「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0629

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 ジーナの謝罪のあとは、互いに会わなかったここ数ヶ月間の近況を話しただけで、先ほどまでの言い争いにもならない、ギスギスした会話の続きはあえて話さなかった。
 「ふぅん、同い年の従姉妹がいるんだぁ?」
 「…同い年じゃない、一つ上」
 とはいえ、9月区切りのアメリカではなく、日本であればギリギリ同学年だったから、同い年と言ってもそう支障がない範囲ではある。
 特にこだわるわけではないが、なんとなくジーナの物言いにまたも含みを感じて、戒は言葉を慎重に選んでいた。
 「一つ違いくらい大して変わらないわよ。あたしとなんて、5才も違うんだから」
 「年齢なんて関係ないだろ?」
 「………関係なくはないわよ」
 「なに?」
 ボソリと呟かれた言葉を聞き逃して、戒が聞き返す。
 だが、その問いには答えず、ジーナはテーブルについた肘杖に顎を乗せたまま、眇めた目で戒を見て皮肉げに笑んだ。
 「その子に、引き止められなかった?」
 「なにを?」
 「何をって、もちろんロスにずっと残らないかってことよ」
 「……………」
 そう言えば引き止められたなと思い当たったが、戒にはジーナの執拗さの理由がわからない。
 年下の彩の話題ではそれほど引っ張らなかったのに、やたらと彼女が咲にこだわっているわけが。
 大人びた外見とは裏腹に、彼はまだ年端もいかない少年にすぎないのだ。
 本人の認識はともかくとして、彼の人生経験はごく浅く、実際には、まだ自分の感情の意味にさえハッキリとした名前を付けることできていなかった。
 「きっと、あんたの従姉妹なら、凄く可愛い子なんでしょうね」
 「……………」
 ジーナが本当はその答えを聞きたいわけではないことだけは戒にも察せられたが、しかし、いったい彼女が何を望んでいるのかわかりようもない彼にはただ黙ったまま、曖昧に首を傾げることしかできない。
 カップのコーヒーを飲む為に、下目がちに伏せたジーナの瞼にビッシリ生えた金色の睫毛がキラリと光る。
 …髪は赤毛なのに、睫毛は違うんだ。
 そんなどうでもいい今更ながらの感慨を覚え、ついマジマジとジーナの顔に見入ってしまう。
 凝視する戒の視線に気がついたらしいジーナが不審げに顔を上げ、バチッと合ってしまった視線に驚いて目を瞬かせた。
 「な、なに?」
 「ん、…綺麗だな、って思って」
 そんな言葉がスルっと口から飛び出して、それで今自分が思っていた気持ちが戒にもわかった。
 「はぁ?何がよ!?」
 「ジーナが」
 自覚はいつも後から来る。
 別に恥ずかしいことだとは思わない。
 けれど、ほんのりと赤く染まったジーナの顔の可愛さに、じんわりと染み入る気持ちが嬉しさと…照れ臭さなのだと戒も気がついた。
 …ジーナは本当に綺麗だ。
 そして、可愛い。
 綺麗で可愛くて熱くて、自分の感情に正直で……時に辛口で、彼を平気で凹ませるところもあったが、彼女には顔で笑って内心で暗い思惑を巡らせるような陰湿さはなかった。 嫌いなことは嫌いだといい、彼が‘道明寺戒’だからといって、特別扱いしない。
 彼を特別に好きなわけではないだろうが、それでも傍に寄せてくれるのは、彼が道明寺家の御曹司だからではなく、彼が彼だからなのだと信じられる。
 「なに生意気にマセたこと言ってるのよ。このお坊ちゃまは!?」
 しかし、彼女の口から飛び出した自分への子供扱いなセリフには、ムッと顔を顰めた。
 「子供扱いするなよ」
 「するわよ、まだガキのくせに、生意気生意気生意気!!」
