「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0628

 ←愛してる、そばにいて0627 →愛してる、そばにいて0629
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「何かあったの?ウチの人間がここへ来た?」
 戒は馬鹿ではない。
 急変したジーナの態度に、何も気づかずにいられるほど愚かではなかった。
 彼自身もまた、父から忠告を受け、その忠告を拒んだ結果、一時的にとはいえ伯母の住むロスアンゼルスに島流しになったのだ。
 そして、父の意に決定的に逆らえば、今度こそロスか、あるいは海外の全寮制私立校にでも追いやられることだろう。
 …俺の自由は、あくまでもあいつの手のひらの中で、あいつの意に逆らわない範囲でだけ許されてるものだ。
 籠の鳥、あるいは生け簀に飼われた鯉のようなものなのかもしれない。
 気配の変わった戒の様子に、ギョッとジーナがたじろいで後退る。
 ジーナの青ざめてキョどる態度が、今彼女が彼に対して感じている恐怖を、戒に悟らせた。
 おそらく彼女は彼のことを、どこまでも育ちのいい、ただ無愛想なだけの少年にしか見てこなかったに違いない。
 これまでの戒は、自分を偽っていた…というほどはなかったが、それでも出来るだけ我を抑えてきた。
 戒のまだ男臭くない美貌がなおさらのこと、彼女の警戒心を緩めてきただろう自覚もある。
 しかし、体格だけでも、すでに10才にして、今の戒はほとんどジーナと変わらない。
 それどころか白人としてはずっと小柄で女の彼女に比べ、戒の伸びやかで強靭な身体は、彼女よりもずっと力がある。
 ましてや、自分の倍もの体格差のある巨漢タイプの少年たちでさえ怖じけさせ、支配してきたのは伊達ではないのだ。
 「か、戒?」 
 …ジーナが怖がってる。
 けれど、フツフツと湧き上がってくる憤りに、今の彼には、自身を取り繕うことさえいかにも難しかった。
 …あいつが直接ここに来たはずがない。
 司の立場からしてもそうだろうが、たかが貧民窟に住む取るに足らない小娘一人に、司自身が会いに来るはずもないことくらい戒もわかっていた。
 それでも彼女の豹変の裏には、父親が関わっていることはあきらかだ。
 それはもしかしたら、彼の思い込みにすぎなかったのかもしれないけれど。
 クルリとジーナに背を向けた戒の姿に、ハッと我に返って、彼が再び非常階段へと足を向けてしまう前に、ジーナが慌ててその腕を掴んで引き止める。
 「ま、待って」
 ドシャッ、ゴンッ!
 ジーナの腕から転がり落ちたスーパーの袋がコンクリートの打ちっぱなしの床に当たって、見事に破裂した袋から中身が飛び出して、周囲に撒き散らされてしまう。
 ゴロゴロゴロゴロ。
 だが、今の二人にはどちらも、それを気に病む余裕がなかった。
 「待って、待ってよ。待ってたら!」
 「離せっ」
 「違うの、そうじゃないのよ!」
 「誰か来たんだろ?ウチの人間がここへ来て、なんか言ったに決まってるっ!」
 「戒っ!!」
 ガチャッ。
 「ちょっとぉ、煩いね。なにガキ同士が何騒いでるんだいっ」
 ジーナの部屋の斜め向かい側に住む住人の老婆が顔を覗かせ、苦情を言い立てる。
 「痴話喧嘩ならよそでやっとく…ひっ」
 しかし、殺気だった戒の視線の一睨みに、ビクリと仰け反って、ブツブツ言いつつも、再び顔を引っ込めそそくさとドアを閉める。
 ここNYでは、たとえ子供といえど、小学生にもなれば一端の悪さは出来たし、暴力事件も日常茶飯事だ。
 ましてや戒の凄みは、同年代の子供たちならずとも、相手を怯えさせずにはいられない冷酷さや威圧感を含んでいた。
 彼が普段抑えている本来の激しさ……凶暴さが、垣間見えるのか。
 「もうっ、とにかく部屋に入ってっ。部屋の中だって壁が薄いんだから、騒ぐとマズいことには違いないけど、少なくてもここで大声出してるよりもマシよ!」
 グイグイと戒の背中を押して、ジーナが無理矢理に彼を自室へと押し込む。
 もちろん、もし彼が彼女の意思に従う気がなければ、叶うことではなかっただろう。
 「とりあえず、そこ座って!あたしは外にバラ撒いちゃったやつ、ちょっと行って拾ってくるから」
 一見普通の声を出しているが、それでも彼女が内心、見た目ほどには平然としているわけではなくて、今この状況に気まずさと…もしかしたら怯えも感じているのが戒にも伝わっていた。
 パタンと気を使った小さな音を立て、いったんは廊下に出たジーナが、すぐにバケツの中にリンゴやらジャガイモ、パックに入った肉類を詰めて戻ってくる。
 それをボンヤリと見守っていた戒に首を傾げ、荷物を足元に置いて、ジーナが彼の傍らへと歩み寄ってきた。
 そして、その手を引っぱって、ダイニングテーブルの椅子へとつかせる。
 「座ってって、言っておいたのに」
 「………いいの?」
 「いいのって、なにが?」
 「怒ってたんだろ?」
 「怒ってたのはあんたじゃない」
 はぁ~と大きく息を吐いて、ジーナは戒を一人残してキッチンへと向き直る。
 「こういう時は…」
 水を入れたケトルと、冷蔵庫から取り出した牛乳を入れたミルクパンをガスにかけ、手早く準備したカップにパッパッっと信じられない大雑把さでコーヒーの粉を入れ、沸かせたお湯と牛乳を注いだものを、自分と戒に配膳する。
 「…飲んで?」
 言われるまま、両手に包んだカップを手に、戒はグイッとコーヒーを口に含んだ。
 とたんに口の中に広がった、なんとも言えぬドロ臭い味に顔を顰める。
 「なによ、その顔?」
 「…マズい」
 ついポロリと正直な一言。
 「ふんっ、相変わらずこのお坊ちゃまは、ホント贅沢で失礼よねっ」
 これみよがしに戒に見せつけるようにして、ジーナの方は、彼がマズいと顔を顰めたコーヒーを一気に半分まで飲み干した。
 「悪かったわよ」
 「…マズいコーヒーを、俺にわざと淹れたってこと?」
 「はぁ?!」
 戒の怪訝な顔に出くわしたジーナの顔は、それこそ何とも言えぬ奇妙なもので、怒って良いものやら、スルーしたものやら、悩んでいるのがまるわかりな顔。
 「まあ、いいわ。そうじゃなくってね、あたしが謝ったのは、その、つまり…八つ当たりしてごめん、ってことよ」
 「コーヒーは?」
 「まったく。あんたがマズいっていうそのコーヒーは、わざと淹れたんじゃないの!それが我が家のデフォだから、とりあえず置いておいてよ、わかった!?」
 「……………了解」
 俯き加減の上目遣いに、チラチラと戒を見ていたジーナは最初こそ気まずげだったが、すぐに開き直ったらしい。
 「せっかく会いに来てくれたあんたに、冷たくしちゃったのはさ、…その、ここのところちょっとあたし、イライラしてたのね」
 「………………」
 「まあ、あんたが甘ったれたお坊ちゃんだというのは、本音ではあるんだけどさ」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ  3kaku_s_L.png 愛してる、そばにいて
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0627】へ
  • 【愛してる、そばにいて0629】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0627】へ
  • 【愛してる、そばにいて0629】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