「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0640

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 「ジーナ!ほんとにごめん、もうしないから許してよ」
 「……………」
 背を向けたまま、彼を拒絶している彼女の腕を掴んで、振り向かせたい衝動をそれでも堪え、戒はただ彼女の名前を呼び続け謝罪する。
 「ジーナぁ」
 やがて…ジーナにしてみても、戒がそれ以上の何をするつもりがないことを理解してくれたのか、はぁ~と大きく息を吐き出して、戒を振り向かないまま、それでも幾分か怒りを収めてくれたらしい。
 「とにかく、今日のところは帰って」
 「……………」
 「あんたがあたしに何かするかどうかはともかく、男の子は頭に血が上ると、何をするかわからないのは本当のことだし、あんたも…あたしも興奮しすぎている」
 「…………ハァ、わかった」
 他人が見ていたら、まさにショボンという形容詞があてはまる意気消沈の仕方で、戒もやっと諦めて引き下がる。
 「また来ていい?もう…怖がらせたりしないから」
 「……頭が冷えたらね」
 「う、ん」
 それでもチラリと振り返ってくれた彼女に、多少は満足して、未練タラタラではあったが、それでもなんとか戒は重い足を引きずり踵を返す。
 「あ、戒」
 「………」
 ドアを出たところをジーナに声をかけられ、バッと振り返る。
 それはきっとコンマ一秒にも満たない間で、その叱られた犬が必死で主人の機嫌を取り結ぼうとしているかのような、彼の顕著な反応に、ジーナの荒いでいた気持ちも宥められたらしい。
 振り向いた戒の視線の先、ジーナが苦笑を浮かべていた。
 「仕方ない子。……でも、あたしも悪かったわ。いくら自分がイライラしてるからって、あんたにあたることはなかったわよね」
 …イライラしていた。
 おそらくまた指摘したり詮索しようとすれば、いくら今彼女が自分の非を認めていようと、また彼女が怒り出すのは目に見えていた。
 ジーナもまた、いくら彼を子供扱いして大人のフリをしていようとも、まだ16才の少女にすぎず、一人で生きていると突っ張っていても、まだまだ誰かに頼りたい子供なのだ。
 けれど、突っ張ることでそんな自分を懸命に支えている。
 …ああ、そうか。そうなんだ。
 ジーナはけっして認めないだろうが、戒もそんな彼女の気持ちを、自身の経験からなんとなく感じ取れた。
 「護衛の人がいるから大丈夫だろうけど、それでもこの辺はただでさえ物騒で夜道は危ないんだから、早めに真っ直ぐにおウチに帰るのよ?」
 またも子供扱いのセリフだったが、それでも彼女が自分を心配してそう言っているのはわかっている。
 だから今度は戒も、素直に頷けた。
 それこそ一々彼女の言葉に反発して言い返すことこそ、子供の証明だろうから。
 「わかった、了解。ジーナも戸締りちゃんとして?」
 「うん、ありがと、またね」
 「…またね」
 またね、と言ってくれたことに満足して、戒は玄関のドアを閉めた。
 そして、ドアの外に待ち受けていた自身のSPへと顔を向ける。
 「一人残って」




