「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花①

愛してる、そばにいて0623

 ←愛してる、そばにいて0622 →愛してる、そばにいて0624
◇更新情報他雑文 『こ茶子の日常的呟き』へ
【君を愛するために】オススメ作品!?
ランキングもよろ(・ω-人)
ブログランキング・にほんブログ村へ
いつも応援ありがとう♪
**************************************

 「いっくよぉ~」
 かなりオーバーアクションで繰り出したボールは、案外絶妙なコントロールで、相方の類の方へと真っ直ぐに跳んでゆく。
 受け手の類の方も、そこはさすがに見掛け倒しではなかったらしい。
 パシッと軽妙な音を立て、危なげもなくグローブに吸い込まれたボールがすぐに、美しいフォームで真っ直ぐに投げ返される。
 パシッ。
 「おお~、凄い!上手じゃない」
 まるで子供を褒めるようなつくしの態度に、類は苦笑顔だ。
 「そういう牧野こそ、けっこう上手いね」
 「そう?すっごい久しぶりだけど、人間そう体が忘れてないものなのねぇ」
 とはいえ、さすがに気持ちはともかくとして、体は年相応に劣化していたようで、子供の頃のようには、延々とキャッチボールを続けていられるものではなかったらしく、早々につくしの方が先にバテた。
 「は~う~疲れたぁ」
 フラフラッとベンチに腰を下ろし、汗を拭いながらグローブを外して投げ出す。
 周囲を見回していた類も、グローブを外して近場に設置されている自販機に向かう。
 なんとなくそれを、見るともなく見守った。
 家族連れや恋人同士が大半の公園にいてさえ、類は目立っている。
 さすがに、自分たちの世界にどっぷりハマってる人たちはそうでもなかったが、すれ違う人々や、自販機の順番を待つ人たちの顔が、類に気づいた途端に惚けたように見惚れているのに、つくしは苦笑いした。
 …ただ普通に自販機でジュースを買っているだけだっていうのに、それだけでもサマになるとか、なんなのよ、この人。
 内心で、そんな悪態をつく。
 かなりバテバテのつくしとは真逆に、まだまだ余裕のありそうな類の方は汗一つ滲ませていない。
 「はい、スポーツドリンク」
 「ありがと」
 戻ってきた類が、ペットボトルのキャップをひねって手渡してくれる。
 いつの間にか、家を出た時のちょっとした憂鬱がすっかり晴れていた。
 「やっぱり気分転換には、体を動かすのが一番よね!」
 「は?なに急に」
 「へへ、いやあ、類もそう思わない?」
 唐突なつくしのセリフに、怪訝そうつくしを見やった類も、しかし、いつものことだとでも思ったらしい。
 「あんたの場合、美味いものを食うのが一番なんじゃないの?」
 先ほど購入したメロンパンの紙袋へ、揶揄るように視線を流して笑われてしまう。
 「いいでしょ?食べることは人間の基本なんだから」
 「別に悪いなんて言ってないじゃん」
 「むう」
 そうかもしれなかったが、それでもこんな綺麗な男に食いしん坊を指摘されるのは、もう若い娘ではない自覚のあるつくしにしても、けっこう気恥ずかしいものがある。
 いや、若い娘ではないからこそか。
 ゴクリゴクリと失った水分を補給して、人心地が着いた頃、類が含んでいたペットボトルから口を離すのを見計らって、つくしは声をかけた。
 「……ね?もしかして、あんたもけっこう鍛えてたりするの?」
 「ん?」
 「ほら、ジム通ってたりとか?」
 「そう見える?」
 「う~む」
 司も日頃の運動不足を補うたために、秘書に組ませたスケジュールの範囲で体力作りに励んでいたが、類はそんな気配をほとんど感じさせない。
 …の、わりには、けっこういいカラダしてるのよね。
 「ま、一週間に一、二回程度だけだけどね」
 「あ、やっぱりそうなんだ?ジム?」
 「プールの方。あんたも一緒する?」
 「え?…いや、スケジュール合わないし」
 「今からでもいいよ」
 「え~、今からぁ?」
 正直すでにキャッチボールだけでバテバテだ。
 とてもじゃないが、今から行きたいという気分ではなかった。
 …しかも、ジムのプールじゃ、ガッツリ泳ぐんだろうしなぁ。
 「牧野も体力作りしたいなら、これから休日はジム通いにする?」
 「え~」
 そこまでやりたいかというと、全くやりたくないつくしが難色を示す。
 が、なぜか類は嬉しそうだった。
 …このイジメっ子め。
 間違いなくつくしがイヤがってるからこそ、楽しくなってしまったのだろう。
 学生時代は気がつかなかったが、けっこう類も苛めっ子気質を持っている。
 「そんなこと言い出すくらいなら、なんで今まで土日にトレーニング入れなかったのよ?」
 「だって、たまの休みくらいゆっくり寝ていたいもん」
 「あっそ」
 あまりに予想通りすぎて、特別な感慨も浮かばない。
 「なのに、そのせっかくの休日にも、どうせたたき起こされるしさ。あげくにキャッチボールなんかさせられるくらいだったら、プールでもいいかなって。そうしたら、平日もう少し早く帰れるし」
 「なによ、それ。あんた、私が起こさなかったら、夕方まで起きてこないでしょ?」
 「うん」
 力いっぱい頷かれてしまった。
 …いや、わかってたけどさ。
 「あんたねぇ」
 せっかくの休日を寝て過ごそうというこの男は、ホントになんというもったいない人生の過ごし方をしてるんだと、今度こそガクリと項垂れる。
 「ま、いいけど。そんなにキャッチボール、イヤだったの?」
 そんなに苦を感じているようには見えなかったが、確かにたまの休日にまで、そんなにイヤなことに付き合わせていたとしたら、さすがに申し訳ない。
 「いや、そんなこともないけど。…なんで、急にキャッチボールなのかな、って」
 今、類と彼女が手に持っているグローブとボールも、アーケードの通りすがりのスポーツショップで購入したものだ(つくしなどは百円ショップで十分だったのだが)。
 「え~、だって、この前ニューヨークのセントラルパークに行った時、キャッチボールやりたいって言ってたじゃん?」
 「え~、俺が?」
 「そ、あんたが」
 驚かれて、つくしの方が逆に驚いてしまう。
 「言わないよ。ていうか、間違っても俺が言うと思う?」
 「うーん」
 そう言われてしまうと、たしかに類がもっとも言わなそうなことではあった。
 「だって、あんた、あの人たち、西門さんとか美作さんたちとも、キャッチボールやったことないって言ってたじゃない」
 「そりゃ、ないけどさ」
 どうやら類とつくしの記憶ではかなり齟齬があるらしく、どこまでも平行線だ。
 「ま、でも、けっこう楽しかったよ」
 「え?ホント?」
 「うん。プールで泳いでても、あくまでも一人の世界だし、こうやってあんたとタイミング合わせたり、力を加減したりさ。勝負とかじゃなく、相手に合わせて何かやるっていうのは、新鮮かも」
 「でしょでしょ?」
 類が言うと、何やら単純な遊びも複雑な感じだ。
 それでも、楽しかったと思ってくれたことが嬉しかった。
 別につくしの手柄でもないのだが、なぜか得意げに頷いてしまう。
 「じゃあさ、またやる?」
 「もうやんない」
 「はっ!?なんでよ!?」
 今、楽しかったと言わなかったか?
 間髪を入れずのダメだしに、つくしの顔がヒクリとヒクついた。
 「だって、あんた、すぐバテるんだもん。楽しくなってきた頃に、それじゃつまんない」
 「あう~」
 「て、ことで、牧野も来週から、体力作りに俺と一緒にプール通おう?」
 「え~」
 イヤだあ~。




