「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0627

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 『おかけになった電話は、お客様の都合により…』
 プチッ。
 今やお馴染みとなった電話の不在音声案内を切り、足元の石を蹴りつける。
 久しぶりに訪れたこの界隈は、彼が生まれ育った高級住宅街の整然とした町並みとはまるで違って、なおさらのこと昏く陰鬱でみすぼらしく見えた。
 ‘彼女’が一緒にいれば、まるで気にならなかった汚らしさが、殊更耐え難く見るに堪えない。
 いかにもこの界隈に棲む人間たちとは一線を画する身なりの戒を見て、たむろっていた何人かが体を起こす気配があったが、そのたびに彼の背後についている警備の者たちの発する威嚇と威圧に、再び危険な爪と牙を隠して影に戻ってゆく。
 チラッと振り返った視線の先、馴染んだSPの一人と目があった。
 あきらかに彼の顔は、この危険な界隈を戒が練り歩くことを歓迎していなかったけれど、そうかといって、雇い主の息子である戒に、そうそう逆らうことができないのはわかっている。
 とはいえ、そのSPたちが彼の父親である司に、彼の行動を逐一報告していることも理解していた。
 そして当然、こうしたことが父親に伝われば、現在、仕事の都合でアメリカにいない父親に、再び自由を制限されてしまう可能性もないわけではない。
 これまで司は自身の少年時代のことがあってか、多少のことでは戒の行動にも目を瞑っていた。
 しかし、危険に対して無防備であったり、無鉄砲であることを許すわけもなく、少し前にジーナとの付き合いを制限されていたから、その意に今逆らうのが、戒にとって得策ではないことはあきらかだ。
 現在、制限つきではあるが、それでも司の言う‘節度ある’範囲での交際に関しては、ジーナと会うことも大目に見られている。
 その節度あるとやらいう文言には、当の司自身おかしかったのか、皮肉に嗤っていたが。
 …クソッ、なんで、電話に出ないんだ。何かあったのか?
 ズンズンと、今や馴染んだ通りを通り過ぎ、一際ボロいビルを駆け上ってゆく。
 カンカンカンカンカンッ!
 やたらとグネグネと曲がりくねって、蹴上げの高さの低い内部階段ではなく、急勾配の鉄製の非常外部階段を、戒は一段飛ばしに駆け上ってゆく。
 バンッ。
 「きゃっ」
 「ジーナっ!?」
 どういう偶然にか、ちょうど外から戻ってきたらしく、買い物袋を抱えて自分の部屋の前に立っていたジーナが、戒が鉄製のドアを開けた勢いに驚いて、小さく悲鳴を上げた。
 その拍子に、安っぽいスーパーの紙袋の底が破れて、ゴロンと中から丸いリンゴが転がり落ちる。
 「やだ!」
 コロコロコロ…。
 そのリンゴを拾い上げ、一人悪態をついているジーナへと差し出してやる。
 リンゴを受け取ったジーナが、困ったように彼の名前を呟く。
 「…戒」
 「久しぶり。なんで、携帯電話に出てくれないの?」
 「ハァ………料金滞納して、今、止まっちゃってるのよ」
 「また?!」
 「…またよ、悪い?」
 「悪いかって…ハァ、もうっ」
 悪いかと言われれば、ジーナはあくまでも自分の力で生活しているのだ。
 彼女の生活になんの貢献もしていない戒に、彼女のことに口出す権利があるはずもない。
 それでも、予想の範囲だったにしても、やきもきさせられた分だけ、戒はため息をつくしかなかった。
 …俺と違って、ジーナは俺に会えないことをなんとも思っていない。
 それを思い知らされるのがなんとも切なく、悔しい。
 「あんたこそ、ここのところ全然見かけなかったじゃない?」
 「……ロスに行ってたんだ」
 「ロス?またぁ?…ふぅん、少し早いサマーバケーションで、どこかに出かけてるんだとは思ってたけど」
 「…………」
 たしかに夏休みシーズンではある。
 しかし、戒の場合は、元々ほとんど学校に通ってはおらず、半ば休学のような状態だった。
 それに彼が伯母の屋敷に定期的に訪問しているのは、バカンスの為などではなく、父親による強制送致のようなもので、それがジーナと交際を続ける為の条件の一つだったからだ。
 …俺を伯母さんたちと交流させて、いったいどんな効果を狙ってんだか知らないけど。
 ため息一つで、気分を変える。
