「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花①

愛してる、そばにいて0605

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 「あんな素敵な人に何度もプロポーズされてて、受けないとか信じられないわよね」
 わいわいきゃあきゃあ女子高生よろしく、ハシャいで試着を終えて、案内されたチャペル。
 今回の見学はかなり自由度が高いらしく、大まかな説明や案内を受けただけで、あとは好きに見て回れという形式だった。
 …まあ、具体的な見積もりとかになったら、また話は違うんだろうけどな。
 一見の客に、一々人員も時間も割いてはいられないというのが本当のところなのかもしれない。
 「わあぁ、ステンドグラスが綺麗」
 「でしょでしょ?ホンモノの教会みたいな崇高さはないかもしれないけど、結婚式に特化して作られてるから、逆に綺麗だったりオシャレだったりするのかも」
 言われてみればそうかもしれない。
 少し違うかもしれないが、先ほど優紀が試着した白無垢にしても、本当に真っ白なのは正絹ではなく、化繊混合の生地の方だった。
 …伝統美には伝統美の美しさもあるんだけどね。
 一通りチャペルの内部を見て回り、なんとなく二人並んで長椅子に腰を下ろす。
 「やっぱ、迷っちゃうな」
 「…神前式?」
 「うん」
 優紀の希望は教会式だったのだが、婚約者の両親が神前式を望んでいた。
 「披露宴ではどっちも着るから、結婚式くらいは折れてもいいかな、って思うんだけどね」
 「…うん」
 一生に一度の晴れ舞台。
 それは新郎にとっても同じだろうが、やはり女性にとってはなおさら特別なのだ。
 司との時は、どちらかというと彼の方こそがこだわっていたが、それも彼のロマンチストゆえで、それこそが彼のつくしへの愛情だったのだろう。
 …今日はなんだか、やたらと司のこと思い出してるかな、私。
 「つくしの時って、教会式だったんだっけ?」
 一瞬、またいつもの癖が出て、思っていることを口に出してしまっていたか、と思うほどのタイミングの良さでの問いかけ。
 けれど、そうではなかったらしい。
 幸い現在チャペル内は、つくしと優紀の二人だけで、案内係の職員と他の見学客の姿は見えなかった。
 当然、優紀もそれを見越しての質問だろう。
 「牧野さんの時は入籍だけだったけど、道明寺さんとの時は、結婚式もちゃんとしたのよね?」
 「うん。……海外だったから、白無垢は着なかったけどね」
 「そうなんだぁ、やっぱり盛大だったんでしょうねぇ」
 優紀のうっとりしたような勘違いを、特に否定することなく、つくしは曖昧に微笑んだ。
 嘘ではない。
 優紀のイメージする盛大とは異なるかもしれなかったが、何もかも超一流のものが揃えられ、参列者こそ少なくても、結婚式場となった教会も地方の小教会などではなく、名の知れたカトリック教会で、高位の聖職者を神父として立会いに立てた。
 もちろんドレスも有名ブランドのデザイナーによるオートクチュールの一点もので、生地から厳選され、指輪を含めて彼女が身につけたアクセサリー類は、それだけで何人もの一生分の稼ぎにも相当する高価なものだった。
 生半な人間のできることではない。
 「やっぱりいろんなドレスを試着して、作ってもらったりしたんだよね?」
 さすがに羨ましいとまでは優紀は言わなかったが、興味や好奇心はあるのだろう。
 そこら辺の機微はつくしにだとてわかる。
 「好きなのも選んでいいって、言われたけどね」
 「好きなもの…も?」
 笑ってしまうことに、道明寺姉弟の桁外れなところは、花嫁であるつくしがあれこれ希望を言う前に、何着ものウェディングドレスを用意してしまっていたことだ。
 カタログだけで膨大な枚数で、しまいには見るのもうんざりだった憶えがある。
 …いったい、何人の花嫁に着せるつもりだったんだっつーの。
 「なんかもう先に作られちゃってたから、その中から一枚だけ選んだかな。…どうせ、結婚式しかしなかったし」
 「披露宴しなかったの?」
 「まあ、呼べる人もいなかったから…ね」
 当時、つくしには記憶がなかったことだし、ヨーロッパに飛ばされたことで、道明寺総帥夫妻の監視の目は緩んでいたが、それでもつくしの希望もあって派手な結婚式は避けたのだ。
 …ただでさえ反対されてるのに、そこでまた勝手に大々的になんてやったら、よけいにご両親の神経逆撫でしちゃってたわよ。
 司的には、その逆撫でを目論んでいたようだが。
 「ウチの家族と、司の友達の他に、何人か参列してもらっただけで、それこそ10人くらいだったから披露宴までやってもね」
