「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0639

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 「え?」
 「身長よ、身長」
 わざわざ手を戒の頭頂部にあてて、自分の身体と引き比べているジーナのジェスチャーに、ああ、と戒も納得する。
 「そうだね」
 「凄いわね。もしかしなくても、ウチのジュリオよりも背が伸びたりしちゃうんじゃないの?」
 ジーナの弟のジュリオは中学生にして、すでに170cmを大きく超える巨漢の少年だった。
 しかし、ここアメリカではそんな人間など珍しくない。
 それでもいかにも少年少年していて、どうかすると美少女に見紛う戒が、そうやって日々変わってゆくことに、まだ少女のジーナにしても驚きがあるのだろう。
 「ジュリオの方が、よっぽど凄い速度でデカくなってるんだから、そんなに驚くことでもないんじゃないの?」
 「まあ、それはそうなんだけど、東洋人は小柄だって聞くし、あんたなんてこんなに女の子顔負けの綺麗な顔してる美少年なのに、とか思うわけよ」
 戒がジーナの物言いに小さく顔を歪める。
 別に自分の顔が嫌いなわけではないし、それで彼女が彼を侮っているわけではないのはわかっているが、それでもやはり女の子と比べられるのは、戒にしてもあまり気持ちのいいものではなかった。
 いや、やはりジーナは彼を侮っていた。
 …俺をガキだと思ってる。
 「あ、そうだ。…この間、事務所のマリーから、日本旅行に言ったお土産だとかで、ジャパニーズ・クッキー(煎餅)貰ったんだ。出すから一緒に食べようよ」
 クルリと踵を返したジーナの細い手首を、咄嗟に掴んで引き止める。
 「戒?」
 「何があったんだよ?」
 「何がって…」
 「なんかあったんだろ?妙に警戒心強くなってるし、ビクビクして、ドア開ける時もなんか変だったじゃん」
 ジーナの視線がわずかに反らされた気がした。
 けれど、やはり戒に何かを頼ることはせずに、彼女の屈託を話すこともしてくれない。
 どこか空々しい作り笑いを浮かべ、彼女は何食わなさを装って、自分の手首から戒の手を外そうと、小さくもがいた。
 「別に何もないって。この辺も物騒だからさ、用心してるだけ。ほら、クッキー出すから手を離してよ」
 ジーナの態度は、まるで戒になど何を話しても仕方がないとでもいうように、子供扱いしているのがあからさまで、彼を苛立たせた。
 ガタッ。
 「戒?…ちょっ!」
 「…言えよ!」
 今思えば、戒がロスから帰ってきて、この部屋を訪問した時にも、以前の彼女とはどこか様子が違ったことが思い出される。
 怯えていた…というのとは、また違っていたかもしれないが、どこかイラついて情緒不安定なようにも見えた。
 …やっぱり、あいつが何か?
 「ジーナ!」
 「やっ、か、戒っ」
 彼の勢いに怖じけたジーナが逃げ出す気配に、戒の頭にカッと血が上る。
 蹴倒す勢いで音を立て椅子から立ち上がって、ジーナの小柄な体を、強引に引きずり寄せ抱き竦めた。
 すぐに身を捩って、ジーナは彼の腕から逃れようとするのだが、一見ほとんど体格差のない二人なのに、戒の腕の力は強く、どれだけ彼女が手を突っぱねて体を捩っても、彼の体はビクともせずその力は緩まない。
 「離してっ、離しなさいよ!」
 「離さない。離して欲しかったら、何があったのか言え!」
 唐突に行動を制限されてしまったことに、一瞬ジーナはたじろいだようだったが、それでもまだ彼を侮っているのか、眉毛をムッと寄せ、不機嫌さが滲んだ声音が冷たく戒を突き放す。
 「あんたみたいな甘ったれたガキに、私の何をどうできるって言うの?ふざけんじゃないわよっ!!」 
 「どうしてだよ!?俺だって…」
 「私は家を出てから、これまで一人で生きてきた。なんでも自分で解決してきた。それをいまさら、なんであんたなんかに、どうこう指図されなきゃいけないの?」
 それでも彼女の声音のわずかな震えに、隠しきれない彼への…自分より力の強い人間への怯えが見えたから、戒もそれ以上彼女を拘束し続けることは、とてもできなかった。
 彼女が好きだから力になりたいのに、上手く伝わらない、彼女に響かない。
 とうのジーナが、彼を何もわかっていない子供だと言って、相手にもしてくれないのだ。
 「……甘ったれたガキ、か」
 以前にも彼女に罵られた言葉だ。
 一人では何もできないくせに、親の力や金を自分のモノだと勘違いして、反抗することしかできないガキだとジーナが指摘し、糾弾する。
 誰も彼には指摘しなかったことだった。
 しかし、彼の周りにいる誰も彼もが似たような環境で、誰一人として、自分が親の庇護の下にいること、その力を自分のものだとして奮うことを、疑問に思う人間などいなかったのだ。 
 けれど、でも、だけど―――。
 だからといって、すべてを父を…そして母を為すがままに赦して受け入れるには、戒はまだまだ幼すぎた。
 とても達観することなどできなかったのだ。
 どんな辛辣な悪態よりも、真実は鋭く戒の心に突き刺さって、ジーナを拘束していた彼の腕の力を緩ませた。
 「……帰って」
 「ジーナ」 
 「あんたがこんなことをするのなら、あたしはもうあんたを、ウチに入れたりすることはできない」
 気不味く俯きかけていた戒の顔が、弾かれたように再び上がる。
 彼の顔は、きっと情けなく縋るようなものだったに違いない。
 しかし、ジーナは自分を守るように自分で自分の両腕を抱きしめ、彼を拒絶するように背を向けるばかりで、けっして彼を振り返ってはくれなかった。
 在りし日の母のように、あるいは……真実を彼の目から覆い隠して、欺き続ける父のように。
 ジーナもまた子供であることを、どうして戒に理解できただろう。
 「…ジーナ、ジーナ」
 彼女の名前を一つ覚え阿呆のように、戒は呼び続ける。
 今の彼には、そんな彼女に、何をどう言い繕えば良いのか、まるで思いつかなかったから。




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