*****




 SPがけっして自分の家来などではなく、最優先する命令権者が父親なのは戒にもわかっていた。
 また場合によっては、彼らが司のスパイになりえることも。
 ジーナの事情が、戒にとっても危険であると判断されてしまえば、彼にではなく、司に報告がいってしまうだろう。
 そして、最悪、彼には何も知らされないまま、彼女から遠ざけられてしまうこともありえる話だ。
 ―――もし、ジーナが怯えている原因が彼自身の父親のせいであるなら、ジーナのもとへ、自分につけられている警護の者を置いてきた意味合いは、あまりないかもしれない。
 だが、それでもそれ以外の脅威からは彼女を守れる。
 第一、どんなにジーナが目障りだったにしても、司が彼女に直接的な危害を加えるとは、さすがの戒も思っていなかった。
 …それなら、まったく無意味なことじゃないはずだ。
 ジーナには早めに帰れと忠告されていたし、戒にしても、この界隈がけっして安全だと勘違いしてはいなかった。
 夜にウロつく危険は、彼も十分に承知している。
 しかし、たとえこの界隈ではなくても、夜のニューヨークは昼間とはまた別の顔を持つ危険な街なのだ。
 けれど、戒はどうしてもジーナの住むアパートを出てすぐに、車に乗って帰る気持ちにはなれなかった。
 まだ、それなりに日も残っていて、護衛もいる。
、まるっきり一人というわけではないのだからと、戒は少しだけ風にあたりたい気分のままそぞろ歩きをし出す。
 が、歩き出してそうしないうちに、見知らぬ男たちに行く手を遮られ、……足を止める。
 薄暗い塀の影から現れた、いかにも堅気ではない二人組の男たちが、戒を誰何した。
 「おい、お前」
 「……………」
 「この前、ジーナ・ロッソと一緒に歩いていたガキだろ?」
 デ・ジャブというにはあきらかな脅威が、のっそりと顔を覗かせる。
 いつかのように、少年ギャングなどではない、危険な空気を纏った大人だ。
 「…なに?あんたたち」
 戒の大人を相手にしても怯まない太々しい態度に、男たちの眉根がハネ上がる。
 「イキがったガキがっ」
 「あの女のことで聞きたいことがある。ちょっと近くまで付き合ってもらおうか」
 無遠慮に彼の腕を掴もうとして、突如として噴き上がった戒の背後からの殺気と威嚇に、ハッとその手が止まった。
 そして怪訝に戒の背後を透かし見た男たちの視線の先に、眼光鋭く威嚇しているSPたちの姿に気がついたらしい男たちが、たじろいで後退する。
 「聞きたいことって?」
 アンダーグランドに住まう人間たちは、特別に鼻が利く。
 何者かまではわからないなりに、SPたちの只者ならぬ気配を感じ取ったのだろう、彼らは戸惑い躊躇していた。
 「なに?俺になんか用だったんじゃないの?」
 「い、いや、か、勘違いだったみたいだ。すまねぇ」
 だが、引こうとする男たちを、今度は戒の方が逆に詰問する。
 「勘違いじゃないよ、…ジーナと歩いていたかって聞いただろ?歩いてたけど、だから何?あんたたち誰?」
 今、ふいにカタチになった、ジーナを怯えさせていた不確かな影。
 「いや。お前さんが、あの女…あの子の弟かなんかだと思ったんだよ、俺たちは」
 「違うけど?」
 それは男たちにしても、さすがに察したらしい。
 ソワソワと戒のSPたちを窺い、もはやその場を離脱したがっていた。
 「けど、弟だとしたらなに?俺にわざわざ声をかけてくる方見れば、なんか用があったんだろ?」
 話に乗ってくる戒と、彼の背後に控えている2人の護衛の存在に、男たちが困惑したように顔を見合わせ、だがとりあえずはそう不穏当な要件でもなかったのか、声をかけてきた理由の方を全うすることにしたようだ。
 「マッシオが戻ってきてるだろ?」
 「…マッシオ?」
 聞き覚えのない名前だ。
 戒が不審げに首を傾げた。
 その表情だけで、男たちも彼の答えを察したのだろう。
 また戒が当初、目算をつけていたジーナの身内ではないことがわかった地点で、一応聞いてみるか、くらいの動機付けだったに違いない。
 存外にあっさりと引き下がった。
 「いや、それならいいんだ。もし、マッシオを見かけたら、こっちに連絡入れるようにあの子にも言っておいてくれ。よけいなことに顔を突っ込んでも、ロクなことにはならないことは、あの娘もわかってるだろうしな」
 意味のわからないことを伝言し、去ってゆく男たちの背を見送り、戒は迷っていた。
 無意識のうちに視線を向け、見てしまっていた背後の護衛の一人が、そんな戒の意を汲み取るが、今度の指示には無言のまま首を横に振って応じてくれない。
 それはそうだろう。
 彼らの役目は、あくまでも戒の護衛であって探偵ではないのだ。
 そうでなくても、すでに一人をジーナのもとへと残してきてしまっている。
 危険を冒してまで、戒の指示に従ってくれるわけもない。。
 …マッシオ。
 おそらくその男が、ジーナのここのところの情緒不安定に関わっていることはあきらかだった。




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