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「愛してる、そばにいて」
第8章 明日に咲く花①

愛してる、そばにいて0600

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 つい司にうっとりしてしまうという、明後日の方向へと意識がいっているところへと突然にかけられた言葉だったから、一瞬滋はなんの話かと会話の内容をとらえ損ね、ポカンとしてしまっていた。
 しかし、司の形の良い唇からフーッと出された煙が、天井へと上ってゆくのをなんとなく見守って、一応、彼が自分の返事を待ってるらしいのに肩を竦めて曖昧に笑う。
 「別に乗り気になったわけじゃないよ。…元から反対してたってわけでもないし」
 「そうか?そのわりに、結婚に関してのこっちからの婚前契約の申し入れや、双方の財産や相続権に関しての取り決めん時も、ずいぶんのらりくらりと先延ばしにしてくれてたよな?共同事業参画にもイマイチなノリだったし、昔とはえらい違いだったぜ?」
 司と滋が初めて婚約に至った十数年前は、楓と滋の父親が主導したものだったから、司や滋自身が当時のことを知っているわけではなかった。
 それでも抵抗する司を捻じ伏せるようにして、勝手に推し進められ、周囲から包囲するような状態だった当時の様子からすれば、楓の一人相撲でなんとかなる話ではなかったはずだ。
 どう考えても両家納得の上、足並みを揃えての婚約話だったことは間違いない。
 「まあ、あの当時と今ではだいぶ事情も違うじゃない?」
 「まあな」
 「あの頃はさ。パパも事業を拡大するのが主眼で、私の結婚もその一部ってところもあったし、それで私も幸せになれるって意識が強かったんだと思うのよね」
 「幸せ?」
 フンと司が鼻を鳴らす。
 何を甘いことをと言った意味合いもあったが、それ以上に、娘の幸せを事業の都合とイコールで考えるところが、いかにも手前勝手なご都合主義で、最初から我が子のことなど丸無視な彼の両親とではどちらがマシかと皮肉に嗤う。
 「やっぱり体調を崩すようになって、パパもあの頃とはだいぶ変わったし、今回の…私があんたとの結婚を決めたことには、かなり思うところがあったんだと思う」
 「自分がロクに後継者問題に真摯に向き合ってこなかったクセにか?現在の、大河原とお前たち一族の現状は、お前自身が努力を怠り力をつけてこなかったことも原因の一つではある。だが、お前の父親がそうした未来を見越して、それなりに自分亡き後のフューチャー・ビジョンってやつを打ち立ててこなかったことが、一番の原因だろうよ?」
 滋にばかりか、舅となった、経済界でも偉人と言われるほどの人物である滋の父親にも手厳しい批判。
 独裁的なリーダーのもと、一糸乱れぬ統率を見せる企業は動きも早く、絶大な力を持つ。
 反面、どれだけ隆盛を誇ろうと、カリスマが倒れた後には、あっさりと瓦解してしまうことも珍しくない。
 それは独裁的なだけに、反乱を忌避し、次世代を育てて来ないリーダーがあまりに多いせいだ。
 独裁政権という形態の下では正しい道筋で、有能な人材はトップの地位を脅かす存在に容易になりえるから、それを防ごうとすれば排除するのも当たり前。
 しかし、その独裁者が斃れてしまえば、当然残るのは、リーダーに日和っていた無能者ばかりなのだ。
 滋の父は、そこまで独裁的な統率者ではなかったが、彼の不幸は血族経営の企業でありながら、子供は娘の滋一人であり、彼女を次代の後継者としては育てず、また代わりになるべき後継者も、親族の中にはめぼしい人材がいなかったことだろう。
 彼らが高校時代、司と滋を婚約させたのは、司をその次代の後継者とする算段もあったからに違いない。
 しかし、司は一人っ子ではないとは言え、姉の椿はすでに他家へと嫁いでいたし、彼は婿にやることができない一人息子だった。
 …いったいどういう皮算用してやがったんだか。
 さすがに楓が子供を生む、という選択肢はなかっただろうが、まだまだ楓も現役で、体調不良が目立ち始めたとはいえ、総帥である司の父親の状態も安定して事業には影響が出ていなかったから、あるいは司と滋の間に生まれた子供を双方で…と、いった取り決めもあったのかもしれない。
 以前の滋だったら、司の手厳しい物言いに、ただむやみやたらに反発しただけだろうが、世間の荒波にも揉まれ、実際にそうしたことが原因で、最愛の娘と離れて暮らさなければならなくなった現状が、彼女を大きく成長させてもいた。
 「そうだね。だから、私が選んだ…あんたとの‘結婚’という結論を、パパは反対していたわけじゃないの。たぶんどちらかといえば、パパにしても、一族内の誰かや他の野心的な企業家との縁組よりは、あんたとの共闘こそ最善だと判断してる」
 「俺が野心的でないってか?」
 クツクツと嘲笑う司のつまらなそうな横顔を、滋はジッと見つめた。
 「あんたには野心がある。そして、私たちの親族の誰よりも、ずっと能力のある男よ。でも、あんたのこれまでの軌跡が、私に賭けをさせた」
 「……………」
 「正直、私は萌奈と自分のことで精一杯だし、会社のことなんて知ったことじゃないって、今でも思ってるわ」
 滋の物言いは、かつての司ーーーいや、おそらく今でも彼の認識に大して変わりはないのだろう。
 けれど…。
 「だけど、少なくてもあんたはただの冷酷な男じゃない。…あんたを直接見てると、とてもそうは思えないんだけど、でも、少なくても、あんたは私や萌奈を騙して、あの子を殺してしまったり、私の手の届かないところに連れていってしまうようなことはしないって、なぜか信じられるの。大河原を吸収したあげくに、バラバラに売り払ったりして、罪もない社員たちやその家族たち、大河原に連なる会社の人達を路頭に迷わせたりしないって思ってる」
 「…ふん」
 「優しい人だとは、とても思えないのに不思議よね」
 つくしの心が、意志が、彼の心だけではなく、彼の人生やその行く先をも縛っている。
 ーーー今も。
 それをして、信じるという滋の言葉の皮肉さと奇妙さに、司は可笑しみを感じずにはいられなかった。
 「パパも同じ。私一個人の父親としては、女を愛さないあんたに私を嫁がせるのは反対だった。…遥香ちゃんとの顛末は、パパも聞いてるから」




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