「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花①

愛してる、そばにいて0616

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 「実は」 
 「そうですか」
 桜子が落胆しているように見えるのは、つくしの気のせいだろうか。
 そして、もしそうなのだとしたら、それはいったいなぜなのか。
 「どうして……」
 「…わかったか、ですか?」
 「え?…あ、うん」
 聞きたかったことではなかったが、それも疑問の一つではあったので、とりあえずは頷く。
 「道明寺さんの呼び方」
 「あ、ああ…そうか」
 総二郎の時には、それでも一応は気をつけていたのだが。
 女同士の気安さ、桜子は司には直接繋がってはおらず、またたとえ司の親友のあきらに通じているにせよ、彼女が自分の男だからといって、むやみやたらに恋人になんでも話すといったタイプの女ではなかったから、ついつくしも気にせずに‘司’呼びにしていたことに、いまさらながらに気がつかされた。
 …これもね。
 改めるべきかもしれない。
 だが、たとえ司呼びを辞めたにせよ、もう直接彼に呼びかけることはないのだから、そのままであっても、それはそれで特に問題があるわけでもないだろう。
 「それに、雰囲気」
 「ああ」
 親しい人々には度々指摘されていることで、先程桜子にも言われたばかりのことだ。
 「そんなに変わったかな?」
 「それはね。まるっと10年分の歴史がない人と、ある人では違うのも当然じゃないんでしょうかねぇ。まあ、極めて稀なケースですから、そうした経験をお持ちの方は、先輩以外に私は存じませんので、それが普通のことか、あるいは先輩に限ったことなのかは、私にも知る由もありませんが」
 「……はは、たしかに」
 本人であるつくしにしても同様のこと。
 「では、昔のこと…道明寺さんを愛していらしたことを思い出した上で、花沢さんをお好きになったということですか?」
 「……ん~、つか…道明寺のことを思い出して、っていうか」
 なんと返事を返していいのかを迷って、言葉を探す。
 つくしとしては、司のこととは無関係に、大人になってあらためて出会った類という男を、好きになったというつもりだったから。
 …まあ、まるっきり知らない相手じゃなかったんだから、どこからどこまで…とは言い難いけどさ。
 「それとも花沢さんのことを、過去を忘れて道明寺さんを愛していらした間も、心の奥底のどこかでは忘れられずに愛していらしたということですか?」
 思わぬことを言われ、キョトンと桜子を見返してしまう。
 別に桜子が冗談を言っていると思ったわけではないが、思わぬ発想に二の句が継げないでいるつくしの様子に、桜子が小首を傾げ念を押した。
 「そういうことですか?」
 「あ、…いや、それは100%違う」
 「先輩、100%って」
 「だって、ホント、まるっきり類のことは忘れてたわけだし、…正直、記憶を失ったばかりの頃は、誰それが好きだとか、それどころじゃなかったんだよね」
 第一、司にすっかり囲い込まれてしまっていて、彼以外の誰かに恋をするとか、心を残すとか、そんな選択肢はありえないことであり、またチラリとも疑ったことすらなかったのだ…自分に他に好きな男がいるなどとは。
 …ま、司が婚約者っていうのは、私もかなり眉唾に思っていたけどね。あの当時だって。
 記憶を失っていたにせよ、それだけ司と自分とでは、立場も生きる世界もまるで違う人間だという自覚があったのだ。
 「ただ…今の彼、類のことが好きなだけだよ。…愛してるんだと思う」
 「道明寺さんのことは?」
 今もまだ司の名前を聞けば、複雑な思いが沸き上がらずにはいられない。
 それでも、
 「愛していたよ」
 「未練はないんですか?」
 優紀でさえズバリとは聞けなかった問いかけを、桜子から問われ、…一瞬の間を置き、それでもつくしはハッキリと頷く。
 「ないよ」
 「そう…ですか」
 「今ね、私、病院に通い始めているの」
 「病院?」
 「そう」
 桜子にも以前から、つくしの症状はあきらかに司から受けた仕打ちによるPTSDであり、レイプ被害者によくある男性依存や、男性恐怖症の一端ではないかと言われ続けていた。
 優紀や進のようにはうるさくは言われなかったが、それでも桜子もまた、折に触れつくしにカウンセリングを受診するように勧めて、無視されていたから意外だったのだろう。
 「前に進み始めてる」
 「ああ…ええ」
 過去は過去、何をどう思っていようと…後悔しようとも、けっして二度とは戻らない日々。
 だからこそ懐かしく、愛しいのかもしれない。
 再び話が途切れた。
 けれど、先ほどのような気不味い沈黙ではなく、ただなんとはなしに訪れた話の切れ間だ。
 …美作さんとのことを聞いてみようか。
 いつものように、それでお茶を濁されるなら、それはそれでかまわない。
 けれど、せめて自分が彼女の力になりたいと思っていることだけは、桜子に伝えたかった。
 たとえ彼女の為に何ができるわけではないにしても、自分が彼女の味方であると、それだけは伝えておきたい。
 思えば、桜子とは出会った頃から頼るばかりで、彼女の悩みや苦しみを慮って、察してあげていなかったことをつくしは悔やんでいた。
 もう二度と取り戻すことのできない、司との関係とは違うのだ。
 あの時、ああしてやれば良かったと後悔する前に。
 「ご覧になりました?」
 「あの………へ?」
 言葉が被った。
 チラリとつくしを見て、気勢を削がれて言葉を詰まらせてしまったのを見てとって、桜子は自分の用件を話してしまうことにしたらしい。
 「………これです」
 足元の荷物籠のバッグからスマートフォンを取り出し、パパパパッと手早く画面を操作して、何かのアプリを起動してつくしへと差し出してくる。
 「え……これって」
 「先々週末に日本で発売された週刊誌です。大衆紙ですが、私は仕事柄、こういったものもネット配信されているものを定期購買しているんですが、こちらに花沢さんと写っていらっしゃる女性、どこかで見たことがありませんか?」




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