 事情は語らずとも察してくれたのだろう。
 優紀は特にそこら辺のことについては尋ねることもなく、ポツリと小さく呟いた。
 「そう。……つくしの披露宴でスピーチしたかったな」
 …私もして欲しかった。
 「いやっ、もちろん、たとえあんたに記憶があって、普通に道明寺さんと結婚してても、そういう盛大な場所でのスピーチとかは無理なんだけどねっ」
 まあ、それはそうだろう。
 いや、それ以前に記憶があったのなら、つくしが司と結婚することはありえなかったことだ。
 そして、つくしもまた、優紀に彼女の披露宴でのスピーチを頼まれていたにも関わらず、それを断っていた。
 …本当はやりたかった。
 しかし、当然のことながら、披露宴には優紀の彼氏の会社の人間も招待されている。
 ないとは思うが、どこでどう顔が知れているかもしれないという危惧から、公の場で目立つことは遠慮させてもらったのだ。
 優紀は気にするなと言ってくれたが、つくしの過去が原因で、優紀の大事な結婚式を台無しにするわけにはいかない。
 「受付、良かったの?」
 「まあ、ほとんど流れ作業だし、俯いてるのが大半の役目だから大丈夫だと思う。…過剰な心配だとはわかってるんだけど、やっぱり今更昔のことをあれこれほじくられるのもね」
 「つくし、本当はいろいろ結婚式に夢があったんでしょ?昔、中学の頃に言ってたよね?」
 「まあね」
 女性の夢の集大成のような男と結婚していて、奇妙なことかもしれなかったが、記憶を失う前のつくしの夢はもっとごく平凡で素朴なものだった。
 結婚式に対しても同様で。
 優紀のようにあっちこちの結婚式場を恋人と一緒に巡って、あれこれと悩んで体験したり、身の丈にあったプランを選んで、大切な日を自分たちで作り上げる。
 ーーーチャペルもいいけど、レストランウェディングとかもいいな。
 ーーー披露宴にはその頃の友達だけじゃなく、中学や高校、大学なんかの友達も呼んで、余興をしてもらったり、スピーチもお願いして、お色直しも2回くらいはしたいよね。
 ーーーせっかくだから白無垢もウェディングドレスも両方着たい!
 ーーー新婚旅行はやっぱりハワイ!
 ーーー結婚指輪は二人でじっくり選びたい、一生の宝物だもん。
 ーーーあたしの方が結婚が先だったら、絶対にブーケは優紀にあげるからさ!
 『でもやっぱり、好きな人がそこにいてくれれば、それだけで幸せなんだけどね』
 『やだ、つくしったら、意外に乙女チックなんだから』
 『ええ~、意外ってなによ、優紀?!意外って!』
 『あはははは』
 少女の日の自分たちの姿が、容易に思い出される。
 「ね、つくし」
 「ん?なぁに?優紀」 
 ジッとつくしの横顔を見ていた優紀が、逡巡したように視線を彷徨わせ、けれど視線を伏せ、結局は口火を切った。
 「どうして、花沢さんと結婚しないの?」
 「………………」
 「いくら親友だからって、あたしが口を出すようなことじゃないってわかってる。もちろん、自分が結婚するからってわけでもない。…でもね、あたしから見て、つくしはこの一年で凄く変わった。…いい方にね」
 「優紀?」
 力づけるように隣に座ったつくしの手を、優紀が両手で包み込む。
 「たぶん記憶が戻ったこともあるんだとは思う」
 「……………」
 「でも、それだけじゃないでしょ?」
 優紀の言いたいことがつくしにもわかった。
 彼女が変わったというのなら、それは類のおかげでもあるのだ。
 そして、もしかしたら記憶が戻ったのでさえ、思い出すことを拒否していた頑な彼女の殻を彼が壊してくれたから。
 外から叩き壊すのではなく、トントンと柔らかなノックを繰り返して、つくし自らが顔を覗かせ殻を破ることができるようにと。
 「以前につくしは、花沢さんのことが好きだと言ってたよね?それは、高校時代の初恋の王子様に感じていた憧れの延長でしかないの?」
 「違うと思う」
 少女の頃の自分は、類に勝手なイメージを重ねて、真実彼という人を見てはいなかったように思う。
 …類は完全無欠のヒーローなんかじゃない。
 もっと柔らかくて、温かな…ずっと身近な存在。
 弱さゆえの脆さを持ち、時には傷つき嘆くこともある、ごく人間的な人。
 「じゃあ、牧野さんに感じていたような、尊敬とか…同情とかなの?違うよね?男の人としての花沢さんが好きなんでしょ?」
 真摯な問いかけに、つくしも素直に頷く。
 「うん」
 「それならつくしは、これから先もずっと、花沢さんと一緒に生きて行きたいと思わないの?」




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