼ばれた気がした。
 姿が見えてもいい頃合いのはずなのに、未だジーナの姿が見えない。
 …仕事が長引いてる?
 こんな目立つ高級車でなんか送迎されたくないと、ブーブー文句を言うジーナを無理矢理に車に引っ張り込み、店の近場へと送り届けた。
 その後一度車を移動して、彼女の帰る時間を見越して戻り、それでも目立たない路地に車を駐車させ30分ほど経つ。
 途中、トイレの便や安全面も考え、多少遠出だったが御用達のホテルの一室を借り、そこを学習室代わりにしていたが、タブレットでネットに繋いでの学習だ。
 どこにいても変わらない。
 ジーナがバイトを終えた後に、彼女をアパートに送るために待つことトータル7時間ほどか。
 家庭教師が作った教育プログラムにざっと目を通し、いくつもの問題集や模擬問題を次々に解いて、ふと気が付けば…だ。
 どんなに父親に反発していても、また道明寺家に対して思うところがあったにしても、戒は学習を疎かにいて成績を落としたくなかった。
 学校に通うことに意味を見出せなかったから、通学こそしていなかったが、道明寺家に雇用されている最高水準の家庭教師たちによって、戒は教育され、彼の学力からすれば、戒は本来何学年かの飛び級も可能なレベルだ。
 いずれアメリカの大学受験でもっとも重要なSAT ⅠとACT※1において、希望大学への合格レベルに到達すれば、戒は年齢に関わらず大学を受験するつもりだった。
 呑気に必要のない学校になど通学して、無駄な時間を過ごしても仕方がない。
 …誰にも俺のことを侮らせない。
 たとえ将来的に、道明寺家の後継者の地位を追われることになるにせよ、その理由が能力不足だったからだ、などとは絶対に言われたくなかった。
 「ロック開けて」
 「…ダメです」
 間髪入れずにSPが、拒否する。
 「すぐそこまで見てくるだけだ」
 「坊ちゃん」
 問答する無益をするつもりが戒にはない。
 指示に従わない相手に、いつまでも拘ってるつもりもなく、さっさと自分でロックに手をかけ開いてしまう。
 慌てて運転手が、リモートキーを操作してイモビライザー※2を解除する。
 「約束が違います。車から出ない約束でしょ?」
 「車から出ないつもりだと言っただけで、出ない約束はしてない」
 詭弁だ。
 それでも言質をとらせていない自信が、戒にはある。
 「はぁ」
 「心配なら、お前たちもついて来いよ」
 リムジンの後ろで追尾している後続車からも、先ほどジュリオのバイト先に置いてきたSPのロビンソンが、車を降りる戒の姿を目にして助手席から降りて来た。
 本来なら、店の目と鼻の先に車を停めたかったのだが、目立つことをジーナがイヤがったのと、通行人たちがジロジロと眺めてゆくのに妥協して、道一つ挟んだ大通りに車を路上駐車していた。
 …まさか、先に帰ったんじゃないよな?
