「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0626

 ←愛してる、そばにいて0625 →愛してる、そばにいて0627
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「一緒に住んでることも、親に言っておいた方がいいんじゃないの?」
 「…類」
 「また、そんな困った顔してる」
 類がつくしの額のシワを伸ばすように、指先でスリスリとしてくるのについ目を寄せてしまう。
 「ぷっ!凄い寄り目になってる!」
 笑う類とは真逆に、つくしの方はどこまでも深刻だ。
 「悪いけど、今はあんたのいつものからかいに反応する気分じゃないから」
 「ハァ~、どうしてそう、そんなに深刻になる必要があるの?俺、前にも言ったじゃん。いつかあんたの両親には正式に挨拶に行くし、ちゃんと付き合ってる…結婚を前提に考えてるってことを報告に行くってさ?」
 たしかに彼はそう言っていた。
 普通の親が相手で、また、交際相手が普通の相手であれば、そうした手順を踏むことは普通だっただろう。
 普通、普通、普通、自分でもおかしいなくらいだが、それでも―――。
 …あんたの場合は普通とは違うでしょ。
 そして、自分の方の事情もまた。
 「とにかく、おいで。このままここで延々と暗い顔して座ってても、日干しになっちゃうだけだから、とりあえず歩きながら話そ?」
 「……歩きながらって、人目もあるのに」
 「誰もこんな昼日中の公園で、俺たちの事情に興味を持つ人なんていないよ。…叫んで回るっていうのならともかく、そうするわけじゃないでしょ?」
 「……………」
 繋がれるままに手を引かれて歩き出す。
 しかし、おそらくああした雑誌が出た以上、こうして気軽に手を繋ぐことも、本来忌避するべきことなのだろうとはわかっていたが、しかし…。
 …この人、そういうこと言っても、聞くような人じゃないのよね。
 先程も、類の強引さ、マイペースさをあらためて認識したばかりだ。
 ごく一般的な日本人の大人としてのつくしも、こうして昼日中に堂々と、バカップルよろしく手を繋ぐのはいまだに抵抗がある。
 それでも大げさに振り払ったりしないのも、また大人であるということなのかもしれなかった。
 「ウチの親、まだ司のところから援助をもらってるらしいのよ」
 「……………」
 類の目がチラッとつくしを振り返ったことで、彼が聞いていることが彼女にも伝わって、けれど、彼が何も言わないということは、その先を言うか言わないかは、彼女に任されているのだろう…いつものように。
 「自分の親のことを誇れない自分こそ恥ずかしいことだとわかってる。…でも、どうしても私はあの人達のことを、あんたや他の誰かに、堂々と話すことができないでいるの」
 「恨んでるの?」
 恨んでる―――おそらくその言葉の中に、彼が両親と彼女の確執の本質を悟っている証拠だろう。
 恨んでいるのかと問われ、改めて自分の中の気持ちをつくしは探った。
 答えはすぐには出なかったけれど、それでも…ゆっくりと首を横に振り、類の質問を否定する。
 「ううん、恨んでない。…たぶん、だけどね」
 「じゃあ?」
 「心配、なのかな」
 「心配?」
 「うん」
 自分の中の気持ちをカタチにして、他人に伝えることはとても難しいことだ。
 ましてや、一言の下で語り尽くせないようなことは。
 誤解されたくない、けれど、誤魔化したくもなかったから、よけいに。
 だが、類は彼女が自分の中から、適切な言葉を選び出してくるのを待っていてくれている。
 急かすことなく、自分の語りたいままに、言えるべき言葉を言えばいいと。
 「あの人たちも悪い人じゃないの。私のことがなければ、きっと今もごく平凡な…少しは情けないところもあるけど、日々を一生懸命に生きている。そんな人たちのままだったと思う」
 けれど、司とつくしの出逢いがすべてを変えてしまった。
 彼らの金銭感覚も心根も、愛情という名の身勝手さの行方も。
 「私が司と別れたことで、永遠に保証されていたはずの安寧が、一度は壊れてしまった。結局は、司からの申し出で、今もそれは続いているわけだけど」
 つくしの声が小さく震えてしまう。
 自分の親のことなのに、類に語ることが恥ずかしくて、辛く感じる自分がまた、恥ずかしくて…。
 そしてなにより、親の所業を恥じているのに、それを辞めさせられない自分。
 説得しきれなかったからと言って、そこから目を反らすのではなく、正すべきだとわかっているのに。
 「もしかして、その保証を求める相手が、司から俺に変わるのを案じてる?」
 「………」 
 そのとおりだ。 
 有り体に言えば、金づるが司から類へと変わるのではないかと。
 たしかに現在は、司から援助が続いているが、今度のつくしへの司の対応や、道明寺家の意向によっては、いつその援助を打ち切られてしまうか、わからない不安を日々感じてもいるに違いない。
 そうは考えたくなかったけれど。
 まだ会うことすら躊躇しているつくしに対して、遠慮がちではあったが、それでも千恵子の弾んだ声が彼女に暗澹としたものを感じさせる。
 繋がれていた手が離れ、類の腕が彼女の肩に回ってぐっと引き寄せられた。
 驚いて顔を上げたつくしへと優しく微笑んで、肩を抱いてくれるその大きな手が、そのまま柔らかく彼女の髪を撫でる。
 「あんたは真面目すぎるんだよ」
 「……類?」
 「俺、言ったじゃない?けっこうこれでも逞しいって」
 それはもちろん、肉体的なことばかりを言っているのではないだろう。
 「経済的には…まあ、牧野の家族の10人や20人、養う甲斐性くらいあるよ?もちろん」
 「類っ」
 そういうことではないと、声を荒げるつくしへと類は小さく首を横に振って、
 「わかってる。あんたが気にしているのはそういうことじゃないってさ。それが真面目すぎるって、俺なんかは思うんだけどね」
 「…だって」
 つくしにしてみても、類の言いたいことはわかっていた。
 それはかつて、さんざん司が彼女に言った言葉でもあったから。
 言い方は違ったが、たぶん言いたいことは同じなのだろう。
 「ガキの頃から、俺たちの金や地位に群がる人間っていうのは不変的にいたんだよ?もちろんそうした人間のあしらいも学んできてるし、わかってる。その上で、全部任せなって、俺は言ってるんだ」
 「…類」
 「面倒臭いことは全部俺に任せなよ?」
 誰よりも面倒臭がりな男が、すべてを自分に任せろと言ってくれる。
 「あんたのやりたいようにやりな。全部あとは俺が引き受ける」
 「あんたが?」
 「そ。で、俺も面倒臭くなったら、全部ポイッて、遠藤あたりに丸投げしちゃうんだけどね」
 「ぷっ!なによ、それぇ~」
 類とつくしの明るい笑い声が上がった。
 「もう~、類ったら。私は真面目なのに」
 「ふふ、俺もだよ。でも、そんなもんなんじゃないかな。何一つ無理することなんかない。自分の手の届く範囲、できることだけを頑張れば、それでいいんだよ、きっとね。あとは野となれ山となれ、誰かしらがなんとかしてくれるものだからさ」




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0625】へ
  • 【愛してる、そばにいて0627】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0625】へ
  • 【愛してる、そばにいて0627】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