 せっかくジーナに会えたのに、どうでもいいことに気を取られ、気鬱を囲いたくはなかった。
 話題を探して、元々戒はそう口数の多いタチではなかったし、そうそう共通の話題などなかったから、無難にここのところ見かけていない彼女の弟のことを聞くことにする。
 「ジュリオは?」
 「あの子は、実家。あっちでバイトに励んでるわよ。あんたみたいなお気楽なお坊ちゃんじゃないんだから、夏休みだからって、悠々自適に遊んで暮らしてるわけにいかないもの」
 「なんか怒ってる?」
 どこかジーナの物言いに刺を感じる。
 元々、他の人間のように戒に阿ることなく、ズケズケと言いたいことをいう少女ではあったが、わずかに反らされた視線が、いつもまっすぐに戒を見る彼女らしくない気がした。
 「…別に。こんなところで立ち話もなんだから、寄って行く?」
 ガチャガチャと鍵を開け、いつものように部屋に入ってゆくジーナに促されたが、戒は躊躇していた。
 けれど、
 「今日は辞めとく」
 「泊まっていかないの?」
 「うん」
 それも司との約束の一つだ。
 ジーナと会うのなら昼間、外で。
 部屋に入り浸ること、外泊することは禁じられていた。
 約束を破れば、当然、規制がキツくなるだろう。
 これまで司は、かなり放任に近かった。
 完全な放任とは違うのは、折に触れ、激務で家を空けがちの中でも、常に戒に気をかけ、出来うる限り彼と接触持とうとしていたことだ。
 それを拒否していたのは戒だったが、しかし戒はそうした司の愛情を、気紛れな干渉だと感じていた。
 普段、放任しているくせに、たまに顔を見れば親を演じたがる、そんな風に。
 そして、これまで戒の交友関係にほとんど口出しをしてこなかった司が、どんな報告を受けたのか、ここに来てジーナとの付き合いに口を出してきた。
 ようは、彼女と肉体関係を持つことを司は危惧しているのだ。
 まだ10才だからといって、ここアメリカでは、性的成長が早い子はすでに経験がある子もいた。
 それが普通だとは言わないが、それでも戒自身、かなり成長が早く体格もいい。
 そして、そうした知識ももちろんある。
 衝動は別の話だが。
 「部屋には?」
 「もう、帰るから」
 「ふぅ~ん」
 「…なに?」
 揶揄るような不機嫌なジーナの顔に、戒の眉根が寄る。
 「結局、…あんたは甘ったれのお坊ちゃんでしかないのよ」
 「ジーナ?」
 「パパになんか言われたんじゃない?」
 「なに?」
 「あたしもジュリオも、ロクでもない親のところに生まれて、自分で自分をどうにかするしかなかった。だから、反発するとかそういうことじゃなく…こうして、自分で自分の面倒を見てる。あんたは何をいったい不満に思ってるのか知らないけど、立派な家があって、お金持ちのパパがいて、やりたいことも、欲しいものも望むままよね?それなのに、何が面白くてあたしなんかに構うのよ?どうせここに来るのを、パパに反対でもされたんでしょ?」




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NoTitle

ジーナの言う通りですね。お金に不自由することもなく適当に頭も良く外見も素晴らしい。父親が新しい女を妻にしたからといって特段息子に辛く当たっているわけでも継母も継子苛めをするわけでもない。底辺で親から捨てられその日その日をどうやって生き延びていこうかどこで寝泊まりしようかと思案している浮浪児達からみたら夢のような暮らしだね。王子とコジキを思い出した。そうはいっても底辺の暮らしを知らない戒君にしたらお金のない辛さを想像することもできないだろうし、知ったとしてもそれでもどんなに貧乏してもつくし母のそばで成長したいと思うのだろう。私ならどちらを選ぶだろうか。つくしの家は日本の家庭としては普通の部類。でも上に上りたいと強く願ったときには普通の階級では米俵に紛れている小さな金剛石を見つける事は極めて困難。然し、名だたるお金持ちなら米俵が一合升にかわり、その中に隠れた原石みたいに簡単に取り出せる。子供はいとも簡単に大きくなる。長い人生に10年やそこら寂しくて悲しい思いをしたとしてもそれをバネに大きく飛躍する事は可能だろう。そう思うと戒君が現実社会に現在生きている少年だと仮定して今の不遇を大いなる栄養分としてしょうらいに

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