 自分の方がよほど子供っぽいくせに、それでも口達者な彼女にはどうせ戒は適いはしないのだ。
 勝ちたいとも思わなかったけれど。
 彼女にならば負けても構わない。
 「……電話料、払えよ」
 「オーディションに受かって、次の仕事が決まったらね」
 「それくらい……」
 「あんたの親のお金で払ってもらうのはナシよ。そんな筋合いないんだから」
 親の金、と言われてしまえばその通りなのだし、そのせいで父親の干渉を拒みきれない。
 ジーナが彼を‘お坊ちゃん’だと呼び、‘甘ったれ’だと言うのは、たしかに致し方ないことなのだろう。
 自分の力で生きている彼女にしてみれば、戒の屈託や悩みなど、しょせん金持ち息子のワガママでしかないのに違いなかったから。
 「……また、ロスに行くの?」
 ポツリと呟かれた声音はあまりに密やかで、すぐにはそれが自分への問いかけだと戒は気がつかなかった。
 「ロス?」
 「それとも今度こそ、ずっと行っちゃう?」
 「俺が?なんで?」
 「だって、その…、パパにあっちに住むように言われてるんじゃないの?」
 「……………」
 黙り込む戒の視線を嫌ってか、彼から顔を反らすジーナの横顔をジッと窺い見る。
 「行かないよ」 
 「ど、どうして?その…どうせ、あんたのパパって、ほとんどNYにいないんでしょ?噂だけど…世界中あっちこち仕事で一年の大半を過ごしてるって言うし、それならあんたがロスにいても変わらないじゃない。…その、あっちには、さっき言ってた賑やかな従姉妹や伯母さんもいるんでしょ?」
 ジーナの言うことはもっともで、実のところ、戒がNYにいる理由はほとんどなかった。
 それで伯母のもとへ、というのはまた別の話だ。
 …あの屋敷でも、俺は歓迎されてるわけじゃない。
 伯母や従姉妹達は別にしても…。
 しかし、歓迎されているわけではない伯母の屋敷に行くくらいならば、道明寺家の家屋敷は世界中どこにでもあるし、それこそその気なら昔祖母から提案されたように、どこぞの寄宿舎に入ったとしてもかまわないのだ。
 …俺があの、本宅の屋敷にいる理由。
 それはなんなのだと問われると、彼自身にもしかとした答えがあるわけではなかった。
 けれど、
 「……父方の祖母に会いたいんだ」
 「お父さんのお母さん?」
 「そ。俺が会いたいって思ったって、そう簡単に会える相手じゃないからさ。少なくても、本宅の屋敷にいれば、それなりに会うチャンスもないわけじゃない」
 現在、マンハッタンの本宅は司に譲り渡されていて、祖母と病床の祖父は、ロングアイランドの広大な別宅の方に本拠地を構えている。
 それでも、折に触れて財界人を招くパーティや会合の場として、祖母は本宅に戻ることもあった。
 自分の祖母と会う為だけのことに、ハードルを感じさせる戒の言葉に、ジーナが怪訝に首を傾げる。
 けれど、そんな彼女の無言の問いには首を横に振るだけで、戒はそれ以上特に答えることはしなかった。
 「それに…ロスにはジーナがいないから」
 「え?」
 「ジーナといたいから、俺は、どこにも行かない」
 「戒」
 戒の真っ直ぐな言葉と眼差しに、ジーナが目を瞬かせる。
 「俺の周りには、今までジーナみたいに頼まれもしないお節介を煩く焼いたり、見返りを期待せずに、何かをしてやったりする妙なヤツっていなかったからさ。…そういう貴重な経験をできる機会を、みすみす逃す手はないだろ?」
 「なによ、それっ!?」
 戒の天邪鬼の憎まれ口にムッと口を尖らせたジーナが、テーブルの上の戒の手の甲に、猫よろしくギッと爪を立てた。
 「いっ!?」




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