 ジーナはさんざんごねていたのだ。
 ありえない話ではない。
 店からわずか300mほどの範囲だが、ほとんど人通りのない大通りと大通りの間の路地は人影もなく、ネオンどころか月明かりさえも届かず、なおいっそう暗い気がした。
 壊れかけた街路の電灯が、濁ったオレンジの光を点滅させている。
 足早に歩く戒の両サイド、SP二人が周囲を警戒して周囲を油断なく見回していた。
 いつもは少し離れて追尾させているのだが、さすがにこの物騒な通りで、さらに危険な夜道を戒から離れて歩くような愚を、道明寺家の護衛たちが侵すはずもなく、また戒にしてもそれを咎めない。
 …こんなヤバい道を、いつも一人で帰ってるなんて。
 『あんたは心配しすぎよ。明るい大通りを選んで歩いてるんだから平気。何年、あたしがここで暮らしてると思ってるの?』 
 そんな風に取り合わない彼女に、戒もつい危険に対して鈍くなってしまっていたのかもしれない。
 常にSPに守られている彼は、そうした危険を感じたことがほとんどなかったし、誘拐へのリスクが高い自分の立場を自覚していればいるだけ、一般人であるジーナへの危険を侮っていた。
 彼女のサバサバとした物言いに、本当に平気なのだと錯覚して、重く受け止めていなかったのだ。
 …きっとそんなんじゃ、ダメだったのに。
 危険は常に日常の中にこそ隠れていて、隣り合わせのものなのだと、人は差し迫らなければ自覚できない。
 「……ぁっ、………」
 「?……なんか、聞こえなかった?」
 細い通りを行き過ぎかけて、戒がピタリと立ち止まる。
 車にいた時のようなあきらかな幻聴などではなく、たしかに細くか細い猫の仔の鳴くような声が聞こえた気がした。
 戒が不審に目を眇め、周囲を見回してゆく。
 「いえ?聞こえませんが?」
 「私も、特には何も」
 SPたちも戒の視線の動きに合わせ、暗闇の各所周辺を見回すが、特に何も見つけることができずに首を振り、戒へと意識を戻してしまう。
 元々戒を守るための危険には鋭敏な彼らも、彼に関すること以外にはかなりおざなりなのだ。
 あくまでも彼らが注意を払うべきなのは、雇い主の息子である戒のことだけ。
 だが、確かに何かが戒のどこかに訴えかけている。
 ―――助けて、戒!
 「ジーナ?」
 声ではなかったかもしれない。
 それこそ単なる幻聴か。
 それでも、たしかに、彼にはジーナの声が聞こえた。
 ーーーハッキリと。
 「坊ちゃん!!」
 「ダメですっ」
 いきなり路地へと走り出した戒にぎょっとして、咄嗟に右隣にいたロビンソンが、彼の腕を掴んで制止しようとする。
 だが、その動きを見切って、身を捩った戒の方が一瞬早かった。
 暗い闇の向こう、さらに黒くわだかまって、ゆらゆらと揺れる二つの影が見える。 
 ―――直感。
 「ジーナぁ!!」
 「んん、ん―――ッ!!」 
 こちらに背を向けて、しゃがんでいる黒い塊……男が、戒を振り返った。
 刹那、必死で戒の方へと顔を向け、のしかかる男の体に手を突っ張り、助けを求めるジーナと目が合う。
 闇に馴染んだ戒の目に、男に首を半ば絞められ、涙に濡れた彼女の苦悶する白い顔が見えた気がした。
 戒の頭にカアァッと血が上って、脳裏を真っ赤な何かに埋め尽くされる。
 「ジィィィナァァァっ!!」 
 戒は咄嗟に足元に転がっていた瓶を掴みあげ、慌てて立ち上がろうとしていた男の頭へと振りかぶった。
 そして、一気に男の脳天へと向かって叩きつける。
 グワッシャーンッ!
 「ぎゃああぁっ」
 「殺すっ!」
 血飛沫を飛び散らせ、倒れ込んだ血塗れの男にめがけ、再び割れたガラスの……今度は鋭利な切っ先を向け戒が腕を振り上げた。
 「やめろっ!」
 しかし、すぐその後ろから追いついたSPが、男の頭へと割れたガラス瓶の切っ先が到達する寸前、戒の体を羽交い締めにして、暴れる腕を掴んで引き止める。
 「離せっ、ぶっ殺してやるっ」
 「ひいいいいいっ!」
 「ダメです!坊ちゃんっ!!」
 一人がもがく戒を羽交い締めにしてる間に、もう一人のSPが、両手で頭や顔を庇い地面を転がりまわって、甲高い悲鳴をあげている男を、ジーナと戒から引き剥がして遠ざける。
 「殺してしまいます!」
 「殺すんだよっ!殺してやるっ!!」




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※1 SAT Ⅰ、ACT:どちらもアメリカにおける大学進学適性試験
※2 イモビライザー:自動車盗難防止システムの電子キー。リモコンを使わず内側から手動でロックを開けると、ある条件下ではファンファンと派手にクラクションが鳴ってエライ目に遭う。
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