「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花②

愛してる、そばにいて0624

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 何をするでもなく二人公園のベンチに並んで座って、通り過ぎる家族連れの楽しそうな顔、子供たちがハシャいで走り回る姿、カップルが嬉しそうにクスクス笑ったり頬を寄せ合って、イチャイチャしている様子を眺めてながら、先ほど買ったメロンパンを口に頬張る。
 「おいひぃ」
 「……ふふ」
 普通に言ったつもりだったのに、もごもごと不明瞭になってしまった言葉を笑われて、さっきも自戒したばかりだというのに、自分でも子供っぽかったかとゴホンと咳払いをして照れ臭さを誤魔化す。
 こうした日常が、たぶんごく普通の…平凡な幸せっていうやつなんだろうな、とシミジミと思う。
 「平凡が平凡だと感じるのは、波乱万丈だからなんだってさ」
 「…へ?」
 「普通は平凡な毎日を、わざわざ意識したりはしないものらしいから」
 「ああ。……類も同じこと思ってた?」
 「ううん。今、牧野が口に出してた」
 「げっ」
 しかし、類はそれ以上突っ込むことはなく、つくしと半分こした残りの半分のメロンパンを口に運んだ。
 今ではすっかりそんなことも、二人のごく日常の一コマになった。
 きっと彼の人生では、何かを半分こにするなどということはなかったに違いない。
 だが、類はいつも受容的だった。
 強い個性とは裏腹に、特に自己を主張することなく、何気ない日々や周囲にひっそりと溶け込んで、そして、強い反発を感じることなくただそれを受け入れている。
 …不思議な人。
 けっして自我がないわけではないというのに、こだわりはほんのわずかで、それ以外は本当にどうでも良いかのようだ。
 「…きっと」
 「え?」
 「きっと、あんたと一緒にいた頃の司も、今あんたが思ったことと、同じことを思っていたんだろうな」
 唐突に出された名前に、咄嗟に言葉が出ない。
 「これが平凡な毎日、普通の幸せ―――けど、本当に得がたくて、この上なく貴重で、大切な毎日なんだってさ」
 「…………類」
 メロンパンの最後のひとかけらを口に放り込んで、手に持ったスポーツドリンクで流し込もうとして、類は顔を顰めている。
 「あ、お茶、買ってこようか?」
 ハァと小さくため息をつき、
 「いいよ、これで」
ぐっと一気に飲み干してしまう。
 「NYで司に会ってきたよ」
 「…っ」
 「もちろん、戒にもね」
 覚悟をしていなかったわけではなかった。
 類が司の結婚式に参列すると聞いた時から、彼らの話題が出ることはわかっていたことだ。
 だが、
 「……なにを、話したの?」
 「別に」
 「別に?」
 何を話して欲しくて、何を話さないでくれとは、つくしからは類には何一つ頼むことはしなかった。
 …だって、私とは関係ないことだもの。
 類が司の結婚式に参列したことも、またそのめでたい日に、過去の遺物でしかない彼女の名前が出ることを、誰一人として望みはしなかっただろうから。
 「司の方は、結婚式当日も仕事だったとかでさ。新郎新婦登場のホント、ギリギリで式場に到着して、そのまま披露宴だなんだと突入しちゃったしね」
 「………そう、なんだ」
 「さすがに披露宴会場じゃ、とてもじゃないけど主役のあいつを捕まえて、個人的な話をする暇なんてないから、ちょっとした挨拶だけだったし」
 「………」
 「戒とも…ちょっとだけ、話をしたかな」
 つくしがいつの間にか俯けてしまっていた顔をあげ、類を見る。
 類はつくしを見ていた。
 どこか冷たい温度のないビー玉のような目で。
 けれど、今の彼女はもう知っている。
 その感情のないような顔の裏側にある、彼の繊細で柔らかな優しさと温もりを。
 「あの子、ずいぶん大きくなってた?」
 「そうだね。身長だけで言えば、たぶんほとんどもう、あんたと変わらないくらいじゃないかな」
 「え?もうそんなに?」
 幼い頃からすでにその片鱗が現れていた。
 元々日本人離れをした体格の司の子だ、十分予想の範疇の話でもある。
 それでも、
 …あんなに小さかったのに。
 わが子の成長を喜ぶ気持ちと、それまでの成長を見てくることができなかった哀切と。
 「相変わらず、司にそっくりだった?」
 「ん、そうだね。ベースは司だと思うけど、あいつより線が細いし、…あんたにもよく似てたよ」
 「…そう」
 客観的には司よりの顔形だろう。
 けれど、近しい人たちは必ず、戒はつくしにも似ていると言ってくれたものだ。
 「どんな話をしたの?」
 「そうだね。戒とも差し障りのない挨拶程度で、それほど大した話ができたわけじゃないんだ、実は」
 「…………そう」
 それはそうだろう。
 場が場だ。
 新郎の立場の司とはまた違うだろうが、彼の一人息子として、もしかしたら介添え的な役割を課せられていたのかもしれないし、そうでなくても類とはそう親しいわけではないのだ。
 初対面ではないとはいえ、わりに人見知りなところのある戒が、父親の親友相手に、そう会話を弾ませられるはずもない。
 …類の方も、社交的とはとても言い難い人だしね。
 類は幼い子供には不思議に好かれる男だが、普通の人間はとっつきにくさを感じるばかりだろう。
 「ただ…」
 「ただ?」
 声音の変わった類の声に、内心で首を傾げる。
 「あんたと同じ顔をしていたかな」
 「私と同じ顔?」
 「そう、昔のあんた。……記憶を失う前の。何もかもが苦しくて辛くて、哀しくて仕方がないって顔をしていた頃のあんたかな」
 「…戒が?」
 類の手が、膝の上のつくしの手をぐっと握り締めた。
 そして、反対側の手で、握り締めた彼女の手をポンポンと小さく叩いて、すぐに離れてゆく。
 彼女から顔を反らして、再び有象無象の人々が行き過ぎてゆくところへと顔を戻した。
 「もちろん、あの頃のあんたみたいに、痩せこけていたり精神的に病んでる…ってわけじゃないと思うけど。でも、心が彷徨ってた。何かを求めて探しているのに見つからない。荒んで満たされないでいる、そんな顔をしていたよ」
 ニューヨークにいる隼斗が聞いたという噂が、つくしの耳元で蘇った。
 ーーー道明寺の息子がイジメを先導して、親の威勢を傘に来て、何人もの子供たちを学校から放校処分にしているらしい。




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