web拍手 by FC2

関連記事


総もくじ 3kaku_s_L.png イベント
総もくじ 3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ 3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ 3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ 3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ 3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ 3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ 3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ 3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 倉庫
総もくじ  3kaku_s_L.png イベント
総もくじ  3kaku_s_L.png だから今日も I'm so happy…百回分の花をあなたに
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【司×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 
総もくじ  3kaku_s_L.png 百万回の微笑みを愛の言葉にかえて
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽のあたる処でシリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png Fly me to the havenシリーズ…36話完
総もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ…全171話完+α
総もくじ  3kaku_s_L.png ******【類×つくし】******
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話+
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編+
総もくじ  3kaku_s_L.png パッション…①24話②22話完
総もくじ  3kaku_s_L.png 陽だまりの詩シリーズ(短編集)
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【総二郎×つくし】****
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編-
総もくじ  3kaku_s_L.png ****【あきら×つくし】****
もくじ  3kaku_s_L.png 拍手小話^
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編^
総もくじ  3kaku_s_L.png ***【その他CP】***
総もくじ  3kaku_s_L.png 中・短編'
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
もくじ  3kaku_s_L.png ストック
もくじ  3kaku_s_L.png R短編集
もくじ  3kaku_s_L.png アネモネ R
もくじ  3kaku_s_L.png 恋愛の品格 R
もくじ  3kaku_s_L.png 愛妻生活 R
  • 【愛してる、そばにいて0622】へ
  • 【愛してる、そばにいて0624】へ

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【愛してる、そばにいて0622】へ
  • 【愛してる、そばにいて0624】へ
にほんブログ村 小説ブログへ💛
スポンサーリンク

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘
女性に大人気!ビジネスから恋愛相談まで全部500円~!  
価格満足度97%、日本最大級のココナラに今すぐ登録!!

┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘┘